1995年発売
三国鼎立時代の最後に天下を統一した魏は、権臣・司馬炎に国を奪われて晋の時代となったが、諸王の権力争いから朝政は乱れた。女道士・石珠と武人・劉弘祖の二人は、続々と集まる憂国気概の同志と結んで、天下平定のために晋都洛陽をめざす。智謀あり、武勇ありの、武術、妖術の入り乱れる混戦のうちに、首尾よく勝利の日を迎える痛快な歴史物語。
鷹森克彦はかつての恋人の朝比奈慧一のマンションを訪れた。別れた後も忘れたかったが忘れなかった、いや忘れられなかった彼。彼の妻が他界したと聞き訪れた。別れたかった理由が慧一の唇から零れる。過度の愛情が生んだ不安。彼も克彦を忘れられなかったという。五年を隔て二人の恋愛が始まる。不安をかきけすように求め合う。他三篇を収録した、冬城蒼生が貴方に贈る秘蔵の初期短篇集。
自動人形、二重人格などをテーマにしたホフマンの「砂男」は、怪奇幻想小説の傑作として有名であるが、後年フロイトによってとりあげられ、恐怖の源泉としての「無気味なもの」が作品ともども詳細に分析された。本書はその「砂男」とフロイトの論文を併せて収録し、訳者の明快な解説を付したもので、古典を古典的論文で読解するという新しい試みを意図したものである。
主人公・大上円は、29日周期で42度の高熱を発する特異体質の持ち主。新都心・東京ウィング・シティに引っ越してきた途端、暴走族に襲われている美少女を救う。それが、探し求めていた少女・百合川蛍との出会いであり、“世界の変化”の始まりだった。美しく高貴で、壊れてしまいそうなボヘミアンガラスにも似た、世紀末の恋の行く手には何が待つのか。
1603年刊の「日葡辞書」を大学に売り込みにきたマヌエルは金だけ奪って逃走したが、翌日その金はなぜか送り返されてきた。「時価2億」にマスコミは沸き立つが、マヌエルは長崎で射殺される。辞書と犯人の行方を追い、“迷宮課”浦島警部は天草、マカオへ飛ぶ。17世紀の夢を血に染めたのは誰か。浦島の推理の冴えは。
『昆虫記』と『80日間世界一周』を生んだ国フランスから、21世紀文学の夜明けを思わせる奇想天外な文学がいま上陸した。主人公はアリ。そう、あの蟻である。彼らは都市を建設し、連合を形成し、外敵と戦う。アリたちをこよなく愛する作家ベルナール・ウエルベルが13年の歳月をかけて書き上げた、想像を絶する不思議の国の冒険物語。フランス語の名手とフランス社会派の緊密な連携による待望の翻訳、ついに成る。
ドシャ降りの真夜中、正也は昼間、仔猫を捨てた雑木林へ急いだ、寝床についたものの、気になったからである。だが、暗闇の中、迷ってしまった。その時、遠くで明かりがチラついた。ホッとして近づいてみると、なんと男が死体を埋めているところだった…。現場に残されたヘアピンを食い込ませた靴跡を追う刑事。連続殺人事件に潜む銀行のオンラインの死角。
元マル暴刑事の佐伯涼は、警察手帳や拳銃、手錠の使用を禁止され『環境犯罪研究所』へ出向させられた。だが佐伯の仕事は刑事時代と同じ暴力団狩りだった。警察の特権、組織を使えぬ佐伯の武器は1400年続く佐伯流活法の拳と強靱な肉体。そして彼の目的は検挙ではなくて暴力団壊滅の戦いだった。犯罪のプロは法の網を逃れ、チンピラに自首させる。首領を潰さなければ根は絶えない。佐伯の凄絶な拳が唸り孤独な戦いが始まる。
大地震発生。恐怖と冒険の近未来小説。シベリアの核兵器解体施設を襲った地震は、予期せぬ核事故をひき起こした。地球の破局まであと十数時間。閉じられた地下世界で、国際混成チームの活躍がはじまる。ロシア・日本・アメリカを結んで描く痛快巨篇。
織田信長が天下一統を志して伊勢、志摩の平定に乗り出したとき、志摩の土豪から身を起こした九鬼嘉隆は真っ先に信長の麾下に馳せ参じた。信長の知遇を得て、九鬼の運命がひらけた。文禄の役で織田水軍の総大将として海戦に明け暮れた戦国大名の数奇な人生を聞く長篇時代小説。第5回柴田錬三郎賞受賞作。
ダブリン、パリ、ウィーンと若き家術家ベラックワがドタバタと駆け抜けてゆく-。「死後しばらくするまでは」出版が禁じられていたベケットの幻の処女作、ついに邦訳刊行なる。
内閣総理大臣加藤友三郎は、戦艦を主体とした海軍の時代から、戦闘機を中心とした空軍の時代の到来を予感し、海軍省から独立した空軍省の創設を命じた。初代空軍大臣には海軍出身の谷口尚真が任命され、それまでなおざりだった情報機関を特設、空母は全て帝国空軍の所有となった。一方、満州の関東軍は権益を狙って中国・北方軍闘の張作霖暗殺を企図していた。帝国空軍に発せられた最初の指令は、関東軍の暴走を抑えるため、情報局特殊工作班によってその謀略を阻止することだった…。日本、中国、ソ連、ドイツを舞台に壮大なスケールで描く長篇戦記シミュレーション第一弾。