1996年5月20日発売
広告代理店勤務のスマートな男と結婚し、東京で暮らす佐々木蒼子。六回目の結婚記念日は年下の恋人と旅行中…そんな蒼子が自分のそっくり「蒼子B」と出くわした。彼女は過去の記憶をすっかり共有し、昔の恋人河見と結婚して、真面目な主婦生活を送っていた。全く性格の違う蒼子Aと蒼子B。ある日、二人は入れ替わることを決意した。誰もが夢見る「もうひとつの人生」の苦悩と歓びを描いた切なくいとおしい恋愛ファンタジー。万華鏡のような美しい小説。
「ヘンリー、今晩、戻ってきて」本書には、16歳の少女(マーガレット・ミッチェル)が初恋のポーイフレンドに捧げた愛の小説と純粋な気持ちを綴ったラブ・レターが入っています。
紘道館の俊英姿三四郎に、苛烈な試練が次々と襲いかかる。柔術諸派との興廃を賭けた対決につづくアメリカ人ボクサーとの変則的な興行。その陰には、怨みを越えて彼を慕う乙美を身売りから救おうとする強い決意が秘められていた。だが、金銭を得る興行は、紘道館からの破門を意味していた…。快男児の激情と懊悩を、柔道の苦難の青春期に重ね合わせて描く渾身のロマン、いよいよ波乱万丈。
淀君こそ史上最高の美女。雑誌編集者の誠之助が大坂城趾で艶麗な姿態を夢想したとたん、石垣は崩れ、彼は慶長十九年の城内にタイムスリップした。洋服姿から切支丹と疑われるが、歴史知識を活用、神の予言者として信頼と人気を集める。そして、ついに憧れの淀君の寝所へ招かれた。だが、彼も歴史を変えることはできなかった…。SF的発想と確かな史眼で、落城の悲劇を軽妙に描く異色の快作。
河童を思わせる愛嬌者、曽呂利新左衛門は、堺でも知られた鞘細工の名人だった。信長の知遇を得るはずの日に起きた本能寺の変が、彼の運命を一変させた。雑賀衆の軍師として秀吉軍と戦い惨敗、堺に舞い戻った彼を、突然秀吉が訪ねてきた。猿面と河童面の奇妙な交流が始まる。その陰で、淡い恋が生まれ、消えた…。戦国乱世を、才覚と度胸で飄々と生きた奇人の姿を、骨太に描き出した歴史小説。
「壮烈な撃墜死」は軍部の捏造だった。戦史をリアルに覆す実録小説。海軍の高官と思しきその男は、乗機が墜落したあとも、しばらく生きていたものと推測された。致命傷は、敵機の機銃でなく、自らの手によるものらしかった。しかし軍医は、事実をありのままに記し止めることを禁じられ、目撃者たちは最前線に赴かされて次々と戦死していった…。真珠湾の英雄を、あくまで英雄として葬るために、自決は伏せられ、また伏せられるために多くの血が流れた…。綿密な史料を駆使してブーゲンビル島秘話を再現する、大作ノンフィクションノベル。
日米開戦は、ルーズベルト米大統領の陰謀だった。昭和16年の夏、日本を第二次世界大戦に巻き込もうとしていたのは、それぞれの思惑のもと、アメリカだけでなく、イギリス、ドイツの列強国だった。イギリスは、日本参戦によるアメリカの対ドイツ参戦を望み、ドイツは、ドイツ軍正面のソ連軍の満州派遣を望んでいたのである。遂に日本は、右に行こうと、左に行こうと、戦争へのみちしかなくなった。閉ざされた戦争の嵐の中、ひたすら戦争突入を回避しようとしていた山本五十六連合艦隊司令長官も、米海軍の挑発で連合艦隊を出撃させた。しかし、海軍工廠で建造中の超戦艦はまだ完成していない。日米対決の行方を左右する、戦艦大和をはるかにしのぐ50センチ砲搭載の超戦艦の建造が急ピッチで進められていた。書下ろし長編戦記シミュレーション。
冷たい家族への反発は、秀の外見や行動を不良のようにさせる。それでも秀の純な心は出口を求めて彷徨っている。秀の気持ちを理解するのは、耳の不自由な未希生ただひとり。でも秀は未希生に対して、誰にも言えない負目があった。美貌の文彦との再会によって、秀の秘密は未希生に知られることに…。秀の心は、もう誰にも届かないのだろうか…。