1995年発売
桃花源にまつわる謎と今上帝の世継ぎにあたる白載星の命を狙う劉妃一派の包囲によって、六和塔の頂きの決闘の果てに銭塘江に落下した載星と刺客の殷玉堂は、蘇州の運河を漂っているところを范仲淹に救われた。彼は進士出身の官僚で、載星が捜し求める生母のことを知っていた。その母から向けられた目付役の落第挙人、包希仁や陶宝春という旅芸人と載星の周りには奇縁で結ばれた人物が多すぎる。敵である己が、この男と行を共にする不思議さを玉堂は思った。長江流域を舞台に波瀾万丈の大ロマン、いよいよ佳境に入る第三弾。
ザトウクジラたちは、緑の光の記憶に包まれて生まれ、やがて「光のわだつみ」へと召されてゆく…。のちに群れの長となるザトウクジラのフルナが回想する若き日々。母親の巨体の陰に守られて育った赤ん坊のころ。幼なじみのローテと遊んだ記憶。畏怖に満ちた父親との対面。そして、長老から聞かされた神秘の物語…。やがてフルナにも、成年期の〈孤独な巡航〉に旅だつ日がやってきた。途途であう仲間たちは、イルカ、カモメ、アホウドリ、ラッコ。だが、人間だけは…。詩人としても有名な著者が、哀調を帯びた鳴き声で〈歌うクジラ〉として知られるザトウクジラを主人公に据えて、ファンタスティックにつづる、海の民たちと大自然への賛歌。
たった一人の妖術師の騙し討ちにあい、一族を滅ぼされたアルドリック。生れ育った城も妖術師の手におち、執拗に命を狙われる。だが隠遁した大魔術師に救われて、彼は復讐を誓った。国家間の覇権争いの背後で蠢く企みとは。彼の行く手を阻むのは、五百年の時を越えて甦える今一人の妖術師、次々と繰り出される異形の化物、むくむくと身を起こす死人たち…剣術と魔術の大合戦。
本書はC・S・ルイスの珠玉のファンタジー『ナルニア国年代記』に様々な角度から光をあて、その魅力の秘密と特質を明らかにしようとする試みである。C・S・.ルイスについてあまりよく知らない方々にとっても、ルイス文学の格好の入門書としての役割を充分に果たしてくれる豊かな内容を含んでいる。また、児童文学一般、ファンタジー、キリスト教と文学の関係などに関心を持っている方々にとっても有益で楽しい読み物となるに違いない。増補改訂にあたって新しい章を一つ加え、主要書目を増補し、新しい挿し絵と入れ換えた。
雑誌社に勤める美和子が異性として意識しはじめたのは英会話教室の講師で痩せていて頼りなげな青年、大道治だった。妹のように面倒を見ていた従姉妹の梢が酒場に忘れてきたのは片方だけのイヤリング。裏には‘FROM OSAMU,WITH LOVE’と彫られていたー。人を傷つけても手放せない愛がある。想うだけでも苦しい恋がある。哀しくも美しい様々な愛の陰影を写し出す6つの連作恋物語。
アメリカを西海岸から中西部へとドライブしながら、ダイナーの紙ナプキンやタブロイド新聞の端っこに書き留める。そんな風にしてこの本は書かれた。感謝祭に行き場のない男達が集うバーの盛衰を描く表題作はじめ、移動への憧憬を結晶させた13編のロード・ノヴェル。
港を作り、航路を短縮して江戸の流通を革命的に変えるー伊豆大島は波浮の築港計画。かつて火付け盗賊改として勇名を馳せた剣の達人、呑海と暗い過去の記憶に怯える青年、鉄之助は、勘定奉行石川忠房の力を借りて、この大工事に奔走していた。そんな彼らに、謎の刺客が襲いかかったとき、幕閣に蠢く巨大な陰謀が姿を現し始めた…。期待の新鋭が放つ超大型時代サスペンス。
