1996年発売
子供は無事だ、きみのキャリアは保証する。ただし、ひとこと無罪といってくれればの話だが-マフィア絡みの殺人事件の公判で陪審員に選ばれたアニーは、ティーチャーと名乗る謎の男から無罪評決を強要される。明らかに有罪である被告人を、残る11人の陪審員を説得して無罪とすることが果たして可能なのか。恐怖におののきながらも、アニーは気力と知力をふりしぼるが…。
俺は“キツネ”。元ヤクザだ。元相撲取りの蒼ノ海とともに東京を追われ、札幌の旅館に宿泊していた。女将の工藤純子に惚れた弱みから、面倒なことに巻き込まれた。純子に弟の武彦を更生させるよう頼まれたのだ。純子は武彦の博打のせいで多額の負債を愚連隊の大神組にかかえていた。愚連隊のボス・大神に会った俺はなぜか大神と意気投合してしまい、いつのまにか地元の暴力団の吉本組襲撃を手伝い、さらには秘境・白神山地に行く羽目に…。都会に敗れた男と女のねじれた愛憎が迸る究極の暴力ブルース第2弾。
石神探偵事務所の野上英太郎のもとに、またしても奇妙な依頼-名門修己学院高校理事長の母親・森名スエが、孫の保一の先祖を敬う気持ちが本物なのかどうかを調べてほしい。もし、先祖をないがしろにするうつけ者であったなら、保一を学院から追い出して養子をとるというのだ。野上と助手の狩野俊介が保一の調査を始め、森名邸を訪問した夜、保一の部屋で異変が。森名家に伝わり、現在、邸から十キロも離れた寵福寺に保管されている四メートルの降魔弓から射られたと思われる矢が、保一の胸を貫いていたのだ。
東京・青山にあるニューオリエンタル・ホテルの支配人、北見慎吾は仕事も好きだが、女性はそれ以上、三度の飯よりも好きなフェミニスト。その淑女喰いの卓越したテクニックとタフネスぶりから、「今業平」との異名もとっている。その日、久しぶりに来迎寺摩里枝がチェックインした。摩里枝は、父親の急死によって二代目を引き継いだばかりの旅行代理店・東京ツーリストの若き女社長。激しいラブメイクの後、北見は摩里枝から意外な話をきかされた…。長篇官能サスペンス。
リバプールの貧しい教区にある教会に、若く美しい司祭グレッグが赴任してきた。強い信念を持つ彼は、先輩の司祭が女性と同棲していることに憤りを覚えるが、ある夜、彼が向かったのはゲイたちが集まるディスコだった。そんなある日、告解でリサという少女から父親との近親相姦の悩みを打ち明けられる。グレッグにできることはほとんど何もなかったが、このことが彼自身の秘密の暴露へとつながってゆく…。全米でカトリック教会をボイコットに立ち上がらせ、ついにローマ法皇が抗議の声明を発表した衝撃の問題作。
栗村夏樹は都内の短大生で剣道三段の腕前。自宅近くの警察署の捜査一係・牧田刑事から電話がかかり、夏樹の友人・桂木亜沙美が誘拐され、身代金一億円を要求する脅迫状が、ファックスで届いたという…。’94年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞したトリック・メーカーの著者が構想二年、満を持して放つトリック&ドンデン返し。「海に沈む夕陽、“殺人者”が若い女性を断崖絶壁に追いつめ、最後の電話をかけさせる」-プロローグに込められた三つの謎とは。読者はこの仕掛けをどこで見破るか。書下ろし本格推理傑作。
