1998年6月発売
加賀藩の実権を掌握した黒羽織党の銭屋へのいわれなき報復はますますその悪辣さを増す。碇泊中の千石船への細工、女中頭への襲撃、銭屋の名を騙った金沢城下への付け火。さらに十五万両という莫大な御用金の供出を迫られる。絶体絶命、瀕死の銭屋が打って出た大博打とは?幕末の不穏な政情下、鴻池、住友、三井をも凌駕した海商、銭屋五兵衛の苦難の生涯。痛恨血涙の完結編。
盲目の元音響技師ハーレックは鋭い聴覚を駆使して、身内が巻き込まれた誘拐事件を解決に導き、一躍英雄となった。事件を通じて知り合った警官デブラと結婚し、すべて順調に思われたが、悪い知らせが届く。捜査に携わった元巡査部長ジャノウスキーが射殺されたのだ。しかもそれは凄惨な復讐劇の幕開けに過ぎなかった…。『音の手がかり』『音に向かって撃て』に続くシリーズ第3弾。
狩人たちの森・満員の通勤電車の中でひそかに触れあう父と子。-「お前の唇が私の先端に被さりくびりまで包むと、そのまま下りる。だが、この漣のように拡がる快感は先端からか、それとも唇からのものなのか。それにまた、感じているのは私なのか、それともお前なのか」-同性愛、少年愛、父子愛、自己愛が、合せ鏡の無限の中で試される猥褻な聖画像。作者匿名。
北海道、旭川。浜野清美は母子家庭に育った。いじめにあい、大人への不信も募るなか、友達の事故死を目撃したのを黙っていたことや、母の愛人から弄ばれたことなどから清美は暗く無口な子となってゆく。だが、出生の秘密とともに知った信仰心篤い叔母の自分に対する深い愛情、そして一人の少年との出会いにより、いつしか心の中に明るい光がともってゆく。…不遇な少女が、信仰に目覚め、23歳で洗礼を受けるまでの心の軌跡を綴った、三浦文学の名作。
猫のゾルバが誓った三つの約束、でもその約束をまもるには、大いなる知恵とまわりのみんなの協力が必要だった…。ヨーロッパで大ベストセラーとなった愛と感動の物語。
コルトオートマチック1911A1、呪われた拳銃。それは新たな血を求め、使い手を探していた。平凡な高校生・朝倉優が偶然それを手に入れたとき、血と硝煙漂う運命の幕が切って落とされた。銃の魔性は、次第に優を蝕んでいく。突発的な狂気にとりつかれた優は、とうとう警官を射殺してしまう。歯止めを失った狂暴性はさらに加速する。銃に導かれるかのように、優はひとり、またひとり撃ち殺していく。狂気に追いつめられた優が最後にとった行動とは!?話題のガンアクションAVGが小説に登場。
南北戦争が始まる頃、ヨクナパトーファ郡ジェファソンに飄然と現れた得体の知れない男トマス・サトペンは、インディアンから百平方マイルの土地を手に入れ、大いなる家系を創始するべく、町の商人コールドフィールドの娘と結婚する。サトペン家の興隆と崩壊を物語りつつ、アメリカ南部の過去と現在の宿命的な交わりを描いた迫力ある長篇。
石坂泰三ー第一生命、東芝社長を歴任、高度成長期に長年、経団連会長を務め、“日本の陰の総理”“財界総理”と謳われた、気骨ある財界人の生涯を描いた長篇小説。
東京郊外のニュータウンに突如発生した奇病は、日本脳炎と診断された。撲滅されたはずの伝染病が今頃なぜ?感染防止と原因究明に奔走する市の保健センター職員たちを悩ます硬直した行政システム、露呈する現代生活の脆さ。その間も、ウイルスは町を蝕み続ける。世紀末の危機管理を問うパニック小説の傑作。
坂本龍馬が生きていた!!慶応三年の近江屋襲撃を間一髪逃れた坂本龍馬は、これも難を逃れて生き残った大久保利通が牛耳る明治政府から距離を置き野に下りながらも、日本の行く末を見据えていた。明治八年、朝鮮半島を舞台に、韓国の宗主国・清と、開国を迫る日本との関係が急速に悪化、日清戦争は避けられない状況に。そうしたなか、日本政府のあまりの横暴ぶりに龍馬は一計を案じ、盟友高杉晋作を朝鮮半島に送り込むが…明治維新を、坂本龍馬、高杉晋作等の英雄が生きていたら日本の歴史はどう変わったか、を描く壮大な歴史シミュレーション小説第一弾。
1997年に小説雑誌等に発表された多くの短篇ミステリーのなかから、日本推理作家協会が15篇の傑作を厳選した決定版のアンソロジーです。推理小説界とSF界の1997年の概説、推理小説関係の各賞歴代受賞リストなど、資料編も充実。