1999年発売
大地震と、人の生き血を吸う妖怪たち。十万人を越える死者が出た京都大災害の1年半後には、琵琶湖の湖底からホタルに似た巨大昆虫が人々を襲い、テニアン島が空を飛んで、京都上空に浮かんでいる。いまや町は危機管理委員会の支配下にあった。黒き神々の手先はあらゆる機関に入り込んでいる。未曾有の災厄に立ち向かい、いったん死んだものの、貴船神社の龍神から、命を授かった地質調査技師の木梨香流は恋人の真行寺君之とともに、時空の裂け目にある闇の牢獄に部屋ごと封じ込められていた。大異変が始まった…。
ぐおぉーんと、寂寥たる闇を震わせて、不気味な鐘の響きが山中を貫いた。絶対、鳴らないといわれ、もし鳴るようなことがあれば『この世が終わる』と伝えられた不鳴鐘が突然、大音声で鳴り響いたのだ。鐘堂に駆けつけた天主家の人々の前に、また新たなる悲劇の幕が上がった。着物を着た人間の膝から下の部分が釣り鐘の中からぶら下がっている。庭師の秀夫だった。突然吉原より呼び出された朱雀十五、因縁の地、神岡山の聖地、天主家の館に再度、乗り込むことに…。いよいよ、事件は因習と血塗れの大迷宮に。全ての謎は解かれるのか。『黄泉津比良坂、血祭りの館』完結篇。
中央アフリカのマリ。神秘的な宗教を持つドゴン族の遺跡から,奇妙な化石骨と未知の合金が発掘された。それは、ヒトと似てはいるが、まったく異種の生命体であり、地球外のものである可能性があった。異端の古人類学者ジャック・オースティンは、化石の素性を調べるため、さらに南米ボリビアの地下遺跡へと飛ぶ。彼はそこで現生人類の飛躍的進化の秘密にかかわる壮大な事実を知るが-。
鎌倉・稲村ガ崎に時間はながれる。クイちゃんと僕は今日も生きている。茶々丸といっしょに。猫と宇宙、便利屋の兄妹と自由律俳句のしあわせ。昔の写真をながめながら、うつらうつらと哲学する父子の語らいのなかで、ふと思うのだ。生は有限ではない、と。谷崎潤一郎賞受賞のロングセラー『季節の記憶』待望の姉妹篇。
舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。
出版エージェントのアランは、ヨーロッパから帰国した父ニルスと数年ぶりに会った。ニルスは、アランと稀覯書愛好の友人に、パリのアメリカ人夫妻を描いた短編を読ませた。文体から著者を推定した二人は興奮した。入手経路は明かさずに「1922年パリのヘミングウェイ原稿盗難事件」を匂わせたニルスは、短編は全部で20編あると言う。ヘミングウェイ学者も巻きこむスリリングな長編。
デイヴ・デラノーは、5年の服役を経てマイアミ刑務所を出る当日、国外追放されたロシア人ゲルギエフから手紙を受け取った。そこに記されていた現金強奪計画を、デイヴは、その弁護士を通じ、マフィアの黒幕ヌーデリに持ちかける。大西洋を横断する豪華ヨット運搬船に乗り込み、資金洗浄すべく極秘で隠し運ばれる麻薬売上金を横取しようというのだ。海洋ピカレスク・ロマンの金字塔。
さざ波海岸のオシャレな海の家「マリンパレス」で、ひと夏、アルバイトをすることになった高校2年生・袋井雅人。音信不通になっていた幼なじみの麻丘千尋と、バイト中にバッタリ出会えたのはよかったが、隣にはしっかり彼氏が…。切ない想いをする雅人をよそに、なぜか雅人に憧れるロリ少女・早坂みく。彼女のために、雅人を一人前の男に教育しようと、山咲かんな、柏崎麗、杉田智恵理らが頭と身体を使って…ムフフフ。ところが、それを知った千尋の心に何かが芽生えた…。ゲームと文庫同時発売!文庫版オリジナル・ストーリー。
熱く奔放なる少年ー風祭龍紀。物静かで聡明なる少年ー風祭龍弥。双子として、同じ魂をもつが故に、互いを理解し、同じ魂をもつが故に、反発するふたり。それでも、ふたりは、ずっと、固い絆で結ばれてきたーその日までは。那智姉弟の思惑の中、それぞれの『大切なもの』を護るために、今、ふたりは対峙する。二組の転校生を巡って繰り返される因果と宿星を描く『東京魔人学園双龍変』シリーズの第参巻。
首無し死体となって発見された美人女子大生、菅野香織。彼女の死と殺害方法は、ミステリ小説の中で、何故か予告されていた。首は見つからぬままに、再び発見される女子大生の首無し死体。異常なる連続殺人の背後には、密室の中で首を切断して自殺した作家の存在があるという。事件と対峙するのは、笑わぬ男、安藤直樹。安藤が最後に微笑むとき、明らかになる「世界の謎」、そして驚愕の「切断の理由」。若き才能が、ミステリ・ルネッサンスの先を見つめ、自らの存在を賭けて挑む超絶のエンターテインメント。
「山手夫人」を巡って壮絶な諍いを起こした二人の男。一方の本橋が殺され、凶器のナイフには、相手の藤木と、謎の指紋が残されていた。藤木は、死者への憎しみを露わにするが、鉄壁のアリバイを主張する。ルポライター・浦上伸介と前野美保は、事件の発端と思われる、正体不明の「山手夫人」に迫る。真犯人は誰。
コンピュータネットワークが張りめぐらされた未来都市・東京。突如世界を襲ったコンピュータウィルス「XINN」により、世界中が混乱してから1週間後。その原因を捜査していた政府情報機関「帝謀」の御子神は、命令によりCIAから極秘情報を盗んだマシー・スペクターを暗殺する。ところが、翌日マシーは、ネットワークを通じて挑戦状を突きつけてきた…。ネット上に次々と浮かぶ謎…。マシーは本当に死んだのか?「XINN」の正体と目的は?シーズウェアの大ヒット作完全小説化。
「お前に弟か妹ができると言ったらどんなものかなあ」突然の親父の電話に僕はぶっ飛んだ。福岡に単身赴任している親父に、どうやら彼女ができたようだ。それも妊娠3か月!そこで、かれんと二人で福岡まで行くことに…。新幹線の旅は楽しかったけど、むこうで会った親父の彼女というのが…。シリーズ第4弾も、波乱含みー。
玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのかーその狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。