その時、日本に近代が始まろうとしていた…。すべてに、新しい「意味」と「かたち」が求められた動乱の幕末、人は何を信じて生き、そして死んでいったのか。高杉晋作、小栗上野介らの強烈な光芒を放つ生涯から、歴史の底より微かに漏れる無名の人々の慟哭までを、名手たちの筆は激しく、優しく描き出す。国家とは、そして人生とは。現代に問いかける13編を収めるシリーズ第9巻。
鷹取俊太郎は、稀に見る色男。十代将軍・家治の目に留まり、半ば公然となった御庭番の裏役として、初代・陰の御庭番を拝命した。いきなり美女の罠に嵌まりずっこけるのだが、岡っ引の孝次、公事師の彦佐衛門、そして、俊太郎に惚れた清国の美女に助けられ、紙問屋に身をやつし、なんとか密命を果たしていく。身分を明かせぬ苦闘が続くが、騙し騙され、将軍直々の隠密御用が始まった。
寄宿学校の水浴び場で起きた不可解な水死事故ーそれが四半世紀にわたる、ピラスター銀行をめぐる暗闘のプロローグだった。7年後、同窓生だったピラスター一族のエドワードとヒューは銀行に勤め、事故当時エドワードをかばったコルドバ人、ミッキー・ミランダは、エドワードの母オーガスタを誘惑し、密かな野望を育んでいた…。ロンドンの金融街に渦巻く欲望を活写した注目作。
左遷させられたアメリカでめざましい業績を挙げたヒューが勇躍帰国。エドワードの頭取後継を望む母オーガスタは狡智の限りを尽くし、ヒューをふたたび失脚させる。だが肝心の息子はミッキーにそそのかされ、ピラスター銀行は創業以来最大のピンチを迎える。事態は緊迫の度を加え、ついに血で血を洗う闘いが…。そして24年前の奇怪な水死事故の真相も、白日の下に曝される時がきた。
パリー米人外科医オズボーンは、28年前に父を殺害した男を発見した。ロンドンーロス市警刑事マクヴェイは、首なし死体の謎に挑んでいた。ジュネーヴー美貌の研修医ヴェラは、運命を塗り変える恋に落ちた。そしてベルリンードイツの名士たちはある祝賀会を準備していた…。無秩序や出来事の裏に潜む、巨大な陰謀とは何か。全世界を震撼させた、大型新人の冒険サスペンス長編。
次々に起きる惨劇を切り抜けながら、父親殺害の真相究明に執念を燃やすオズボーン。刑事マクヴェイも、各国捜査機関と密に連絡を取りつつ、数十年にもわたるおぞましい計画の核心に迫っていた。メディアの帝王アーウィン・ショールの正体とは。そして、《明後日》という謎のコードネームの意味とは。猛火と黒煙に包まれたベルリンを後に、オズボーンは氷雪のユングフラウに向かう。
半導体の中枢部をなす超高純度シリコンは、日本のハイテク産業を支える“戦略物資”であった。ノルウェーの孤島にあるその第一次精製工場が、元米軍特殊部隊の精鋭を中心とするテロリスト集団に武装占領された。ノルウェー国軍による救出作戦は犠牲者を出して挫折。日本では政府の黙認を受けて危機管理会社主導の制圧部隊が編成され、彼らは暴風雪のなか、氷の断崖へ向けて急襲降下し、奪還作戦を決行する。
鎌倉幕府を牛耳る北条一門に反旗をひるがえして挙兵し、幕府の滅亡、南北朝の動乱のなか、勇将・楠木正成、新田義貞らを倒して征夷大将軍となり、室町幕府の礎を築いた足利尊氏。幾多の合戦と政略・政争に明け暮れた尊氏の一生を陰で支えた多くの女たち。妻・登子、白拍子の花夜叉、藤夜叉、阿野廉子をはじめとする美しく妖しい女たちと尊氏との濃密な色模様を円熟の筆致で描き上げた長篇官能時代小説。
右、中国街道。左を下れば京…老の坂わかれ路光秀、決断の時。森蘭丸は蘭ではない。世を乱す乱臣、侫者、乱れ丸が本性。明智一族の女に邪悪な情念の炎をもやす。そして、魔王信長の非道な仕打ちが、光秀の上に雨と降るー。決断の時、老の坂わかれ路。あなたは決断できるか。