1998年発売
父のウェントモア将軍は出征中、母は病床にあり、ノヴェラは愛馬と館で孤独な日々を送っていた。ある日、何者かに追われて大けがを負った男が駆けこんでくる。ノヴェラは、男を秘密の通路にかくまい勇敢にも追っ手を帰してしまう。負傷した男を看病するうち、ノヴェラは男から意外な依頼をされた。彼の代理としてロンドンへ行き陸軍大臣に伝言を届けてほしい、と。祖国のための極秘任務らしいと察したノヴェラは、申し出を承諾すると元の家庭教師と共に館をとび出した。
銀行員の竹永伸一が絞殺された。被害者の親友、村田昭吾は容疑者の笹岡に殺人の予告を受け警察に保護を求めてきた。だが笹岡には完璧なアリバイがあった。明らかになる笹岡和也の殺人の動機!アリバイを証明した人間の失踪!そして刑事達の前に現れた新たなる容疑者!事件は謎のまま他県で起きたレイプ殺人事件に導かれていく。『最後のターゲットはお前だ!』完璧な警察の警護に守られる標的に、復讐の炎に燃える犯人は敢えて戦いを挑んで来た…。
ゆすりたかりに押し込み、殺しで、獄門となるはずだった囚人・音次。が、市中引廻しの最中に、なぜか縄が解けて脱走する。牢屋同心は責任をとって切腹、その息子・角之助は、父の仇を討つため、岡っ引の子分となって音次の行方を探す。次々と裏切り者を始末する音次と追いつめる角之助、二人をめぐる女たち。悪の巣と化した邪淫寺を舞台に、江戸の闇を描くピカレスク時代長編。
ウォール街の大手法律事務所。30万ドルを超える年収。妻とふたりの息子。ヤッピー弁護士のベンは、それでも満たされぬ思いを抱いていた。そして妻の不貞に気づき、激情に駆られて凶行に及んだあとで、ベンはそれまでの自分をも葬ることを決意した…。エリートから逃亡者へ、ニューイングランドからモンタナへ。数奇な運命と皮肉な結末をスリリングに描き、全米を震撼させた問題作。
上流社会に育ったアッシュブルック家の令嬢ヴァレリーは、恋愛と結婚を切り離し、学生時代の恋人ニックと別れた。シビルは、子供の頃から羨望の眼差しでヴァレリーを見ていたが、ある事件で大学を除籍になり、彼女への復讐からニックと結婚する。しかし野心に燃える彼女は、ニックと息子を捨て、50も年上の実業家に近づき再婚。今、夫の死で、シビルは遺産を相続し笑いが止まらない…。
人を憎み利用するだけで愛を知らないシビルの目的は、ヴァレリーの全財産を奪い破滅させることだ。ヴァレリーは、銀行家の夫と別れ、最近、カールトンと再婚、自分の財産管理を夫に一任していた。その夫がヴァレリーの全財産を担保に借金をして急死。破産したヴァレリーは学生時代の恋人ニックと再会する。そして、資産家の未亡人になったシビルは、カールトンと密会していた…。
そのアメリカ人の顔は奇妙な肌に包まれていた。夜の性風俗案内を引き受けたケンジは胸騒ぎを感じながらフランクと夜の新宿を行く。新聞連載中より大反響を起こした読売文学賞受賞作。
鶴丸貫太郎課長に特命が下った。不良債権の土地をラブホテルとして活用する企画を成功させろ!男女の愛情と官能を満たすには、如何なる仕掛けが必要か?鶴丸は女たちを話題をホテルに誘い込み、己の欲望と調査の一石二鳥を果たす。だが、カネと欲望の蠢く派閥抗争に巻き込まれ、絶体絶命の窮地に…。
敏腕医師と呼ばれた波多京哉だが、大病院を飛び出したいまは片田舎で小さな診療所を営んでいる。そこにひとりの少女が運び込まれた。難病を患う、その少女の名は矢野蛍。病ゆえの繊細な美しさは人を惹き付けるものがあった。京哉の献身的な治療に、心を閉ざしていた蛍も次第にうちとけていく。だが病状は少しずつ悪化の途をたどっていた。互いに惹かれ合う京哉と蛍をよそに、周囲は無情にもふたりを引き裂こうとする。京哉は蛍を手放すか決断を迫られるのだが…。
少年時代に受けた屈辱により、南部で人間として認められるには「土地と黒人と立派な家」を持たなければならないと思い知らされたサトペンは、その野望の達成に向けて邁進する。しかし最初の妻に黒人の血が混じっていることを知って捨てた報いにより、築き上げた家庭は内部から崩壊していく。小説表現の限界に挑みながら二十世紀文学の最先端を歩み続けたフォークナーの渾身の大作。
知人の華燭の典で、二十年ぶりに再会した実業家と、夫と死別して一人けなげに生きる女性。人生の道のなかばで、生涯に一度の至純の愛にめぐり逢った二人を描き、人の幸せとは?人を愛するよろこびとは?を問う香り高い長篇小説。作品解説のほか、雅びな恋愛小説を遺した中里恒子の作家案内と自筆年譜付き。
城田家にハンガリーからの留学生がやってきた。総勢十三人と犬一匹。ただでさえ騒動続きの大家族に、あらたな波瀾が巻きおこる。異文化へのとまどい、肉親ゆえの愛憎。泣き、笑い、時に激しく衝突しながら、家族一人ひとりは、それぞれの生の新しい手がかりを得る。そして別れー。人と人の絆とはなにかを問う長篇小説。