1999年3月発売
甲賀出身で比叡山の薬樹院に学んだ施薬院全宗は、師・曲直瀬道三を踏み台に豊臣政権の中枢に食い込む。秀吉の筆頭侍医となった全宗は竹中半兵衛、黒田如水、石田三成等の名だたる側近の中で異彩をはなち、天下統一、世継問題に重要な鍵を握った。今まで歴史の表面に登場したことがない、知られざる名参謀の野心と乱世を見事に描ききった話題の傑作長篇。
挑発的だが媚がなく、冷たく澄んだ眼差しのアリスはアリゾナから来た“キコク”。美少女転校生へのやっかみから、アリスは、男をとっかえひっかえ遊びまくって家出し、日本に戻ってきた淫乱女、という噂を立てられた。でも、アリスはこの学園で恋に落ちたー。恋をする者、嫉妬する者…誰もが様々にやけっぱちになる高校生たちの学園恋愛小説。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い」この一行に、大きな謎が仕組まれていたとはー。上海の街に苦沙弥先生殺害の報せが走り、猫の「吾輩」はじめ、おなじみ寒月、東風、迷亭に三毛子、さらには英国猫のホームズやワトソン、シャム猫の伯爵など、集まった人が、猫が入り乱れ、壮大な野望と謀議が渦を巻く。卓抜な模写文体とロマンで、日本文学の運命を変えた最強のミステリー。
音楽家・坂本龍一が書きとめた夢の断片。小説家・村上龍はそれをモチーフに、原稿用紙4枚という物語を30編、創り出した。モニカは小説家の創造力を刺激する、象徴としての女性。様々な物体や感覚的なものに姿を変え、物語をリードする。二人のハイパー・アーティストが交流して生まれた奇跡のコラボレーションが、甘美で危険な幻想短編集として結実した。村上龍撮影の写真も満載。
ぼくは騒音測定の仕事をしている。恋人のフミとは同棲中だけど、最近はキスも拒まれてうまくいってない。それでテレクラ嬢のマリコとよく会っている。見えない音をかたちに表す“音の地図”作りが趣味だ。そんなある日ぼくはふとした盗聴をきっかけにフミを疑い始めてしまったー。聞こえているのに聞き分けられない、愛しているのにつかまえられない。都会に潜む声と恋を追い求める長編。
浜名湖畔の料亭「花ずみ」。ある日、名女将の後を継いだ旬平から、妻の通子に奇妙な電話が入る。指示された駅で出迎えた初対面の女は、通子に言った。「私、ご主人をいただきにきました」-。取り出した離婚届には紛れもない旬平の署名。こうして、平凡な主婦に甘んじていた通子の闘いは始まった…。愛とビジネス、度胸と意地。女のすべてを描ききり、柴田錬三郎賞を受賞した快作。
陛下、金木犀の香りに包まれて、あなたに愛されたい…陸軍中尉・剣持梓は、幼い頃から繰り返し見る幻の中で、陛下への熱い思いを募らせてきた。青年将校たちの間で昭和維新が熱っぽく語られる時代、心ひかれる存在・北一輝との交流を経て、梓は静かに“叛乱”に身を投じてゆく…。史上希有な“官能的事件”ともいうべき二・二六事件の外伝、そして甘美で衝撃的な恋愛物語。
幼い息子を踏切事故で亡くしたメンリーは、娘ハナに恵まれた今も罪悪感に苛まれ続けている。童話作家である彼女は、療養と執筆を兼ねて、夫の生まれたケープ・コッドの由緒ある家で夏休みを過ごすことにした。夫の留守中、彼女は列車の轟音や、亡くなったはずの息子の声を聞く。これは現実なのか、悪夢なのか。しだいに自制心を失っていくメンリー…。息もつまる迫真のサスペンス。
