1999年9月発売
F1界のトップに君臨するアンジェロ・ダ・シルバの前に、若き天才レーサー、ミヒャエル・シュナイダーが現れた。ベッドで相手を自由にする権利を賭け、挑んできたミヒャエルとの勝負に、アンジェロは負けてしまう。「愛してる」と言われてもアンジェロにはベッドでの行為が屈辱としか思えない。そんな彼の心の壁をミヒャエルは破ろうとする。
本書では、ディケンズ後期を代表する四作品を対象に、主として作者の創作上の指向の流れに則した分析を通し、彼の作品世界の新たな側面を浮かび上がらせることを試みている。
死を決意した学生の「私」が四国で巡り合った老巡礼との邂逅、その無償の好意で救われる表題作「足摺岬」、新聞配達少年との心の通い合いと突然の死を伝える「絵本」、敗北する小藩の命運を書く「落城」、初期秀作「霧の中」他。人間の孤独な心に寄りそった、優しい視線の作品世界。
マフィアのボスを殺してほしい。殺し屋ヘンリーが依頼された狙撃の標的は、彼の古い知り合いだった。仕事と割り切り請け負ったヘンリーだったが、狙撃に失敗。一命をとりとめたボスは傷の治療のために、サンマルタン島で生活を始める。だがそこがヘンリーの暮らす島だったことから、狙撃を依頼した男は、ボスとヘンリーの双方を狙って殺し屋を送りこんできたーカリブ海の島を舞台に、非情な世界を描く冒険サスペンス。
ムーアたち特捜班は少年男娼斡旋所を監視下に置く一方、犯人割り出しに努めるが、犯人は捜査の網を潜り犯行を繰り返した。やがて特捜班は、死体の傷つけ方がインディアンの習慣を連想させることから、犯人はインディアンと接していた白人ではないかと容疑者を絞り込む…近代化以前のニューヨークを舞台に、プロファイリングの原型となる画期的な捜査方法を用いて異常殺人に挑む特捜班。話題の歴史サイコ・スリラー巨篇。
アカデミー賞授賞式の夜、見事に監督賞を射止めたブルースは、意気揚々と帰宅する。だが栄光の夜は、思いもよらぬ展開を見せた。彼の邸宅が連続殺人鬼のカップルに占拠され、ブルース自身も彼らの人質とされてしまったのだ。駆けつけた警察とマスコミに、殺人者たちが突きつけた、奇想天外な要求とはー英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞の話題作。
タナーの飲み友達のトムが、謎の自殺を遂げた。その直前、彼はタナーの留守番電話に“血の痕跡をたどっている”と伝言を残していた。救急隊員として誇りを持っていたトムが、なぜ自殺を?あの伝言で彼はタナーに何を伝えようとしたのか?数々の疑問を抱いて調査に乗り出したタナーの前にやがて血液製剤に絡む企業の陰謀が浮かびあがるー親友の死の真相を探るため、知性派探偵タナーが大企業の悪に独り立ち向かう。
エレベーター専門の電機メーカー、ニュートン社の営業課長・水城寛太郎は、実家のラブホテル「カサブランカ」のフロントという夜の顔を持つ。ある日、総務部の女主任・万田百合絵に誘われ、濃密な情事の後で驚くべき事実を聞いた。水城が一番信頼し、可愛がっていた部下の前田美矢香が、援助交際をしているという。さらに、社長の檜垣達之助が株主代表訴訟を起こされるらしい。水城に与えられた特命は。
十六歳の少女・森下麻沙美との愛人関係を解消して半年、紀本晋一郎はしきりに麻沙美との日々を懐しんでいた。そんなある日、紀本のもとに麻沙美から突然連絡があり、会うことになった。麻沙美は、その場に中学生の妹・亜沙美を伴ない、妊娠してしまった亜沙美の堕胎の費用を出してほしいというのだ。五回だけ紀本に抱かれてもいいという。青い性に再び溺れる紀本だったが…。会心の長篇官能ロマン。
近江の豪家の下僕・茂助は、朋輩の治作が主人に殺され、そのいいなずけだったまきが主人に囲われた事を知る。茂助のなかに貧しさと富貴の徒に対する憎しみが生まれた。主家を出奔した茂助は、やがて洛外に居を定め、貧乏公家に数寄を習うとて、復讐の大勝負に出るー。極限まで虐げられた男がしっぺ返しに生涯を賭ける表題作ほか、哀しく逞しい民の姿を描く傑作時代小説集。
江戸。幕閣は公然と賄賂を取り交わし、行政治安は紊乱を極める田沼時代。御家人として世を捨てた暮らしの斑塔十郎は、自害を願う女と出遭う。仔細ありそうなその女は、塔十郎の情けによって思いとどまったと見えた。だが、大商人山崎屋の寮に田沼意知が訪れた夜、女は全裸で殺されるー。ニヒルな塔十郎の剣が、圧政に苦しむ庶民を助けて悪を斬る!傑作時代長編。
クロックフォードーどこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に…!警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す『アメリカの悲劇』の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。
いつもの暮らしのそこここに、ひっそり開いた異世界への扉ー公園の砂場で拾った「雛型」との不思議なラブ・ストーリーを描く表題作ほか、奇妙で、ユーモラスで、どこか哀しい、四つの幻想譚。芥川賞作家の初めての短篇集。
ぶらりぶらりと歩きながら、語らいながら、静かにうつらうつらと時間が流れていく。鎌倉・稲村ガ崎を舞台に、父と息子、便利屋の兄と妹の日々…それぞれの時間と移りゆく季節を描く。平林たい子賞、谷崎潤一郎賞受賞の待望の文庫化。
殺人犯の汚名を着たまま獄中死した、婚約者の父の再審請求をしてくださいー。サラ金会社の社用で霧多市を訪れた、弁護士の宗像光生は、飲み屋のママ雅代からとんでもない依頼をうけた。サラ金の顧問という、弁護士として落ちぶれていた宗像は、雅代の度重なる懇願に負けて引き受けてしまうが…。二十年前の事件を追って、北海道から九州、四国を駆ける宗像の辿り着いた真実とは!?木谷ミステリーの最高傑作。