1995年9月発売
秘めたる魔法の力をもつ石は、もつれた運命の糸をゆっくりと巻き取り始めた。邪悪な闇の瞳を持つ見習い魔女ジリオン。青狼の毛皮を纏う王子ユルスュール。魔王。黄泉の国。伝説の湖。来るべき恋人を待ち続ける水売り娘ー愛と憎しみ、光と影が交わる刹那、世界はめぐり、すべてはあるべき場所へ…。果てしない冒険と限りない夢を壮大なスケールで描く書下ろし本格ファンタジー。
藩主の心変わりから暇を出された側室・お市の方は、家臣・笹原与五郎の妻となる。だが数年後、お市の生んだ子が世継ぎとなり、与五郎は妻の返上を求められる。藩命に従うべきか、それとも…(「拝領妻始末」)。温和な性格で武芸も不得手な男に上意討ちの命が下る。周りは心配するが男は秘策を練っていた(「上意討ち心得」)。家や主君、慣例に縛られる武士たちの悲劇を描く傑作短編集。
人々の願いと夢がついえたその場所にヒーローは忽然と姿を現す。沈思黙考の寡然な正義漢“むっつり右門”こと近藤右門。犯し、殺し、立ち去る“円月殺法”の剣士、眠狂四郎。暇を持て余し、懲悪が趣味となった“旗本退屈男”早乙女主水之介。そして陰惨背徳“四谷怪談”の色魔、民谷伊右衛門。皆の心に今も棲む十二人のヒーローたちが一堂に集結。シリーズの取を飾る壮麗な最終巻。
「今宵、吉良を殺す」-それは謀略の終結を意味した。赤穂藩廃絶後、大石内蔵助は藩士の被った恥を栄光に転化する為、密かな奔走を開始する。大坂塩相場に、町人の噂話の巷に、悲運に泣く女たちの許に…。内蔵助の仕掛けた刃は討入り前にすでにして吉良・上杉一門に迫り、雪の師走十四日は審判の日となった。忠臣、浪士ではなく“刺客”と化した四十七士を気高く描く画期的作品。
時は三代将軍・義満の治世。将軍の従弟にあたる剣の達人・来海頼冬は、血筋ゆえに刺客に追われる日々を送っていた。その前に現われた水軍の頭目父子。彼らは、南北の朝廷を超えて日本の「帝」たらんとする義満の野望を打ち砕くべく、玄界灘一帯で奇襲と抵抗に明け暮れていた。頼冬はそこに、歴史の光明を見出す。南北朝統一という夢を追った男たちの戦いを描く、『武王の門』続編。
宮本武蔵に打ち勝つ事。それのみを念頭に鍛練を重ねた兵法者がいた。夢想権之助は、香取神道流の印可を受け、一刀流、馬庭念流など様々な流派の奥旨を得て武蔵と立合ったが、あえなく敗れてしまう。剣を捨て、諸国を遍歴するうちに、権之助は、杖という新しい得物に出合う。幾年かの苛酷な鍛練の末、数々の秘技を会得して、独自の杖術に開眼する。そして、権之助は再び武蔵に挑んだ。
テキサス州の小さな田舎町、アガタイトで、ある日、若い女性の惨殺死体が発見された。しかも、綺麗にマニキュアされた指の爪のうち三本が、なぜか切り落とされていた。エイブル保安官は捜査を開始するが、犯人像は一向に浮かんでこない。大規模な葬儀が行われる暑い夏の朝、彼は三本の爪を持ち歩いている奇妙な男の話を耳に挾んだ…。ありふれた町を舞台に描く異色サスペンス。
日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれた東京アンナは内閣直属の秘密組織に属する殺し屋。十七歳とは思えない抜群のプロポーションと美貌を生かして標的に接近する。首尾よく初仕事を終えた後、アンナは祇園へアルバイトの舞妓として入り込み、水揚げの相手を探しているとの噂を自ら流し、群がる男たちの中から極道組の親分を選ぶ。ここからが彼女の腕の見せどころだが、はたして…。傑作痛快ミステリー。