バンディッツとブーマーズによるワールド・シリーズ、いよいよ開幕!ところが、練習が行なわれていた球場の地下通路でバンディッツのオーナーの他殺死体が発見される。そのこめかみは硬球の形に陥没していた。両軍の首脳陣・選手には、傲慢なオーナーに恨みを抱いていた者が多数。新聞記者マーク・バーは独自の取材を開始した…。大リーグ史上に残る名投手が描いた豪速球ミステリー。
イタリアの少年エンリーコが毎日の学校生活を書いた日記と、あのジェノヴァの少年マルコが母親を捜して遠くアンデスの麓の町まで旅する『母をたずねて三千里』など、先生の毎月のお話九話。どれも勇敢な少年と、少年を見守る優しい大人たちとの心のふれあいを描く不滅の愛の物語です。どこの国でも、いつの時代でも変わらない親子の愛や家族の絆の強さを、読みやすい新訳でお届けします。
夏休み前の終業式の日、知也の前に身長15センチの可愛い女のコが現れた。彼女の名前はエトセラ。卒業試験を受けに、「想像の国」からやって来たという。試験は、15日間で知也とエトセラとの間に深い信頼感を築き上げること。しかも、ほかの人間に絶対に見つからないように。それに合格すると、エトセラは晴れて本当の人間になれるらしい。エトセラのために友達のピムとミンティも加わって、なんとか試験を突破しようとするのだが…。
「私の愛人になれば黙っていてやろう」代議士の天野祥彰(35)にささやかれたとき、猫の手術代のために万引きした、心優しい孤児佑士(14)の運命は変わった。祥彰と養子縁組をし、“夜のオツトメ”のため家に入った佑士。ウブな少年に、それはたまらなくつらい仕事だった。なのに佑士はいつしか祥彰を愛してしまう。彼を愛すれば愛するほど、自分が“欲望のハケ口”だと思いしらされて、傷つくだけなのに…。人気政治家の少年愛人になったことで政敵に誘拐・監禁され、汚い政界の渦にまきこまれていく孤児の数奇な運命-。大ヒットしたピカレスクロマンス「スキャンダル」が遂に、刊行!番外編“佑士と祥彰の初夜編”も収録。
『余白の街』でゴンクール賞を受賞し、現代フランス文学のエロス的幻想ジャンルを代表する作家の、珠玉の短編集。ローマの北方に密かに佇む十六世紀の遺物「謎の怪物庭園」をめぐって、聖なる人工廃墟の芸術性を浮き彫りにする表題作のほか、『黒いエロス』『ジュリエット』『イギリス人』など、眩惑と官能と怪奇が交錯する独自の世界を渋沢龍彦が編訳。
新潟と長野で起きた殺人。容疑者の美人双子姉妹には鉄壁のアリバイがあった。壊れた時計、時刻表、ビデオ・テープ-ミステリの必須アイテムに新たな生命を吹き込むスリリングな表題作に、どんでん返しの醍醐味が堪能できる倒叙短編の二編をプラス。思いもよらない一点から完全犯罪を瓦解させる推理のキレ。
時計の行商をするために生まれ育った離島にやってきたマチアスは、直前ヴィオレットという若い女性を殺していたー外界とマチアスの意識との有機的な関係を、事物そのものに迫る数学的にまで昇華された文体で描くことによって、青年の荒廃した深層心理をうかび上らせたヌーヴォー・ロマンの傑作。
世紀末日本に彗星のごとく現れた団体「理性の跳躍」。エリート層を中心に七千名の会員を擁し、膨大な資金力を持つ彼らが主張する強者の論理が人々の心をとらえていく。だが、その陰でひっそりと不可解な死を遂げた男がいた-。混迷の現代社会を問う書き下ろし長編サスペンス。
17歳の家出娘を捜して欲しいー更正施設で薬物中毒患者の世話をする佐久間公に、女性実業家からの依頼が舞い込む。住踪人調査を再開した佐久間は、渋谷・六本木・新宿と娘の行方を追う先先でかってのライバル岡江に先を越される。彼女はなぜ追われるのか?大沢ハードボイルドの鮮烈な到達点がここに。