1998年10月発売
貧困武士の盗みの手から「いのちのタネ小豆」を守って斬殺された少年。藩の名誉のために犯人探索を続ける母親を斬らせた重臣たち-。強いて長男を切腹させ、介錯を次男に命じて、家門の繁栄をはかる非情の父親-。出世のために非道の藩命を疑いもせず強行して百姓一揆を招いた侍-。餓死する村人を守るために一揆の先頭に立ち獄門になった男の首を盗み出し、その顔を石地蔵に刻む若き唐津焼き陶工の怨念-。お上の「涙なきオキテ」と「愚かしき思想・シキタリ」がつくり出す地獄の世界をえぐる感動の名作短篇集。
大阪南署のマル暴刑事・高倉は、昇進試験に合格したが、研修のため交番勤務を命じられた。だが、一年が過ぎても南署への復帰はかなわない。無聊をかこつ日々、交番の同僚が殺害された。事件の背後には高倉の宿敵ヤクザの影がちらつく。犯罪組織に立ち向かう一匹狼高倉。忘れかけていたデカの熱い血が滾る。
謎の美女ドラゴミラが果たそうとする使命とは何か。可憐な少女アニッタの愛の行方は。19世紀半ば、絢爛たるポーランド貴族の日常と小ロシアの農民の生活を背景に、スラヴ人の土着の魂を描く、光と闇、愛と裏切りの物語。これはマゾヒズムとは別なもう一人のマゾッホが描く、恐るべき異端信仰の世界。この宗教殺人の狂気から、誰も目をそらすことはできない。
肉親にも見捨てられた、片目と手足の ないサリドマイド児が、義父母と共に、 人間としての自由をかちとってゆく 愛と苦闘の過程を描いたドキュメント。 人間の愛と尊厳を謳い上げる。
1937年7月、北京郊外で軍事衝突が発生。戦火はたちまちに広がり、日中両国は全面的な戦争に突入した。帝国海軍航空隊の麻生哲郎は勇んで中国へと向かい、アメリカ人飛行士デニス・ワイルドは中国義勇航空隊の一員として出撃する。上海、南京、漢口、重慶。長江上空に展開する戦闘機乗りたちの熱き戦い。やがてふたりは互いを、名前を持った敵として意識するようになった…。中国の大空を翔けた男たちの雄姿を見事に謳いあげた航空冒険小説。
「大戦」後、過去の歴史がほとんど失われてしまった遙かな未来、人々は「シリンダー」と呼ばれる巨大なビルディングの内側の水平な床や外側の壁で暮らしていた。上下にどこまでも続く外側の垂直世界では、いくつかの軍事部族が活動している。部族同士で略奪や戦争をして金儲けをするのだ。そうした軍事部族に戦士の飾りや軍用アイコンを提供する意匠師アクセクターの波瀾に満ちた冒険をいきいきと描きだす活題の長篇SF。
ベルファストの郊外で、自動車に轢かれた男の死体が発見された。その死体の両手首には奇妙な穴があけられ、コートのポケットには不可解な言葉が記された新聞広告の切れ端が入っていた。北アイルランド警察のクロス警部と女性刑事ウェスタビーが捜査を開始するが、その死体が冷凍されて路上に置かれていたことが判明、やがて特別保安部も介入してきた。そしてついに第二、第三の殺人が…大型新人が放つ壮絶なサスペンス。
懸命の捜査でクロスとウェスタビーは、被害者に一つの法則が当てはまることを発見した。さらに殺人の前に、新聞広告に旧約聖書の詩篇の一節が載せられていたことも突き止めた。そして、一連の事件が北アイルランド紛争と密接に関わっていることも探り出し、二人は犯人を追いつめていくが…思いもよらぬ展開と、やがて訪れる懸愕のクライマックス。エスピオナージュとサイコ・サスペンスを見事に融合させた空前の大作。
猛スピードでの真夜中のドライヴ中、少年を轢き殺してしまった弁護士のわたし。しかし逮捕されたのはまったく別の男だった!生活を守るためとはいえ、自首に踏みきれないわたしは苦悩する。やがて良心の呵責に耐えきれなくなったとき、わたしがとった行動とは?崩壊していく倫理と、罪をおかした男の苦渋にみちた贖罪の日々を描く、現代人必読の問題作。
大正三年の夏、誠吾は旅芸人の食客だった父につれられ東北の小さな町、岩井へやって来た。父を失ってからは町の俥屋「徳茂」で人力車をひきながら、たったひとりの妹と手に手をとって生きてきた。芝居小屋の脇に聳える相生の槇の巨木が、いつもふたりを見守るように梢を揺らしている…。遠くに軍靴の足音が聞こえはじめた昭和初年。平穏だったこの町にも、物騒な事件の波が押し寄せて来た…。素朴な日々の暮らしに息ずく温かい心の交歓を、郷愁豊かに綴る長篇小説。
日本企業に死刑を宣告する海外の格付け社会。自主廃業した証券会社を辞めた元社員が格付け見直しに賭ける。これからの日本企業の未来を照らし出す様々な(可能性)の数々。
ヒマラヤの秘峰で発見された原人の頭蓋骨。旧約聖書の人物にちなんで「エサウ」と名づけられたその化石は、ヒトの起源を根底からくつがえすものだった。世界的登山家ジャック・ファーニスと古人類学者ステラ・スウィフトの一行は、エサウの正体を求め、人類の過去を探る旅に出かける。しかし、彼らがヒマラヤで見つけたものは、人類の未来を脅やかす恐ろしい秘密だった-。ヒマラヤの秘境で彼らは、人類の恐るべき運命を知った。神の視点で描かれた傑作冒険ミステリー。