1998年発売
次世代電子機器を飛躍的に小型軽量化するプロジェクトのデモ(評価会)当日、ロボットが暴走、死者が…究明調査を行なう若手技術者の堀川俊介は、衆人環視のなかでの密室殺人の疑いを抱く。彼の心には、昔、大地震に襲われたさい、少女を見捨てて逃げたトラウマがあった。一方、幼いころの記憶を失っている葛城翔子は、同棲相手の柳瀬昇の行動に不安と不審を感じていた。柳瀬は、堀河らが進める開発にスタッフとして参加していた…。禍々しく錯綜した人間関係を背景に、最先端技術の開発を巡り、技術者同士のプライドを賭けた凄まじい角逐が織りなす、著者渾身の書下ろし企業ミステリー。
見知らぬ国の法廷で、自由への闘いを挑むアフリカの男たちと、言葉の壁に苦戦するアメリカ人弁護士。やがて彼らは、互いの不信感を乗り越え、静かな友情を結んでいく-。奴隷制廃止にむけての歴史的転機となった事件に取材した、ヒューマン・ドラマ。
地獄はどこにある?仕立屋ジューヌと愛する妻コルブリューヌ。冥界の領主との約束は果たして守れるのか-。忘れることの恐怖を主題に、人間存在の深淵を抉りだした、現代フランス文学の鬼才による美しい愛の物語。忘却と記憶、顔と言語、無意識と欲望を根源的に考察する哲学的エッセイ「メドゥーサについての小論」を併載。
フロリダの小島で海洋生物を研究する私は、ある日、天真爛漫な若い漁師ハンナと出会い、そのとりこになった。彼女は失業の危機にある漁師たちの立場を守る活動に熱心で、意気投合した私の友人が手伝うことになる。だが数日後、友人が何者かに襲われ、敵の魔の手は私とハンナの身にまで…海洋生物学者ドク・フォードの活躍を描く、トロピカル・サスペンス。
第二次世界大戦も終局を迎えつつあった1944年、劣勢のドイツ側にとって最大の焦点は、連合軍のフランス侵攻、その時期と上陸地点の特定だった。ドイツのスパイ網は、イギリス当局の手により壊滅状態だったが、国防軍情報部を率いるカナリス提督の手元には切り札が一枚だけ残されていた。戦前からロンドンに潜伏されていた潜入工作員、キャサリンの存在だ。カナリスはただちに機密奪取の指令を飛ばす。狙いは、アメリカの情報源から得ていた有力な情報-「侵攻作戦に関わる、極秘の巨大な建築計画が発動」。この計画こそが、鍵になる!イギリス情報部もドイツの動きを察知した。元大学教授で情報工作担当のヴィカリーは、二重スパイを駆使して、正体不明のドイツ側工作員を追い求める。キャサリンが最高機密をつかむが、ヴィカリーが彼女の所在を突き止めるか。戦争の命運を賭けた謀報戦の幕が上がった…。
ついに、極秘の建築計画「マルベリー作戦」設計図の奪取に成功したキャサリンは、イギリスを脱出すべく、Uボートの待つ北海沿岸へと向かう。彼女の持つ情報がドイツ側の手に渡れば、連合軍の最高機密、ヨーロッパ侵攻作戦の上陸地点が暴露されてしまう。必死の捜査でキャサリンの存在を割り出していたヴィカリーは、脱出を阻止すべく、全力を挙げた捜査網を展開、史上最大のマンハントを開始した。だが、戦争前から六年にも渡って潜伏を続けてきたキャサリンの巧妙な行動は、容易にその尻尾をつかませない。嵐の北海に、脱出時刻は刻々と迫る…。ジャーナリスト出身の新鋭が、第二次大戦史上最大の機密、ノルマンディー上陸作戦の秘話に迫る。雄大なスケール、多彩な登場人物で描く本格冒険スパイ小説の自眉。
