1998年8月発売
東アジアの利権をめぐり列強の思惑が錯綜する1901年ロンドン。日英同盟を阻止すべく、日本側全権公使を狙う刺客が放たれた。一瞬にして刃で喉を掻き切る凄腕。もと京劇の女形、コード名「朱雀」とスコットランド・ヤードの死闘が始まる。時代の転換期に蠢く郡像を活写した巨編。
国立大学病院の外科東病棟に配属された新人看護婦高木亜沙子は、患者にとってのよりよい看護を心がけ情熱をもって患者に接するが、小脳腫瘍の10歳の少年の死、医師に不信を抱き一切の治療を拒否した41歳の加東仁の死などに直面し、自分と看護の無力さに絶望する…。やがて、自分を必要とする患者の姿や先輩ナースに励まされ、人間の尊い死にかかわる看護職の光栄を思い、仕事を続けようと決意する。終末看護をメインテーマに、新人看護婦が成長していく様子をドキュメントタッチで描く医療小説。
なぜ自分にこの親、この兄弟姉妹なのか。いつもやたらとベタベタしているのに、実はバラバラだったりする。「家族」って、よくよく考えてみれば、ヘンなものだと思いませんか?この本には、なかでもきわめつけのヘンな家族が登場します。深夜、息子がいきなり彼女の死体を連れて帰ってきたり、夫婦の寝室に「ママ」がいたり…。これに比べれば、お宅はまだまだ大丈夫でしょう。
夫の態度が急に変わったのは浮気、それとも?美人女優とキスした夢から喜んで目覚めると…!終電間際の駅で連続して死傷事件が起きた理由は?添加物に汚染されていない究極の自然食品を探したら…。ドキドキするような艶っぽい話から、ゾッとするような日常の恐怖まで、それぞれ鮮やかな手品のようにトリックを効かせたショート・ショート集。一日一話で一ヵ月を愉しむ全31篇。
「汚くしてるけどおいでよ、おいでよ」というので、およそ十年ぶりに会ったこの人は、すっかり「おばさん」の主婦になっていた。でも、家族が構成する「家庭」という空間の、言わば隙間みたいな場所にこの人はいて、そのままで、しっくりとこの人なのだった…。芥川賞を受賞した表題作をはじめ、木漏れ日にも似たタッチで「日常」の「深遠」へと誘う、おとなのための四つの物語ー。
当世の流行に逆らい、地味な鳶凧作りにこだわり続ける貧乏凧師、定吉。しかし、女房のおみねはまるで糸の切れた凧のように商売敵の男のもとへ…。定吉は、角凧作りを得意とする花形凧師銀次に、おみねを賭けた喧嘩凧を挑む。喧嘩凧では絶対不利の鳶凧を手にー。凧師をはじめ、化粧師、人形師など、江戸の生活を彩ったさまざまな職人たちの人間模様を丹念に織り上げた傑作短編集。
タフでクールな女コニーと、まじめで理性的な男ハリーは、カリフォルニア警察の特別プロジェクトに携わる警官。ある日彼らが昼食をとっていた店で、突然ひとりの男が銃を乱射しはじめた。ふたりは協力して犯人を射殺、事件は終わったかのように見えた。しかし、それは悪夢の始まりだった。同じ頃、その周辺では人間離れした巨体の不気味な怪物が出没していた。その正体とは…。
おまえを夜明けまでに殺してやる、チクタク、チクタク…。そう脅迫してくるあの恐ろしい怪物は、一体どこから来たんだろう?ハリーとコニー、それから元広告代理店勤務のアル中男と、ぽんこつ車で暮らすホームレスの母子と愛らしい飼い犬。彼らはどうやってあいつの正体を突き止めるのか。夜明けまではあと数時間ー。パワー全開で突っ走る、第一級のエンタテインメント大作。