退役したメルヴァリー侯爵は、愛人達の裏切りなどで、ロンドンの生活に幻滅してしまい、失意のまま故郷の館へと向かう。その途中、馬場の事故に遭遇するが、その一台に乗っていたクリスティーナという美少女は、侯爵の領地内で乳母と二人きりで暮らしていた。だが、既に両親は亡く、強引な男に迫られて怯えながら過ごす毎日らしい。そんな事情を知った侯爵は、付添い役を捜し、自分の館に引き取ろうと決心するが…。
近未来の東京に奇病が発生した。この病に冒されると、人間は理性を失い、狂暴な衝動にとりつかれ、ついに人間を食らうようになる。女子大生藤原志保が突然、姿を消す。仲間たちは、例の病気にかかって隔離地帯・渋谷に送られたのだろうと噂している。志保の恋人、環は諦め切れずに志保を追って、渋谷に潜入、再会を果たすが…。
話しかけてきた友人がトツゼン目の前で交通事故にあう。夢で見たハンサムな青年がパット現われる。家へ帰ると家族は皆行方不明。なんとも奇妙な一日。ところが、その日から由起子の日常はガタガタ…。行く手にまちかまえる、あなたの知らない不思議な世界、古都鎌倉を舞台に繰り広げられる、怪奇と心ときめくロマン。
大自然に囲まれた豊かな大地アーカトラス。そこには独自の文化を持つメリンジ族の民がいた…。一方アーカトラスを文明のない未開地と呼ぶ大国イーリアで暮らす少女レインは、突然将来有望な医師に熱烈な求婚をされる。きっと幸せになれる結婚なのに…。未知の大地を舞台に、くり広げられる壮大な愛の物語〜「序章」の開幕。
田村正和主演・大人気ドラマのノベライズ、文庫化第二弾。事件が起こると忽然と姿を現わし、犯人を逮捕すると忽然と消えてしまう、バカ丁寧だが捕らえどころのない変わった男ー警部補・古畑任三郎が、またまた大活躍。今回、古畑に挑戦するのは少女漫画家の小石川ちなみ、国会議員秘書・迫坪茂夫、ラジオ・パーソナリティの中浦たか子、外科医・中川淳一、そしてベテラン刑事の木暮音次郎警部。首尾よく古畑をだませるのか、それとも…。三谷幸喜が描く本格ミステリーの決定版。
翼よ、あれは何の灯だーリンドバーグよりも一足先に大西洋横断飛行に成功しながら、アフリカに着陸してしまった日本人。アポロ11号に乗って月まで行き、着陸に成功したのに、月に隆りられなかったクルー。歴史に名を残した幸運な人の陰には、もうちょっとで有名になれたはずの人がきっといた。陽の目を見なかった運のない人々のドラマを愛を込めて描く著者新機軸の仮想伝記小説集。
政治の大転換を予見して衝撃を与えた謎の作家が、今、遂にヴェールを脱いだ。-非自民連立政権誕生の裏で、宮沢喜一と羽田孜はどんなやり取りをしたか。コメ市場部分開放に到る過程で小沢一郎やコメ・マフィアがいかに暗躍したか。政変の陰で繰り広げられた会話の細部までが、黒河小太郎によって白日の下に晒された。しかし、これは全て想像力によって紡ぎだされた小説なのだ。
アザゼルがね、とジョージが話し出した。絶対秘密だけど、奴は親しくしている悪魔なんだ。身長2cmのチビだけど、人が、いや悪魔が好くてね、困っている友達の願いを何回も叶えてくれた。女の子を美人にしたし、刑事に嘘を見抜く力を与えた。科学狂の運ちゃんに空を飛ばせたこともある。でもなぜか皆幸せにならないんだ…。著者の友人ジョージが語る奇想天外なエピソード18編。
1956年2月、ふたりの青年はペンシルヴァニア大学のキャンパスで出会った。刑事弁護士を目指すジェシーと、ジャーナリスト志望のマイク。彼らは野望に燃えていた。そして、それを実らせる術を心得てもいた。戦争と暗殺という病魔に蝕まれつつあったアメリカ。ふたりはそこで、ユダヤ社会、マフィア、政界と、あらゆる人脈を利用したー。パワーエリートの世界を活写する問題作。