1995年発売
桜の花びらが舞う富士見が丘高校入学式。何事にもクールだった僕-神木和己-は、自分とはあらゆる面で正反対の彼-都築裕-と出会った。その時から、僕は彼から片時も目が離せなくなる。“ドキドキ”が僕の心を支配してゆく。-この気持ちはいったい何…。冬城蒼生が語る、もどかしくせつない愛のはじまり。
その日、逢坂嘉三郎の屋敷に現われた少年は、透けるほどの白い肌と、細面の人形のように麗しく美しい容貌をもった美童であった。以来、蜘蛛の巣にかかった蝶のごとく、嘉三郎の心は妖しくとらわれていく…。山藍紫姫子と名香智子が織りなす、幻夢妖美譚。
…これが不倫というものなのだろうか。肌の温かみが伝わってくる。夫とは違う筋肉の盛りあがりを感じながら疼く体を開き…。禁断の愛=不倫の誘惑に抗しきれず、悦楽に悶え燃え尽きようとする熟れた人妻たちの、めくるめく官能の一夜が今日も過ぎてゆく。
時は紀元2世紀、ローマ帝国支配下のユダヤにおいてラビとなった一人の青年エリシャ・ベン・アブヤ。人生の不条理に、ユダヤ教を去ってギリシャ哲学に真理を求めた彼が、激動する歴史の中で到達した結論とは何か。著者の米国系ユダヤ人ラビが、ユダヤの経典タルムードから取材し、豊かな学識のもとに構想した歴史小説。
落ちこぼれマフィアのジョーイがフロリダをめざしたのは大物になって「仕切る」ためだった。が、そうは問屋が卸さなかった。突如、厄災が訪れた。威張り腐った異母兄のジーノが抗争相手のマフィアから300万ドル相当のエメラルドを盗み、殺し屋に追われて逃げてきたのだ。迫力のラストページまで、一気読み。
SF伝奇超大作ついに完結。田沼意次の時代、鬼道衆の分裂と争いから現われ出た闇の歴史は、いま、無窮無限の世界を駆ける霊船黄金丸によって宇宙の進化へと語り継がれる。互いの生命を啖い合う妖星=地球から虚空の巡礼に旅立った霊船を待ち受けるものは何か。終章で明かされる進化の涯に至る形態とは。
2061年、ヘイウッド・フロイドは高鳴る動悸を抑えきれなかった。75年ぶりに再接近してきたハレー彗星の探査計画への参加を要請されたのだ。最新型のミューオン駆動宇宙船ユニバース号に乗り組みハレー彗星をめざすーそして、みずからの手で彗星を調査する。だが、彗星に着地し探査を始めたフロイドたちを、思いもよらぬ事件が待ち受けていた。
人類は、木星軌道上に設置したワームホールをタイムマシンに転換すべく奮闘していた。そんな時、そのワームホールから未来人の船が現れた。乗っていたのは〈ウィグナーの友人〉と名乗る人々で千五百年未来の地球を支配する異星種属クワックスを滅ぼすためにやって来たのだという。だが、その裏には途方もない意図が。ハードSFの新たな旗手が、千五百年の時に隔てられた二つの太陽系の抗争を壮大に描いた傑作長篇。
こいつは時価五十万ドル、いやそれ以上かー私たちは忍び込んだコルキャノン邸で、世界に五枚しかないという超希少コインを手に入れた。たった一時間の仕事としては上出来だ。と喜んだのも一晩限り、翌朝コルキャノンの妻が撲殺死体で発見され、なんと私に殺人容疑が。その上、第二の殺人が起こり、問題のコインが消えるにおよんで、私は犯人捜しに乗り出すことに。
尖閣列島は日中両国が主権を主張する、不可侵海域。武器・麻薬の売買や密輸が横行する無法地帯だ。海上自衛隊は極秘裏に最新鋭艦『ゆきかぜ』を送り、無国籍船を装って密輸犯を撃滅してきた。人呼んで「海の悪魔」。密貿易の巨利で経済特区を支配する中国海軍の巨魁・劉淵丹は、北京政府と対立、ついに尖閣列島に、北京政府転覆の軍事基地を築きはじめた。海戦シミュレーション長篇。
八王子分署におかしな二人が誕生した。一人は元演歌歌手で能天気な男、百瀬刑事。相棒は本署から配属された仕事一筋の若き才女、小池奈美子部長刑事。二人の初仕事はある通報から始まった。ウイルス研究の小川博士宅で夫人七重の不倫相手が殺された。犯人は七重のもう一人の愛人で、しかも夫人はその男と逃亡中だという。捜査中に、相模湖から胴体だけの女の死体が浮かび上がったが…。書下し長篇ミステリー。
淳子四十六歳。男と女の情炎を燃やしつづけた人生だった。養女となって婿養子をとったが夫は養母と関係し、飛び出て勤めた料亭では、主人にくどかれたのも束の間、夫人に半死半生でたたき出された。月日を重ね、料亭まで手にいれたが、世話してくれた男にも身をまかせた。その男が知人の男性も交え、スペイン旅行に行こうと誘ってきた。なぜ三人。淳子の肉体の奥に、妖しい炎が燃えさかった。鬼才の秀作。