1996年発売
かつて愛したマリイカが映画デビューする。報道カメラマン・ボロは、愛を確認するため、ブガッティを飛ばした。だが、女は愛を躊躇い、再会を祝すライカを贈るだけだった…。偶然撮ったライカに重大機密が刻印されていた。ボロのフィルムを奪うため、ナチはマリイカを軟禁。ボロは巧妙な作戦でマリイカを救出し、パリ行き列車でドイツ国境突破を謀る。軍用機で追うナチ。超大型冒険小説。
退屈な日々を過ごしていた高2の春休みのある日、大西多聞は姉の千鶴子が通っている大学のアーチェリーの射場で的を射る一人の青年・城戸茂朝の姿に一目惚れしてしまう。多聞は彼にもう一度会いたいがために同じ大学へ進学してアーチェリー部に入部する。だが、その彼の意中の人は実は千鶴子だった-。大幅加筆で遂に登場。
高校二年の夏休み、工藤友貴は出会って一瞬の後、江口忍に心を奪われた。互いの想いに気づいた彼等は、大学生になって初体験に挑むが、失敗する。友貴は、体の関係は徐々に創り上げていこうと思い、あえて急がなかった。しかし忍は、年上の幼馴染み蓮見達彦の手管にかかり、彼と関係してしまう…。表題作に続編『いつでもPureで』と書き下ろし番外編、それに商業誌未発表作品を加えた、珠玉の愛の作品集。
かつて殺人があった廃墟の塔で再び殺人が。発見者は高校生・烏兎、獅子丸、祐今。死体はその事件の犯人と目され、逃亡していた祐今の父親だった。現場には、塔にむかう雪上の足跡ひとつ。そして三たび殺人は起こった。繰り返される、犯人の足跡がない密室殺人の真相は。麻耶雄嵩、正面から雪の密室に挑戦。
ハックは「アダム」、トムは「蛇」か。自由を求めてミシシッピを下るハックとジムー行く手を阻む「蛇」(トム)。ハックの冒険に「神話」世界を浮かび上がらせる作品論。
「私は怖れていたのだ。私などが絶対に踏み込んでは行けない場所を頑なに守っている生徒という他人が怖かったのだ」敗戦の色濃くなった昭和20年の初め、農村に学童疎開した34名の少年達の不安と飢えの日。最もおとなしいはずの生徒の脱走の波紋。没後見つかった引率教師の当時の日記に綴られた激しく揺れる文字。少年らの裡に生まれる孤独を見据えて描く鮮烈な秀作。
厳格な母親と頼りない父親、管理と偽善が横行する学校を吹き飛ばせ。わたしは赤が好き。わたしは赤い夢を見る。夢や記憶をたどりながら、自分を発見するために『嵐が丘』へと旅立つ…。『血みどろ臓物ハイスクール』のポスト・パンク作家が世界に股を開いた、迸る出血ヒーリング小説。
故郷の惑星が帝国の領地となったために、意に反して、強大なアーヴ星間帝国の貴族となったジントは、宇宙港で帝都へ向かう戦艦を待っていたのだが…そこに現れたのはひとりの少女。彼女の名はラフィールという。同じ戦艦に乗りこむ見習い士官だったが、彼女にはもう一つの身分があった。皇帝の孫娘にして帝国を継ぐ王女だったのだ。-王女とジントの冒険行を、SFマインドたっぷりに描く話題のスペースオペラ第2弾。
自然と動物を愛した夢見がちな少年は、イギリス社会でウェールズ人ゆえに差別を受けながらも、腕っぷしの強い「反逆者」に成長したー。本書は、著者が「フィクションではない」と断言する渾身の自伝的小説集である。中学校教科書に採用された「プリンス」含む、学校嫌いだったニコル氏の少年期描く15篇。
人工授精で授かった赤ん坊が何者かに誘拐されるーシングル・ウーマンを襲った突然の悲劇。ダイビング中の事故責任を問われて窮地に立つ伝説のダイバー。出会うはずのない女と男が、事件の真相をたどるうち、奇跡のように邂逅する。謎の洞窟ブルー・ホールに眠る恐るべき陰謀とは。衝撃のミステリーロマン。
地が滑り、地底に流れる水音が泥沼に誘うが如くに山奥にこだまする、愛と死、生の淵に刻むロマン。真宗王国北陸を舞台に壮大な構想で描く長篇。神隠しではないか-。行方不明になった幼女に、土地のひとの心は騒ぐ。二十五年前の地滑りで離散した山村に、一人残る老人。其処を訪ねる都会育ちの孫娘。その無垢の娘が惹かれる中年男性の思惑は-。日中戦争の傷痕が今なお、深く突きささるこの地に、混沌とした現代社会の歪みを、人間の罪と罰、情念の世界に焙り出す。