1997年8月発売
季節外れの大雪に見舞われた盛岡で、夜間、7歳の少女がひき逃げに遭った。はねられたのは、喫茶店「ドールズ」の経営者である月岡真司の娘・怜。彼女は言葉を失い、一方で“人形”に異様な関心を示しだす。喫煙をはじめとする怜の信じがたい奇矯な行動。さらに医学の常識をこえた不可解な症状が彼女の肉体を襲う。少女の心の闇に何がひそんでいるのか。
幼い頃に聴覚を失って以来、孤独に生きてきた青年画家・晃次。彼をひたむきに愛する女優の卵・紘子は、手話を必死に習って、彼が重く閉ざしていた心の扉を開けようとするのだが…。言葉をこえた、やさしくせつないラブストーリーとして大きな感動を呼び、大ヒットを記録したドラマの完全ノベライズです。巻末に、ドラマができあがるまでの様々な出来事を著者が日記でしるした「MAKING DIARY」、晃次と紘子の使った手話をイラストでわかりやすく図解した「手話レッスン」を同時収録しました。
唐の高祖李淵は天下統一後、息子たちの争いに心を痛めるが、次男の李世民が権力を掌握、即位して太宗となる。太宗は「貞観の治」を行い大唐帝国繁栄の礎を築く。女帝武則天、玄宗、楊貴妃。安禄山など華麗な登場人物に彩られて歴史絵巻はついにクライマックスへ。
強国晋を中心に大小いくつもの国が乱立した古代中国春秋期。気儖な君公に奸佞驕慢な高官たちが群れ従う斉の政情下、ただ一人晏弱のみは廟中にあっては毅然として礼を実践し、戦下においては稀代の智謀を揮った。緊迫する国際関係、宿敵晋との激突、血ぬられた政変…。度重なる苦境に晏弱はどう対処するのか。斉の存亡の危機を救った晏子父子の波瀾の生涯を描く歴史巨編、待望の文庫化。
戦災孤児だった昭二は、苦学生から花形コピーライターとなり、管理職から窓際に退いて定年を迎えた。昭二の胸に去来したのは、高度成長期に衝撃的な遺書を残して自殺したコマーシャル界の鬼才といわれた男のことだった。激動する時代を夢中で生き抜いた男にとって、仕事とは家族とは真の幸福とは何だったのか。第二の人生にも幸福の選択はあるのだろうか。
初めて独りで寝た部屋の闇、父親に連れられてサーカスを見に行った記憶、体温計を噛んでしまい死ぬのではないかと怯えたこと、母親にうちの子ではないと叱かられた悲しみ、犬をけしかけられた恐怖、友だちとのケンカとかけひき、給食を捨てたこと、兄弟ゲンカ…。少年の日のさまざまな光と影を描く47の小品。
しゃべりのプロだろ、教えてよ-あがり症が災いして仕事も覚束なくなった従弟の良や、気まぐれで口下手なために失恋ばかりしている美女の五月から頼られて、話し方教室を開くハメになった若い落語家の三つ葉。教室には苛めにあってる小学生や赤面症の野球解説者まで通ってきて…。嘘がつけない人たちの胸キュン恋愛小説。
けちな浮気調査で糊口をしのいでいる私立探偵ジャック・フリッポのもとに保険金詐欺の調査の仕事が舞い込んだ。テキサスの田舎町で不審な溺死を遂げた男に、五十万ドルもの生命保険がかけられていたというのだ。受取人は、いかがわしい酒場の経営者エクルズだった。左前になった店を立て直すために、喉から手が出るほど保険金が欲しい様子。プンプン臭う事件を追うジャックに、曲者や俗物たちがからんで、てんやわんやの騒ぎに…。
引退し、今や伝説となった老練の情報部員スマイリーと、新人研修所チーフ、ネッドが明かす、英国情報部の知られざる闘いの年代記ー謀報活動の最前線ベルリンから、忽然と姿を消した気鋭のスパイ。クメール・ルージュに連れ去られた最愛の娘を求めさすらう情報部の協力者。それは、陰謀と紛争に身を捧げてきた者たちの悲哀と感動に満ちた人生の物語でもあった。巨匠がオールスターキャストで贈る、スマイリー最後の挨拶。
