1994年3月25日発売
八代将軍吉宗が創設し、自らの耳目として諸国の情報収集に当たらせた「御庭番」。川村修就は、出世の遅れた父から御庭番を世襲し、手柄を挙げようと張り切るが、ともすればずっこけがち。しかし、新潟湊の抜荷探索という大命を授かると、薩摩の女密偵を閨房の秘術でたらしこみ、まんまと極秘情報を入手。薩摩の密貿易を摘発し、初代新潟奉行を下知された。御庭番シリーズ登場。
午前六時。ロンドンの長く熱い一日が始まったー。甘美な情事の余韻を楽しむ閣僚を襲う突然の恐喝劇。油田採掘権の落礼をめぐって画策される企業買収。そして廃棄に回される古紙幣を狙った現金強奪。夕刊紙〈イブニング・ポスト〉の編集スタッフが綿密な取材をつづけるなか、それぞれの事件は意外な方向へ…。
英情報機関SIS工作員ハイドたちは、大がかりな密輸事件を嗅ぎつけた。が、やっと見つけた手がかりを持つ男は変死体で発見され、送り込んだ密告屋も命を狙われた。糸を引くのは亡命した元MI5長官に違いないのだが、捜査は全く行き詰った。一方、アフリカで偶然墜落機を発見した元工作員が、夜襲を受け、妻を殺された。野獣の性を持つ男たちの、凄まじい戦いの幕が、今上がったー。
ハイドたちは遂に敵側コンピュータへの侵入に成功し、密輸事件の詳細が垣間見えた。あらゆる種類の兵器が武器商人たちへ流れて行く。積出しを阻止しようと現場へ向った彼らは、逆にSISの身分を奪われてしまった。亡命した元長官の手が動いているのだ。頼みの綱の元ボス、オーブリーは“病気療養中”。血と汗にまみれた男たちの死闘と、極限にまで盛り上がるサスペンスの連続。
女が生きていくには、スカートをまくるか、腕まくりをするか、二つに一つ。だから女の幸せは甲斐性のある夫を捕まえることー。それを信条に生きてきたリリには二人の娘がいる。ナデージュは母の人生訓の忠実な信奉者で、首尾よく男爵夫人におさまった。アガトは自立心が強く、単身ロンドンでカメラマン修業をはじめた。さて、最後に人生の本当の幸せをつかむのはどちらだろう?
小さな田舎町で起きた少女の殺人。その嫌疑をかけられて、息子が失踪。彫刻家の夫は、息子を守ろうとする。女医の妻は、正義を通そうとする。孤立する妹。地元の人々の敵意。息をひそめて皆が見守る中、裁判が始まった。息詰まる心理サスペンスの傑作。
昭和七年、銀座。カフェー“キャット”で行なわれた魔術ショーの途中、突如大地震が起こった。狂乱と怒号の中、矢島菊枝子爵夫人のダイヤの指環“スフィンクスの涙”が怪盗・銀座男爵によって盗まれてしまう。偶然居合わせた少年・那珂一兵と女探偵・龍千景は、警視庁の仁科刑事とともに初動捜査にあたり、大地震がモートルを使ったトリックであったことを掴む。トリックに関わった人物及び、現場にいた不審な人物を追う一兵らは、次第に事件の真相に近づく。だが核心に迫った時、鍵を握る人物が死体となってしまう-。
バラに囲まれたロッキングチェアの上で女優の絞殺死体が見つかった。被害者は往年の名子役だったが…。(『バラの中の死』)。マンションの上の階から赤い傘が落ちてきた。そこには遺書らしきものが留められていて…。(『炎天下の密室』)。切れ味鋭い本格ミステリー10編。
南関東大学の学長が、プロ野球の球団を持つと言い出した。なにしろこの大学、自慢できるものは野球だけ。しかし学生数の減少で大学経営はジリ貧状態。そこで思いついたのがプロ野球への進出だった。それからがテンヤワンヤの大騒ぎ(南関東大地震)。ほか傑作ショート・ショート集。
わたしは、比嘉絵理子。ラハイナで生まれ育った日系三世。ハワイ大学を休学中のわたしには、ホノルル市警のアンダー・カバー(秘密捜査員)という、もうひとつの顔がある。任務は、レイプや強盗、麻薬がらみのトラブルに巻き込まれた日本人を救うこと。バッジも警察手帳も持たず、危険地帯に潜入する。冒険心いっぱいのわたしには、うってつけの仕事なのだ。今日も愛用の拳銃片手に秘極捜査のはじまりだ。
漢武威流闘術を身につけ、九寸五分の鎧通しを武器に死客人稼業を続ける“夜霧のお藍”こと藍三郎は、もともと旅芝居一座の名女形だった。その眉目秀麗な彼が、暗黒街に生きているのには理由があった。幼い頃両親を惨殺した悪党を追い続けているのだ。藍三郎はつぶやく。「親父とお袋の仇敵が討てたら…、あとは、生きてる気もないんだ」-と。世間の悪党を闇から闇に葬る殺し屋“お藍”の阿修羅道を描く。
実業界の大物、相川操一の娘、珠子は東京で一二を競う美貌の持ち主、そしてその兄、守は探偵好きの大学生だった。だが、その平和な家庭にある日突然、災いが降りかかってくる。大女優、春川月子を惨殺した「赤いサソリ」が、魔の手を珠子に伸ばしてきたのだ。神出鬼没の殺人鬼に対する名探偵三笠竜介は、しかし再三、敵に苦汁を呑まされる。果たして、最後に笑う者はどちらか?
「俺と来るか」小さく、そう尋ねられて、悠一の瞳が揺れる。男の巧みな愛戯に溺れて、躯が心を裏切ったのか。それとも…。男の名は竜二。悠一の恋人である直人が少年院に入っている間、彼の面倒を見るようにと組が遣わした切れ者だった。やがて七年の歳月が流れ、衝撃的な事件が悠一の身に起きる-。
最初に見えたのは喉だった。濡れた肌の色で綺麗にそらされた喉。それから少し開いた唇-。高校生活二年目も終わり、春休みが始まったある日。羽根智矢は中学時代からの友人四人と、冬から計画していた旅行を実行に移した。だが山荘に彼らが足を踏み入れた途端、洞院遥はある予感に襲われた。“ここに来てはいけなかった”と-…。時間を越えた哀しくも切ない愛を描いた表題作他、書き下ろしを含むモダン・ホラー傑作集。