1995年8月10日発売
贋の権威や通俗の価値に決して近寄らず、小走りせず、あくまで自分の文学の“背骨”をひたむきに創りつづけた日本の“親爺”木山捷平の最晩年の味わい深い短篇群。敬愛してやまぬ井伏鱒二の秀逸な素描、若き太宰の風貌等、市井の人として生き通した文学者の豊かで暖かな人生世界。
動物園の獣たちの気配に眠れずに過ごした試験前夜から入学式のない入学、一緒にデモを組んだ女子学生の湿気、同じ下宿の先輩との決別、そして、「自己」への問い…。新入生として初めて社会とぶつかった時の、ひりつくような感触と揺れ動く心を濃密に描き、約30年前、否応なく巻き込まれていった大学紛争の数カ月と、自らの立脚点を見つめ直した長編小説。
『舞夢』で知り合った謎の美女・涼子は三度目のデートに現れなかった。十日ほどして訪ねてきた彼女の姉・桐子は、涼子が行方不明になったことを告げ、部屋に残されていた涼子の日記を置いていく。その日記には、ぼくには全く覚えのない、ぼくと涼子との異常なセックスが綴られていた…。エロチシズムの香り漂う傑作長篇。
戦後間もない闇市の、活気溢れる喧噪のなか、ジンタ響かせ夢を売るサーカス興行の世界に身を置き、舌先三寸巧妙な口上でネタを捌くテキヤ稼業の浮き沈みを助けながら、博奕と喧嘩殴り込みと、意地と度胸で命を張って浮世を生きる、特攻隊帰りの血が戦ぐ無法者一代。
忍び寄る遼国の魔手に江湖の英雄たちが決起する。火計、水攻め、幻術など奇想天外な大激戦。勝どきをあげた好漢たちが、待ち受けていたのはなんと、朝廷の裏切りだった。大宋国危うし。董平、呼延灼、石秀、楊雄、鮑旭らも義に集い、梁山泊の威勢増す。壮大なスケールで描く水滸伝の“もしも”。独自の物語を呈する初訳『水滸新伝』、いよいよ本領を発揮する。梁山内五虎将、董平の華やかな結婚式花嫁はあの女傑だった。はたまた呼延灼の純愛を綴る斬新なエピソードも満載。全170回、好漢108人と主要人物の小伝つき。