世界初の本格的女子プロレスゲーム『レッスルエンジェルス』シリーズ初のノベライズ。ゲームの世界観を独自の解釈で再現し、これまでは明らかにされなかったマイティ祐希子を始めとする人気キャラクター達の素顔に迫る。本作では主人公をジュニア戦士の菊池理宇に設定。師弟関係や華やかな舞台裏での努力などにスポットをあて、女子プロレス本来の魅力も伝えようとする意欲作。
紅い月の夜、暇を持て余したサキュバスのモリガンが、こっそり東京の街にやってきた。ひょんなことから知り合った、神村麻紀江と楽しいひとときをおくっていたが…、麻紀江の極上な血を求める影が一人。二人のダークストーカーによる激しい格闘が炸裂。妖艶乱舞のモリガンは、はたしてこの強敵に勝てるのか。そして、麻紀江を無事救えるのか。モリガンの妖しい魅力が満載されたモリガンによる、モリガンのための小説。
精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは、“ある性的事件”に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうかー。『妹』の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。大江文学の深い祈り。
ある夕暮れ、午睡から目覚めると、左足の親指がペニスになっていたー。驚くべき奇想とともに始まる性の遍歴を描いて、発表直後から圧倒的な反響を呼び、90年代の文学に画期的な地平をひらいた第三十三回女流文学賞受賞の名作。
性の見せ物一座に加わった、親指ペニスを待ち受ける数奇な運命は…。新たなセクシュアリティのあり方をラジカルに問いかけながら、かつてない文学世界をつくりだした、近年、最大の話題作。
宝暦七年、侍・徳山五兵衛が波乱に満ちた六十八歳の生涯を終えた。五兵衛は若い頃、一人の少女への恋慕の念から、土蔵から盗み出した宗〓@59BC@作の笄(こうがい)を贈った。その笄がこれほど数奇な運命をたどろうとは…表題作「さむらいの巣」ほか全7編を収録。味のある短・中編小説、歴史紀行とエッセイ、およびインタビューで構成。歴史ファン、池波ファン待望の一冊。
信州追分への旅行以来、なぜか円くんを避けている小雪ちゃん。大上円は、そんな彼女を訪ね、その鬱屈の意外な正体を知る。一方、ホタルは遺産相続問題で家を引き払うことになり、円くんとの“同居”を決意。小雪や伊福部らも加わって、“ユニー・ファミリー”が誕生しようとしていた。しかし、ホタルをつけ狙う敵の脅威はいよいよ間近に迫り、別離の予感が日一日とふくれあがる…大上円はホタルを守りきることができるのだろうか。
草津温泉に近い暮坂峠の木に吊された繭成金の富豪の死体。東京では地元選出の代議士の奇禍死-。殺人犯と間違われ事件に巻きこまれた若山牧水。「幾山河越えさり行かば-」の歌で知られる牧水は、短歌創作で鍛えた思索と、旅や短歌人脈で得た情報をもとに難事件に挑んだ。首尾やいかに。
時は2世紀半…世界がいまだ伝説の帳に包まれていたころ。劉備は早春の残雪の中で、伏し倒れていた娘を助ける。娘の名は劉桃花。この出会いが歴史の流れを大きく変えることになる。炎のように漢朝を呑み込み始めた新興宗教黄巾党に対して、敢然と立ち上がった男たち-劉備、関羽、張飛、曹操。そしてもう一人、劉桃花。戦いは熾烈を極め、劉備は謎の道士の呪詛によって命を落とす。怒りに燃えた桃花は龍気を発散し、死して悪霊と化した黄巾党の首領張角を倒す。そして劉備として、兄の志を継ぐことを決意する。ここに赤龍の血を引く桃花の数奇な運命の幕があく-。