1998年12月発売
感覚的、幻想的イメージ、風刺と暗喩の交錯する詩的文体。時間と空間を否定した特異の作品世界を築き、「桃の園」に描かれる記憶の不明をはじめ、作品の底に澱のように淀む家族の影は現実の不安を描出する。表題作「ピクニック」のほか、「競争者」「窓」「木の箱」「月」「既視の街」「くずれる水」「豚」「鎮静削」「家族アルバム」「あかるい部屋のなかで」の十二篇を収める短篇集。
パナマ運河開削に心血を注いだ、たった一人の日本人・青山士。荒川放水路、信濃川大河津分水自在堰など、数々の河川工事を指揮して暴れ川を治め、日本の土木史に偉大な足跡を残した技師・青山士の進取と苦闘の青春。
私、負けたくなかった。この街、あのビルに-街もビルも人間が作ったものなのに、そこに住む人間を変えてしまうの。全ての女性たちに、社会の矛盾の中でもがき苦しむ子供たちに、彼らとともに変革の時代を生きようと志す男性たちにも…。深い絶望を超えた光を投げかけた干刈あがたの小説世界。
謎の重武装軍団が日本海沿岸の原発を狙う。機動隊は殱滅され、住民は一斉に避難。折しも日本海では米原潜の頭上でロシア船が爆発炎上。航行不能となった原潜を挾み「北」と米日韓はまさに一触即発。その時東京で、米国大使館と警視庁に同時爆破テロ。さらに衆参両院に仕掛けられる青酸爆弾…。誰が、一体何のために!?安逸を貪る「虚飾の花・日本」を襲う未曾有の危機。各メディア騒然の問題作。
男にとって理想的な男と女の関係とは?エリート・ビジネスマン仁科哲郎が披露する華麗な恋愛テクニック。パリ、ロス、ハワイを舞台に売れっ子モデル、スチュワーデスと大胆なシーンを展開。
クリスマスイブに突然、「サンタクロース」と名のる人物から夏子のもとに届いた美しい緑色の万年筆。大学受験を控えた夏子が、その万年筆で「サンタクロース」に宛てた22通の手紙によってヴィヴィッドに描かれる多感な夏子の青春。
密室から飛び出した死体。究極の謎解きミステリィ。 コンピュータに残されたメッセージに挑む犀川助教授とお嬢様学生・萌絵。 孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季(まがたしき)。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平(さいかわそうへい)と女子学生・西之園萌絵(にしのそのもえ)が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。 第1章 白い面会 第2章 蒼い再訪 第3章 赤い魔法 第4章 褐色の過去 第5章 灰色の境界
電話はマリーノからだった。昨晩、農場で火災があり、何万ドルもする馬が二十頭焼け死んだという。バスルームで発見された身元不明の死体の顔には、無数の傷が。自殺か、事故か、放火か?それはスカーペッタを襲う身も凍る惨劇の前触れだった。事件の背後にちらつく脱走犯キャリーの影。検屍官シリーズ最大の危機。
バーニイが経営する「バーネガット書店」でのある日。カウンターのバーニイが目をあげるとハンフリー・ボガートに関する本を差しだしている絶世の美女が立っていた。一目惚れしたバーニイとその美女イローナは、ボガートの話題で意気投合し、その夜から十五夜連続でボガート主演映画を上映する映画館に通うことになった。ポップコーンを分かちあいスクリーンに魅せられるふたり-でも、もちろんバーニイは泥棒稼業を忘れてやいません。キャンドルマスという変な名前の男に依頼されある高級アパートメントに書類鞄を盗みに忍びこみますが…。
第二次大戦中、毛沢東とチャーチルの間で、香港租借期限の百年延長を記した密約書が調印されようとしていた。がだ書類をのせた飛行機が墜落、密約書は行方不明に。時は流れ1993年、密約書の存在を知ったマフィアは、利益を守るために香港返還を阻止せんと書類を探し始める。その企てを阻むため英情報機関の長ファーガスンは元テロリストのショーン・ディロンとともに、密約書が眠るというスコットランドの城にのりこんだ。
不世出の実業家、根津嘉一郎。県会議員時代に同郷甲州政財界の重鎮、若尾逸平から示唆された言葉「株をやるならば、これからは『乗りもの』か『明かり』だ」が彼の関心を実業界へと向けさせた。倒産寸前の東武鉄道再建に乗り出し、強気の経営哲学のもと消極派を押し切って成功に導く。数多くの企業に関わりながら一族経営を排し、利益の社会還元を忘れなかった嘉一郎の波乱の生涯を辿る。書下し評伝小説。
1942年8月15日、日米両国はついに交戦状態に突入した。開戦と同時に、フィリピンのマッカーサーは台湾への戦略爆撃を敢行する。しかし、日本軍の反撃で甚大なる被害を受ける。逆に日本軍は、空母航空隊による比島南部一帯への連続空襲に成功。マッカーサーをコレヒドール島に追いつめた…。開戦から3カ月、キンメル司令長官率いる米太平洋艦隊と連合艦隊の決戦の時が刻一刻と近づいていた。独立作戦行動を許可された猛将ハルゼーが、空母部隊を率いて南洋諸島に布陣した日本軍部隊を引っかき回す作戦に出た。迎え撃つ海軍航空隊と戦火を交えている、その頃、キンメルは小笠原諸島攻略を最優先する決断を下した。
奇しくも開戦一周年を迎えた昭和17年12月8日、ビアク島をめぐる戦いで戦死した吉村真理子中将の葬儀がしめやかに行なわれていた。一方、母艦兵力に甚大なダメージを受けた米太平洋艦隊ではあったが、正規空母エセックス級の就役で息を吹き返しつつあった。翌18年夏、アメリカは“超空の要塞”B-29の完成と共にマリアナ諸島を日本本土空爆の出撃基地にすべく準備を開始する。これに対し日本は、基地化を断固阻止する作戦を企図した。浅井めぐみ中将を新長官に迎えた第一機動艦隊はグアム島を目指し、攻略部隊をふくむ大船団で、沖縄名護湾を出撃していく。日本の新鋭空母群を迎え撃つは、猛将ハルゼー中将率いる高速機動部隊。日米両機動部隊の激突は、どちらに凱歌が上がるのか。