1999年6月発売
女三の宮、宇治の大君・中の君、浮舟など、主だった女性たちの登場で、物語はいよいよ佳境へ。複雑に絡みあう恋人たちの愛のもつれを丹念に解きほぐし、物語の女君たちに、一人称で心の内を語らせた新しい恋愛小説。千年を隔てた恋愛小説の競作。
小雨のそぼ降る朝、茨城の山中の寺が突如爆発、炎上した。同じ日、千葉・木更津付近の路上から、富津の東京湾観音へとタクシーに乗り込んだ不審な少女が-。観音像の足下で、その少女が力なく倒れたとき、ポケットから爆発事故ともつながる一冊の書物が転がり落ちる。カウンセラー・岬美由紀は少女の危機を予感し救済に立ち上がるが、行く先には想像を絶するスケールの複雑な罠が仕掛けられていた…。映画化話題作『催眠』を知る人にも知らない人にもいっさいの予断を許さない大胆な続編。抜群のスピード感で展開する、極上エンターテインメント・サスペンス。
「追われている。殺されるかもしれない。そうだ、テンプル騎士団だ」ミラノの出版社に持ち込まれた原稿が、三人の編集者たちを中世へ、錬金術の時代へと引き寄せていく。やがてひとりが失踪する。行き着いた先はパリ、国立工芸院、「フーコーの振り子」のある博物館だ。「薔薇の名前」から8年、満を持して世界に問うエーコ畢生の大作。
中世から放たれた矢は現代を貫通し、記号の海で歴史が改編される。カバラ、薔薇十字、カタコンベ、エクトプラズム、クンダリニー蛇、賢者の石、黄道十二宮、生命の樹、カンニバリズム…「フーコーの振り子」へのパスワードは何か?20世紀最後の知の巨人、エーコがおくる、極上のワインの酔いにも似た、めくるめく文学の愉悦、陶酔。
十四世紀のヨーロッパを襲ったペストがフィレンツェにもたらした死の影の下で、ボッカッチョは完全な精神の自由を獲得し、過去のくびきから解き放たれて、十日十話、百篇からなる多種多様な物語を書き上げた。ルネサンスの息吹きを伝え、近世小説のさきがけとなった屈指の古典『デカメロン』を見事な日本語に移しかえた名訳。(第七日、第八日は省略)。
最先端の技術、知識をもってペルシャから日本に渡来した工匠の末裔・司堂家。おだやかに暮らしていた彼らの築城技術と驚異的な正確さで完成していた日本全図に、乱世を統べんとする戦国武将たちが目をつけたことから悲劇が始まった。著者自らの祖先をモデルに描く歴史ロマン。
高級クラブでVIPの接待係をしていた幼なじみの美女・麻利が失踪!新聞記者平野は家出人捜索所の片山と共にその行方を追う。武器商人、米国将校、元首相と、クラブの客を探るうちに、思いもよらぬ資料を手中にする。そこには核武装した新兵器の概要が!社会派推理の巨匠が、日本の腐蝕を抉る問題作。
武器商人や大物政治家が集う高級クラブの失跡した接待係を追っていた平野と片山は、要人抱きこみを狙う秘密接待所に辿りつく。核燃料再処理と新兵器への陰謀を操るのは誰か。南海の孤島へ飛んだ二人の前に、日本軍細菌部隊の亡霊が現れる。日本を覆う「恐怖の容器」を描き出した社会派巨編、堂々の完結。
元英国情報部員クランマーのもとに突然警察が訪れた。旧友でかつての部下のラリーが、元KGB工作員と組んでロシア政府から大金を詐取し、失踪したという。しかも、クランマーの愛人エマも同行しているらしい。そのため、警察をはじめ情報部はクランマーが共犯ではないかと疑っていたのだ。苦境に立たされた彼は、自ら二人を追い、真相を探りだそうとするが…現代世界をさまようスパイの魂をサスペンスフルに描く傑作。
ちょっといいかい?あたしは顔も頭も良くない。だけど悪役女子プロレスラーとしてはうまくやってる。それなのにある夜、警察の手入れを受けたクラブから若い娘を救いだし、家に連れ帰ったときから不審な男たちに追い回されるようになってしまった。あの娘が原因らしいけど、だからって見捨てるなんてできない。あたしがカタをつけてやる!正義感と人情味溢れるヒロイン、エヴァの奮闘を描く英国推理作家協会賞受賞作。
