1994年6月発売
若いころは知的でドキドキするような生活を夢見ていたグレゴリオも今や45歳を過ぎ、さえないサラリーマンを続けている。友人を勇気づけるためについた彼のささやかな嘘。嘘は人生を幸福にする安上がりな手段だったはず。それがいつのまにかおそろしい武器に…危険なゲームへと人を駆り立てる。イカロ文学賞、文芸批評家大賞、国民文学賞を受賞。又、地中海文学賞の外国作品部門最優秀作品に選ばれた。
きものが着たいと思っても、きまりがわからなくて…と、いうかたに、実際にきもの、帯、小物を使って、きものと帯などのくみあわせを目的別に写真で見せた、他に類をみない画期的な一冊。忘れられつつある着物独特の色あわせ、素材あわせを、ビジュアルに見せた貴重な入門書。
不倫の清算として医者と看護婦が心中した事件に不審を抱いた美人研修医が、事件の背景を調べ始めたのだが…。次々と自殺者を出す“崇りの部室”を借りてしまったOLの身に起こり出した奇妙な出来事…。ふとしのび寄る『悪魔の囁き』に弄ばれる現代社会のただれた一面と、その暗部に躍る「悪魔」を抉ぐり出す本格傑作ミステリー集。
砂航船、それは風によって海原を渡るかのように進む船。美少女パレスティンの運命は、その砂航船が高貴な軍船と出会ったときに大きな変転をした。輝きの王子イスファヴァルの愛、そして闇の王子アニューダルの魔手。彼女の出生に秘められた謎とは…。テーブルトークRPG、メイルゲームで好評の『アラベスク・ファンタジー』に材を得たファンタジー小説の傑作ここに誕生。
イエス様を乗せ、命ずるがままに行く小さなロバのようになりたい。敗戦後、旧満州から帰国。貧困を乗り越えて大学へ進学し、献身的に生きる道を突き進んだ熱血牧師の生涯。(解説・高野斗志美)
イエス様を乗せ、命ずるがままに行く小さなロバのようになりたい。敗戦後、旧満州から帰国。貧困を乗り越えて大学へ進学し、献身的に生きる道を突き進んだ熱血牧師の生涯。(解説・高野斗志美)
流行作家・角田博紀の妻、僚子にある日届けられた豪華な花束。添えられたカードにはふと知り合った男からの愛のメッセージが記されていた。謎めいたその男は、角田が雇った殺し屋だったのだ-。夫の小説と同時進行する妻の危険な恋のゆくえは。やがて起こるいくつもの殺人が物語と現実を引き裂いていく。
悠久の大地にも時は刻まれ、人は彼岸へと旅立つ-。その自然の営みが故意に断たれた跡に、人々に残していく傷みを掬い、北京・杭州・西安・吐魯蕃と旅した地での人・遺跡に、廃墟と化した故郷広島を思う。西に向う一筋の道、東に辿った文化。一木一草春秋に、生と死の重さを見つめる。積年の思いを結実させた記念碑的作品。連作長編小説。
紅白粉の行商人・藍三郎にはもう一つの顔がある。それが世間の外道を闇から闇に葬る女装の死客人・夜霧のお藍だ。彼は幼い頃に両親を惨殺した仇敵を捜しながら暗黒街に生きていた。仇敵の名は元蔵といい、右肩に『死人彫り』をしているという。復讐の神にすべてを捧げたお藍の行く手は夜の大海よりも暗く果てしがない-。
エリート銀行マンの父とは違う生き方をめざしてカネ正食品に就職したものの、社会の風は厳しい。ひとくせもふたくせもある上司や、要領のいい同僚に囲まれ、まるで見知らぬ世界に迷いこんだかのように右往左往する主人公の西条浩介。そんな出来の悪い息子を、父として、先輩サラリーマンとして蔭ながら心配しつつも、企業戦士として、派閥によるサラリーマンの悲哀を味わう浩一郎。テレビCMをうてる自社製品の開発を夢見る加藤松郎社長のもと、新米サラリーマンの汗と涙と笑いの日々が始まった。