ハリー・コーベットは、マンハッタン医療センターに勤める医師。翌日、脳動脈瘤の手術を受ける予定の妻エヴィの見舞いにいき、妻から頼まれた買物をしに外出して戻ってくると、妻が危篤状態におちいっていた。手当のかいもなく妻は死亡する。そのとき同僚の心臓専門医シドニスが、病室から最後に出てきたハリーがエヴィを殺したのだと騒ぎだす。調べてみるとエヴィの点滴に、脳動脈瘤に致命的な昇圧剤がもられていた…。
ハリーの妻エヴィと医師シドニスはずっと浮気をしていたのだ。別れ話をもちだされたハリーが妻と別れたくなくて、妻を殺したのだとシドニスは主張する。妻が浮気をしていた事実さえ知らなかったにもかかわらず、ハリーは第一容疑者にされてしまった。真犯人を探しだそうと独自の調査を開始したハリーはやがて、病院内で暗躍している恐るべき組織の陰謀の渦中に…巨匠ロビン・クックにつづく、ベストセラー作家の話題作。
もう、刑事には戻れない。酒に溺れ、仕事も家庭も失った元警部補ロレインは、酒を断つことを決意し、探偵事務所を開いた。だが経営は苦しく、生活もままならぬところへ大物の依頼が舞い込んだ。一年ほど前、ニューオーリンズで行方をくらませてしまった、往年の名女優の娘で大学生のアンナ・ルイーズを探しだしてくれというのだ。ロレインはアンナ・ルイーズの身辺を探るうち、やがて娘の家族の驚くべき秘密を知るが…。
必死に調査を続けるロレインは、やがてアンナ・ルイーズの母親が麻薬中毒であるとの情報を得る。また、父親は新事業の計画を進めており、資金繰りに困っていたらしい。娘は誘拐されたのか、それとも家族の秘密に関わる何者かに殺されたのか?新たな手がかりを求め、ロレインはニューオーリンズへ飛ぶ…酒への欲求に苦しみ、自分自身と闘いながら事件を追う女探偵。
教師の特権の夏休みを返上して参加したサマースクールは、うんざりすることばかり。猛暑の授業に生徒はやる気なし。ただ一人、向学心に燃える移民の生徒エイプリルだけが救いだ。だがある日、その彼女が失踪してしまった。さらに、同僚の黒人女性教師が夜ごとの脅迫電話に悩んでいると打ち明けてきた。二人の身を案じ、真相を探りはじめたわたしに、謎の脅迫状が。
人類が拡大を目指し大宇宙に翔び立っていった「地球離脱」から数千年。地球に残った人々は科学を捨て、半ば無気力に暮らしていた。だが、太陽と地球のあいだに「暗黒星雲」が忍びよってきたことで、事態は一変する。星雲が太陽を遮り、すでに大気の薄くなった地球から、今度は光までもが失われようとしているのだ。このままでは大氷河期が訪れ、人類は滅亡してしまう。そんなある日、「滑る石の平原」で異変が起こった。何千年ものあいだ平原を滑りつづけてきた32個の石が静止し、完全な円形に並んだのだ。これは人類破滅の予兆なのか?奔放なイマジネーションで終焉を迎えつつある超未来の人類の姿を描き、ウィリアム・ギブスン、ノーマン・スピンラッドなど英米のSFウルサ方を唸らせた英国SF作家協会賞受賞作。
白昼のロンドンを襲ったIRAの爆弾テロが、歴史さえ揺るがしかねない陰謀を浮かび上がらせた。爆破現場から偶然に発見された書類から、某国による要人暗殺計画が進行中であることが判明したのだ。書類によれば、暗殺の実行にあたるのは旧東ドイツの「シュタージ」。恐るべき計画力と実行力を持ちながら、いまや壊滅したと信じられていた秘密情報組織だ。しかも暗殺の実行者は人間ではなく、標的をコンピューター制御で認識する自動狙撃装置だという。となれば、詳細な情報がなければ、対策さえ立てられない。だが、この暗殺を計画しているのがどの国なのか、いったい誰が標的なのか、それさえもわからないのだ。唯一の手がかりは、シュタージの本拠地が北朝鮮にあるという情報のみ。かくして英国情報部MI5は、暗殺計画を阻止すべく、元特殊部隊兵からなる傭兵チームを北朝鮮に送り込むが。