マンハッタンは、その事件に戦慄した。NY随一の規模を誇る総合病院、ミッド-マンハッタン・メディカル・センターで、高名な女性医師が死体で発見されたのだ。全身を刺され、下半身の下着を剥ぎ取られた姿で…病人を癒す安息の場所であるはずの病院での惨劇に、マスコミは騒然となった。状況から見て、レイプ殺人の可能性が高い。マンハッタン検察庁の性犯罪訴追課を率いる女性検事補アレックスが、ただちに現場へ急行した。だが、状況を知った彼女は唖然とする。病院は警備が甘く、その構内には数多くのホームレスが住み着き、外部の人物も侵入可能な、きわめつきの危険地帯だったのだ。思わぬ事態に、容疑者は続出し、捜査は遅々として進まない。苦しい状況に追い込まれたアレックスだが、事件解決への手がかりは、意外なところからもたらされた…自らも性犯罪訴追のエキスパートである著者が、マンハッタンの犯罪と生活を余すところなく描き出した、一級品のサスペンス。
伊勢から神戸にかけての約三百キロにわたる「歴史街道」は“日本版ロマンチック街道”ともいわれている。この街道にある日、点々と女性の死体がバラまかれた。一方、中年女性に失踪した娘の行方を探してほしいと頼まれた弁護士探偵・森江春策は青山高原と飛鳥にめまぐるしく続発した殺人に遭遇し、バラバラ死体事件にも取り組むことになる。やがて浮かび上がってきた前代未聞のおぞましいトリックとは。
処女作で文学新人賞に輝き華々しいデビューを飾ったものの、次作が書けず焦燥感にかられた秋川久生は、ルポライター寺島遼子との同棲生活を打ち切り、スペインに旅立った。そんなある日、夕景のアルハンブラ宮殿で小西景子と知り合い一夜を共にするが、翌朝、景子は姿を消していた。帰国し、新しい女性との交際を深めつつあった秋川は、軽井沢で、今は人妻となった景子と再会を果たす…。長篇恋愛小説。
危機への対応は幾つかある。米国が常套とする腕力による解決もその一つだ。しかし、私たちは中国との関わりで幾度も錯誤をやらかしている。その経験を踏まえるならばまずは対中関係のみならずアジア諸国と日本との道義に基づく共栄のアジェンダ(構想)を明示すること、それが実は日本が経済敗戦から立ち直る第一歩となるのではないか。それが本書の隠された主題である。
借金に追われるしがない画商ウィル・サムナーにある日、願ってもない儲け話が舞い込んできた。癌に冒され余命いくばくもないフロリダの大富豪が、その超一流の絵画コレクションを売却してほしいというのだ。ところが、鑑定を始めるや大富豪の妻が何者かに殺され、「ファイルをよこせ」という脅迫が。ファイルとは一体何?それに大富豪はなぜかフロリダ州知事を憎んでいた。謎が謎を呼ぶ名画鑑定の行方はいかに。
ファントム・ライダーとして数々の戦歴を誇る松本栄治は、四十歳を迎え、一線を退こうとしていた。そのラストフライトの日、松本の脳裏に蘇ってきたのは、中南米での人質奪還作戦飛行のことだった。実戦では先に敵機を発見した方に勝機がある。松本は自分の眼だけを信じ、勝ち残ってきたのだ…。意地と誇りを賭して蒼穹を駆けるライダーたちの物語。本格航空小説。
東京都知事室に「東京を火の海にする…」という脅迫電話がかかってきた。犯人の狙いは…。混乱する都庁。その夜、入国管理局の収容所が襲われ、警備官を殺害、不法残留の中国人が大量脱走した。ふたつの兇悪事件を結ぶ意外な事実に気付いた警視庁捜査四課の実相寺は、怒りに燃えて、一匹の猟犬と化し、陰謀の核心に肉薄していった。長篇ハードサスペンス。