1996年3月発売
長期休暇中のケイト・ファンスラーと夫のリードは、スカイラー大学のロー・スクールで授業をうけもつことになる。だがそこは、白人男性の権力欲と凡庸さと女嫌いの牙城だった。終身在職権をもつただひとりの女性教授にまつわる不隠なうわさ、教授だった夫を殺害した妻、そして暗躍する謎の老秘書。静かな学期を楽しもうというケイトのもくろみはもろくもくずれ去る。理想のカップル、ケイトとリードの結婚にも危機がおとずれて…。スパイ活動のテクニックを駆使、ツイストをきかせた不思議な味わいをもつ最新の問題作。
「ファンスラー先生、精神科のよいお医者をご存じですか」美人大学院生ジャネット・ハリソンが助けをもとめた相手は、英文学の教授ケイト・ファンスラーだった。ケイトは、かつての恋人で、今は精神分析医をしているイマニュエル・バウアーを紹介する。だがある日、バウアー医師の診療室にある寝椅子の上で、ジャネットの刺殺死体が発見されたのだ。バウアー医師の無実を確信するケイトにも、やがて大きな嫌疑がかかって…。ケイト・ファンスラー登場の記念すべき第1作。
大学付属病院の研修医(レジデント)の久住隆と中務春彦は密かに愛し合う関係。二人ともエリートで美形なため、言い寄る男女は数知れず。隆の方は適当にやれるが、オクテの春彦は狙われていることにも気がつかない。嫉妬心にさいなまれる隆は、つい春彦に無体なことをしてしまって…。雑誌掲載の表題作と短編『ナイトシフト』に250枚の書き下ろしを加えた松岡なつきの話題作、鳥羽笙子の挿画で登場。
金茶色の髪、しなやかな指、スレンダーな身体。どれをとっても僕の胸をおどらせる彼。名前はモーリ。その彼と僕が運命の糸で結ばれていたなんて。おまけに、僕と妹、そして母を捨てて逃げた同性愛者のダディまで絡んでくるなんて。でも、僕のファースト・ラブは思わぬ騒動に巻き込まれてしまい、成就しないまま、クライマックスに突入。
名刀乾雲丸と坤竜丸。離れれば互いに求めあい、持つ者を殺人鬼と化す宿命の妖刀だ。その一つが小野塚道場の俊才・諏訪栄三郎の手に、一つが二刀獲得に異様な執念を燃やす片眼片腕の怪剣士・丹下左膳に渡ったときから、大江戸の夜は血に染まる。乱闘に次ぐ乱闘に恋のさやあてもからみ、急展開するスリル満点の物語の興奮。映画でもおなじみ、大衆小説屈指のスーパー・ヒーロー、いよいよ登場。
筑豊の廃坑の村。離職者更生の手段として、自分の経験と技術を教えこんだ元スリの耳に、昔の仲間、いまは東京のデパート保安係が囁いたーもっと安全で割りのいい稼ぎがあるじゃないか。かくて結成された窃盗団。大胆巧妙な手口とチームワークを見せる面々とベテラン刑事との虚々実々の駆引き、そして意外な結末。雑草の逞しさで生きる泥棒集団の活躍を温かく軽妙に描いた、会心の悪漢小説。
長い五寸のくわえ楊枝に三度笠も懐かしい、上州無宿の渡世人・木枯し紋次郎が帰って来た。時は嘉永三年、股旅生活にさらに十年の歳月を加え三十九歳になった紋次郎が、十年前の浮世の義理に身を阻まれて、珍しく上州中仙道は板鼻宿最大の旅籠花菱屋に逗留し、遭遇した事件の数々。一世を風靡した孤高の渡世人・木枯し紋次郎の長脇差が翻る傑作連作小説集。
フツーの家族のフツーじゃない愛のカタチ。宮内家はどこにでもいる四人家族、なんだけど-神戸で「話し屋」として働くママは、誰よりパパを愛しているのにパパだけじゃ我慢できない困ったヒト。パパは誰かに恋して輝いてるママを包み込む大人の男だけど、若い女の人にフラフラしたり。高校生の明彦は女の子が放っておかないルックスにも関わらずホモセクシャル。中学生の美香は「大人の恋愛」に憧れてはいるものの、恋に恋するお年頃。ある日、美香はママの長電話から「ママの恋愛」を知る…。
「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。
葛の絡まる古い洋館の主人アシュレイの前に、ある日陸イグアナのバトラーを連れた少年、明生が現れた。すったもんだの末に、アシュレイは下宿屋“おおいぬ荘”を始めることに…。血の気の多い政雄と彼の過去を知る裕幸の二人の下宿人に加え謎の影も現れておおいぬ荘はいつでも賑やか。Wアキラが織りなすハートフル・ストーリーズ。
8年間、真雪を召使い兼おもちゃとして扱ってきた馨が4年振りにアメリカから帰ってきた。もう以前の関係は嫌だとする真雪だが、『何でも屋』の馨にあるカップルから2つの依頼が持ち込まれ、協力するハメに。金につられて引き受けた、一見相反するこの依頼に打つ手はあるのか。
「蠅がいない。蠅抜きでどうして、中世のギルドが運営できるんだ。」セーラとマックスの旧友リディアが、目下職を得ている美術品修復業者、その名も“復活の人”。これが実に怪しい男で、職人たちに珍妙なルネサンス画家の格好をさせるかと思えば、仕事に際しては極端な秘密主義を敢行。おまけに彼の周囲では、過去何人もの人間が謎めいた死を遂げているらしい。折りしも彼らが甦らせた品々が相次いで盗まれ、殺人事件までが発生してしまう。陰には常に、赤いジョギング・スーツ姿の人影が…。骨折リハビリ中のマックスも奮闘する好調第十弾。
灼熱の太陽に喘ぐパリが漸く黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾ーその銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。聖書の言葉どおりに見立てられた屍がひとつ、またひとつと、中世カタリ派の聖地に築かれていく。ラルース家事件の桎梏を束の間忘れさせてくれた友人が渦中に翻弄され、案じるナディア。謎めく名探偵矢吹駆の言動に隠された意図は。
流浪の騎士・タウラッドに敗北したガーゼィの聖戦士クリスの姿は、メトメウス族の者たちを失望させてしまった。やはり予備校生が、救国の騎士として戦うことに無理があったのか。しばらくはこの世界から出られそうにないと覚悟したクリスは、この時代の戦術を学ぶことからはじめようとするのだが…。好評のシリーズ第3弾。
クレア・マロイはよく事件に巻きこまれ、警察もいやがるほど見事に解決してしまう書店の店主。今度も娘のキャロンとともに亡夫の故郷ルイジアナへ、マロイ家の女当主である姑の八十歳の誕生祝いに赴くが、遺言書の発表を前に車椅子ごと沼にはまって当主は死んでしまう。警察は事故死とみるが、クレアは遺言書にからまる殺人事件だとして乗り出した。
「昭和」をひたむきに生きぬいた女の半生を、村と河の移りかわりとともに描く、名作『四万十川』の作者による、感動の大作。満州分村移民の隠された悲劇、その傷痕をのりこえて希望へ歩み出す女たち男たちの戦後。