パリを拠点に人権保護活動を行なっているアムネスティ組織ABRIに、緊急の暗号メッセージが届く。イレブンはブルーになった。光の水。受信者はアフリカ地区担当のゼイン。「イレブンがブルーになった」とは、アフリカで情報を収集中だった親友のストリートが死んだことを意味していた。ストリートは政情の不安定なアフリカで、反政府主義者に対する拷問に手を貸した謎の医師を追っていた。ストリートは何者かの手によって暗殺されたのか?ゼインは事実を確認すべく、さらなる情報収集に着手した。だが、ストリートが愛人に宛てた手紙を入手した直後から、ゼインは何者かに命を狙われはじめる。さらに、ABRIの情報を漏洩していたとの容疑をかけられ、担当の仕事まで外されてしまう。事件調査の手段を断たれ、孤立無援となったゼインは、コンピュータ・ネットワークを駆使して陰謀の迷宮へと踏み込んでいくが…。
昭和九年浅草。沼田平助は紀州犬の散歩で、吉原の弁財天にひきずられるように入った。本堂と稲荷祠の間の路地を抜けた。右手には「触れずの銀杏」という神隠しの因縁がまつわる銀杏の古木がある。と、足元にぐったりした老人が座っている。が、どこか変だ。顔がこちらを向いているのに、同時に背中もこちらを向いている。つまり顔が裏表逆さまについているのだ。老人の手がゆらり動き、手招く。蒼白になって、参道を駆け抜けた沼田の背中に甲高い獣の遠吠えが響いた。驚愕の異界への招待。
司祭の娘シェンダは森で出会った紳士に罠にかかった愛犬を助けてもらう。彼は微笑と口づけを残し、立ち去った。その直後、父を事故で失ったシェンダは近くのアロー館にお針子として雇われる。実は、その館に致着した新しい伯爵こそあの森の中の紳士だったのだ。当時イギリスはフランスと戦争中で伯爵は、ナポレオンのスパイ探索を海軍大臣から特命として受けていた。館の客人の不審なメモを、偶然にも発見したシェンダは、伯爵に急報する。彼女の能力に驚いた伯爵は、女スパイの動向を探るため、協力を依頼した。そして、シェンダはロンドンへ旅立つ。
1999年7月のある夜ー。女子高校生の静が、ふと流れ星に祈ったとき、突然ボンデージ姿の男が空から降ってきたーそれも女王様スタイルの…。だが、フレイドと名乗るその男こそ、ノストラダムスの予言書に出てくる、世界を破滅へと導く『恐怖の大王』だったのだ!史上初!?すちゃらかギャグが炸裂する、スラプスティック・ホラーノベル。
政・官界が腐敗するメキシコで、軍部によるクーデターが成功した。一斉粛清にのりだした若手将校にとって、最大の標的は麻薬王アラマン。特殊部隊がアジトを急襲するが、アラマンは辛くも脱出、新政権を転覆すべく、アメリカとの国境でテロ工作を仕掛ける。メキシコ軍による挑発と見せかけ、米軍の軍事介入を引き出そうというのだ…。米軍女性少尉が大活躍する迫真の冒険小説。
ステラは42歳、だけど美貌も体型も若い娘に負けてない。結婚にはウンザリしたから、離婚して息子と二人暮らし。仕事も順調、でもずっと全速力で走ってきたから、疲れちゃった。だから思い切ってひとりジャマイカへ行ったの。そこで出会ったのはさわやかな地元の青年。親子ほど歳は違うけど、お互い魅かれあってそしてー。『ため息つかせて』の著者がお届けする元気のでる恋愛小説。
目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ…。危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。死にたくないー。三島の考える命とは。
全寮制の名門女子高の生徒が子宮から大量出血して死に、いたはずの胎児が消えた。同じように変死した卒業生の姉、謎の言葉「ジャック」を遺し塔から身を投げた少女-桜の園に封印されたおぞましい記憶!陰惨な檻と化した学園で女探偵『黒猫』と一年生の優子に魔手が迫る。女に棲む“闇”を妖しく描く衝撃作。