1996年発売
栗村夏樹は都内の短大生で剣道三段の腕前。自宅近くの警察署の捜査一係・牧田刑事から電話がかかり、夏樹の友人・桂木亜沙美が誘拐され、身代金一億円を要求する脅迫状が、ファックスで届いたという…。’94年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞したトリック・メーカーの著者が構想二年、満を持して放つトリック&ドンデン返し。「海に沈む夕陽、“殺人者”が若い女性を断崖絶壁に追いつめ、最後の電話をかけさせる」-プロローグに込められた三つの謎とは。読者はこの仕掛けをどこで見破るか。書下ろし本格推理傑作。
退役したメルヴァリー侯爵は、愛人達の裏切りなどで、ロンドンの生活に幻滅してしまい、失意のまま故郷の館へと向かう。その途中、馬場の事故に遭遇するが、その一台に乗っていたクリスティーナという美少女は、侯爵の領地内で乳母と二人きりで暮らしていた。だが、既に両親は亡く、強引な男に迫られて怯えながら過ごす毎日らしい。そんな事情を知った侯爵は、付添い役を捜し、自分の館に引き取ろうと決心するが…。
話しかけてきた友人がトツゼン目の前で交通事故にあう。夢で見たハンサムな青年がパット現われる。家へ帰ると家族は皆行方不明。なんとも奇妙な一日。ところが、その日から由起子の日常はガタガタ…。行く手にまちかまえる、あなたの知らない不思議な世界、古都鎌倉を舞台に繰り広げられる、怪奇と心ときめくロマン。
大自然に囲まれた豊かな大地アーカトラス。そこには独自の文化を持つメリンジ族の民がいた…。一方アーカトラスを文明のない未開地と呼ぶ大国イーリアで暮らす少女レインは、突然将来有望な医師に熱烈な求婚をされる。きっと幸せになれる結婚なのに…。未知の大地を舞台に、くり広げられる壮大な愛の物語〜「序章」の開幕。
田村正和主演・大人気ドラマのノベライズ、文庫化第二弾。事件が起こると忽然と姿を現わし、犯人を逮捕すると忽然と消えてしまう、バカ丁寧だが捕らえどころのない変わった男ー警部補・古畑任三郎が、またまた大活躍。今回、古畑に挑戦するのは少女漫画家の小石川ちなみ、国会議員秘書・迫坪茂夫、ラジオ・パーソナリティの中浦たか子、外科医・中川淳一、そしてベテラン刑事の木暮音次郎警部。首尾よく古畑をだませるのか、それとも…。三谷幸喜が描く本格ミステリーの決定版。
翼よ、あれは何の灯だーリンドバーグよりも一足先に大西洋横断飛行に成功しながら、アフリカに着陸してしまった日本人。アポロ11号に乗って月まで行き、着陸に成功したのに、月に隆りられなかったクルー。歴史に名を残した幸運な人の陰には、もうちょっとで有名になれたはずの人がきっといた。陽の目を見なかった運のない人々のドラマを愛を込めて描く著者新機軸の仮想伝記小説集。
政治の大転換を予見して衝撃を与えた謎の作家が、今、遂にヴェールを脱いだ。-非自民連立政権誕生の裏で、宮沢喜一と羽田孜はどんなやり取りをしたか。コメ市場部分開放に到る過程で小沢一郎やコメ・マフィアがいかに暗躍したか。政変の陰で繰り広げられた会話の細部までが、黒河小太郎によって白日の下に晒された。しかし、これは全て想像力によって紡ぎだされた小説なのだ。
アザゼルがね、とジョージが話し出した。絶対秘密だけど、奴は親しくしている悪魔なんだ。身長2cmのチビだけど、人が、いや悪魔が好くてね、困っている友達の願いを何回も叶えてくれた。女の子を美人にしたし、刑事に嘘を見抜く力を与えた。科学狂の運ちゃんに空を飛ばせたこともある。でもなぜか皆幸せにならないんだ…。著者の友人ジョージが語る奇想天外なエピソード18編。
1956年2月、ふたりの青年はペンシルヴァニア大学のキャンパスで出会った。刑事弁護士を目指すジェシーと、ジャーナリスト志望のマイク。彼らは野望に燃えていた。そして、それを実らせる術を心得てもいた。戦争と暗殺という病魔に蝕まれつつあったアメリカ。ふたりはそこで、ユダヤ社会、マフィア、政界と、あらゆる人脈を利用したー。パワーエリートの世界を活写する問題作。
次々と秘策を繰り出し、法廷を沸かせながら連勝を記録するジェシー。一方マイクはジャーナリストとしての手腕を高く評価され、ロバート・ケネディに秋波を送られるまでになる。だが彼は歴史的スクープをものした後、父の死を受けてアイルランドへと移り住む。そして現代ー。法曹界の仇敵に弾劾されたジェシーは倒産詐欺事件の被告となり、自らを弁護する戦いの舞台に立った…。
かつて愛したマリイカが映画デビューする。報道カメラマン・ボロは、愛を確認するため、ブガッティを飛ばした。だが、女は愛を躊躇い、再会を祝すライカを贈るだけだった…。偶然撮ったライカに重大機密が刻印されていた。ボロのフィルムを奪うため、ナチはマリイカを軟禁。ボロは巧妙な作戦でマリイカを救出し、パリ行き列車でドイツ国境突破を謀る。軍用機で追うナチ。超大型冒険小説。
退屈な日々を過ごしていた高2の春休みのある日、大西多聞は姉の千鶴子が通っている大学のアーチェリーの射場で的を射る一人の青年・城戸茂朝の姿に一目惚れしてしまう。多聞は彼にもう一度会いたいがために同じ大学へ進学してアーチェリー部に入部する。だが、その彼の意中の人は実は千鶴子だった-。大幅加筆で遂に登場。
かつて殺人があった廃墟の塔で再び殺人が。発見者は高校生・烏兎、獅子丸、祐今。死体はその事件の犯人と目され、逃亡していた祐今の父親だった。現場には、塔にむかう雪上の足跡ひとつ。そして三たび殺人は起こった。繰り返される、犯人の足跡がない密室殺人の真相は。麻耶雄嵩、正面から雪の密室に挑戦。
ハックは「アダム」、トムは「蛇」か。自由を求めてミシシッピを下るハックとジムー行く手を阻む「蛇」(トム)。ハックの冒険に「神話」世界を浮かび上がらせる作品論。
「私は怖れていたのだ。私などが絶対に踏み込んでは行けない場所を頑なに守っている生徒という他人が怖かったのだ」敗戦の色濃くなった昭和20年の初め、農村に学童疎開した34名の少年達の不安と飢えの日。最もおとなしいはずの生徒の脱走の波紋。没後見つかった引率教師の当時の日記に綴られた激しく揺れる文字。少年らの裡に生まれる孤独を見据えて描く鮮烈な秀作。