1996年1月発売
喧嘩と暴力が日常の沖仲仕の上にも、近代化の波は押し寄せる。巨大資本による石炭積み込みの機械化が企てられ、若松港で玉井組の親方となった金五郎は、荷主側との交渉に身体をはった。争議、脅迫、奸計、ヤクザとの生命をかけた抗争…。時代の激流と沖仲仕の独特な信念がひきおこす事件の連続のなかに、明治の男と女の豪放で繊細な交情を鮮やかに定着させた、痛快無類、興趣抜群の自伝的長編。
浴衣の裾を裂いて東山の手が内腿に入り、パンティのはざまに迫った。一瞬強く交差したが、二度三度なぞられると、力を失って股はゆるやかに開いた。パンティの横から指が入る。クリットがつままれた。体が震え痺れる。-彼の怒張しきったペニスが、もう遠慮なく浴衣の裾を乱した桐子の股間に感じられる。それはブリーフを突き抜け、ズボンの外に突出している。桐子は、その温みに誘われ、握って…。熟した未亡人教師・桐子と尼さく・春恵尼の快感絶頂物語。
『ワンダラーズフロムイース』での冒険から1年。勇者アドルは、今や20才の青年へと成長していた。“さまよえる幻の都”の噂を聞き、新天地アフロカ大陸に渡ったアドルは、ナルムの豪商ドーマンの依頼を受け、幻の都への手掛かりとなる5つの結晶探しの旅に出るのだが…。同名SFCソフトを全三巻にわたり大胆に小説化。
浄化隊の隊長逆井は、牧場の一人娘ひいなを連れ出すよう手児名に命令される。手児名に疑念を抱いていた逆井は、浄化隊が仕掛ける容赦ないやり方を見て、手児名の命に背き、ひいなとともに凡樹の里を目指す。その頃凡樹の里では、東日流の跡を継いでトミオジとなった高市が伝説の剣を探して五霞山の洞窟を奥深く進んでいたのだが…。彼の前に突如現われたものとは。
きっと彼女に白いヴェールをかぶせて赤いコンバーチブルで連れて帰ろう。高3の夏をグルグルまわったミオと僕の恋。全審査員を感動させた純・青春小説。第32回文芸賞受賞作。
美希は過去の辛い思い出に縛られ、四十路の今日まで恋も人生も諦め、高知の山里で和紙を漉く日々を送ってきた。それが幸せなのだと自ら言い聞かせて…。時の流れから取り残された小さな山村で、美希の一族は人々から「狗神筋」と忌み嫌われながらも平穏な日々が坦々と続いてゆくはずだった。そんな時、一陣の風の様に現れた青年・晃。互いの心の中に同じ孤独を見出し、惹かれ合った二人が結ばれた時、「血」の悲劇が幕をあける。不気味な胎動を始める狗神。村人を襲う漆黒の闇と悪夢。土佐の犬神伝承をもとに、人の心の深淵に忍び込む恐怖を嫋やかな筆致で描き切った、傑作伝奇小説。
二十世紀における最も重要な二人の思想家の出会いが生んだ幻の名著。本論に加え、1934年から40年にかけてのベンヤミン宛書簡を通し、時とともに輝きを増すその思考の核心に迫る。
福祉事務所の万年係長・重松は、アル中のために周囲から疎んじられていた。そんな彼がかつて担当したケース-やはりアル中で家族と生き別れた男-が二十数年ぶりに、重松の前に現われて…。表題作ほか全八篇収録の連作集。
春の新番組で念願叶って実力派の人気俳優、沖田仁光との共演が決まった篝龍司。医学部出身の異色俳優、篝にとって沖田という存在は特別だった。美しく整った品のいい面立ち、スーツのよく似合う長身、そして何より他人を寄せつけない孤高の雰囲気。憧れ続けた愛しい男。惚れていることを隠しもせず、ひたむきな視線を投げかけてくる篝に、冷たく閉ざされた沖田の心も次第にほどけてくる…。そんな時、沖田を屈辱の淵へと突き落とす事件が…。
高校一年生の清貴と智彦は従兄弟同士。孤独な境遇の二人にとって、お互いはかけがえのない存在だった。しかし、ある日、智彦の前にバスケ部の篤志が現れたことで、ピーナッツの殻にくるまれたような二人の時期が、変わりはじめた…。大人への階段をのぼりはじめた少年たちがおりなす、センシティヴ・ラヴ・ストーリー。
ジェームズ・ジョイスは、ピカソやシェーンベルクやストラヴィンスキーとならぶモダニズムの旗手の1人だ。本書は、このアイルランドのスフィンクス(謎めいた人物)の作品を前に感じていた読者の抵抗感と逡巡を払拭して、じかにその作品に接してみようという気を起こさせてくれるに違いない。カール・フリントのイラストも魅力である。
青年将校たちの間で昭和維新が熱っぽく語られる時代-。若き陸軍中尉・剣持梓は、幼い頃から繰り返し見る幻の中で、陛下への熱い思いを募らせる。魔王のような存在・北一輝との交流や、実姉との危うい関係の果てに梓はついに“叛乱”に身を投じてゆく…。歴史上希有な“官能的事件”とも言うべき二・二六事件外伝にして、刺激的な“恋愛小説”の登場。山本周五郎賞受賞第一作、衝撃の長編小説。
『猫』の最後で死んだはずが、目覚めたらなぜか上海にいた「吾輩」。そこへ飛び込んだ、なんと苦沙弥先生殺害の報、そして犯人はこの街に。個性的な猫たちが、上海の街を縦横無尽に駆け回って事件解決に大活躍、『猫』でお馴染みの登場人物も総出演。漱石文体を駆使した書下ろし一千枚、“純文学”をぶっ飛ばす奇想天外の冒険ミステリー。