ロサンゼルス都心部に完成間近の25階建ての「グリッドアイアン」は、エレベーター運行から空調・照明・掃除・警備、尿検査による従業員の健康管理まで、全てをコンピュータで管理するインテリジェント・ビル。だが、その中で技師や警備員の連続変死事件が発生する。しまいには、建築家を始め、建設関係者全員が内部に閉じ込められて…。ビルが人間を襲うパニック・ホラー決定版。
ノルマンディ上陸作戦の最激戦地オハマ・ビーチー。連合軍は、ドイツ軍の激しい抵抗に遭い、甚大な損害を被った。レインジャー部隊のミラー大尉は、部隊の生き残りと共にトーチカを攻撃し、敵陣地を奪取するが、その後、彼は野外作戦司令部に呼び出されて、上官から極秘命令を受ける。それは、敵地の奥深くに降下した空挺部隊の兵士ライアンを捜し出し救出することだった…。
クリスマスを目前にしたニューヨークの片隅で起きた殺人事件。被害者アマンダはフリーでデータ調査の仕事をする若い独身女性だった。巡査部長キャシー・マロリーは、細工された顧客名簿から容疑者は高級コンドミニアムの住人と目星をつけた。判事、大企業主、花形キャスター等、警察も煙たがる人々の後ろ暗い過去を容赦なく追いつめるマロリー。一方相棒のチャールズは、詳細なデータとアマンダが書き残した私的小説を基に彼女の三次元妄想を生みだし、死人との対話から真相に迫るという怪異な手段を試みる。ストリート・チルドレンあがりの泥棒魂を持つ孤独で凶暴な美女マロリーが都会の暗部を切り裂く異色ミステリー『マロリーの神託』に続く全米ベストセラーシリーズ第2弾。捜査の過程で露呈する人間の心の怪奇と狂気、そして明かされるマロリー衝撃の過去。
大人から子供まで、多くの人々を熱狂させる未知の生物!!純文学の世界をはじめ、スラップスティック・コメディ、批評エッセイなど、あらゆる分野に登場するとびきりの『怪獣』たちを集大成した、空前絶後の大アンソロジー。寓話、メルヘン、SF、ホラー…破壊の恐怖をひき起こしながらも、どこか懐かしく、愛らしい異形の者たち。
男女はいかにして切り裂かれ、「雌雄同体の一個の生物の亡骸」となって密室に残されたのか?一本の「懐中電灯」が、完全犯罪を崩壊させる陥穽となったのはなぜか?選び抜かれた八つの作品が、本格ミステリの形式に鋭角の亀裂を走らせる!本格推理の嫡子、法月綸太郎の新世紀を予感させる、傑作第二短編集。
時は維新の騒擾未だ収まらぬ明詞七年、帝都東京で不可解なる事件が発生した。雪に囲まれた武家屋敷で、留学帰りの青年軍人が刺し殺されたのだ。その友人で公家の三男坊、九条惟親は行きがかり上、事件の解決を依頼された。調査を開始する九条のまえに、謎はより深淵なる様相を明らかにする。犯行は如何にしてなされたのか?そして、秘密裏に行われた奇妙なる宗教儀礼は何を意味するのか?困惑する九条は、変わり者の友人、朱芳慶尚に助言を求めるが…。
かつて「悪魔」と恐れられた、街金融の若き経営者・野田秋人のまわりで、関係者が惨殺されていく。「金」の世界は、人を死に追いやることすらある修羅場だ。怨みが渦巻き、一瞬の隙が己を破滅に導く。常軌を逸した猟奇殺人は、果たして野田への復讐なのか?街金融の現場を生きた著者が渾身の筆致で描く問題作。第7回メフィスト賞受賞作。
探偵小説の愛好家グループの中心人物・伍黄零無が奇妙な言葉を残し密室から消えた。メンバーの仁行寺馬美が書くモデル小説通り、仲間達もまた密室で殺される。死者を愚弄するような装飾と暗号。目眩く推理合戦。すべてを裏切って全宇宙を揺るがす真相。新本格の原点『匣の中の失楽』への、罠に満ちたオマージュ。