1999年発売
鳥居耀蔵に命じられ、札差「伊勢屋」の押し込み一件の裏探索に当たっていた明智惣五郎。背景には、鳥居が町奉行の座を狙う思惑があったが、前職を失脚させた矢部駿河守に先を越されてしまう。水野越前守ら幕閣内での覇権争いや、先年、北町奉行の職に就いた遠山左衛門尉の執政を横目で睨みながら策を巡らす鳥居は、矢部の追い落としを謀る。執拗で周到な攻勢をかけ、南町奉行の地位を渇望する鳥居は…。
肥満し醜い気弱なレナード。だが彼は周期的に「風の吟遊詩人」へと変性し、浄化の神となって人を殺す。天才的ハッカーの腕前でセキュリティを打ち破ってどこにでも侵入しては女性を惨殺し死体を切断する。犯罪プロファイラーのカレンと捜査官のジョンは偶然、インターネットでレナードの秘密のチャットルームをのぞいてしまう。急きょ追跡を始めるが、レナードも彼らの侵入に気づき、迎え撃とうとしていた。
抜群のカード・テクニックを持つマイクはロシアン・マフィアテディKGBとのポーカー勝負で全財産を失い、ロースクールの学生としての新たな人生を選ぶ。同棲中の恋人ジョー、そして輝かしい将来を目前にしながらも、闇ポーカーのスリルと興奮が忘れられない。そんな時友人のワームが刑務所から出所しトラブルに巻き込まれる。マイクは友情のため再び“ラウンダーズ”の世界に足を踏み入れることに…。
ドアの前に男が一人、険しい顔をして立っていた。多岐島には男の用件の察しはついた。この男の妻と不倫をしていたのだ。男は多岐島に、「俺の女房がされたことと同じことを、お前の奥さんにしてやる」と脅した。多岐島の妻は、初めは恥ずかしがっていたが、肉壺のなかに、人指し指と中指を埋め込むと感度よく反応した。背を反らせ、恍惚の表情をみせた。-「不倫の報復」より。表題作のほか、九編を収録した官能小説作品集。
大阪伊丹飛行場。3人の海軍中将が大空を見上げている。そこには、急上昇しながら機体を一回転させる新鋭機の力強い姿があった。ミッドウェー以降、ソロモン、南太平洋と惨敗は続き、無敵を誇ったはずの帝国海軍航空隊に、いまや真珠湾の面影はなかった。一方、アメリカは日本が形勢挽回の機会を逸している間に、「超空の要塞」ことスーパーフォートレスB-29の実戦への投入を着々と進めていた。中部太平洋にこの重爆撃機が配備されれば、日本本土は焦土と化してしまう。アメリカの攻略を阻止するためには、海軍航空隊に陸軍飛行隊を組み入れた“空の艦隊”を一刻も早く再建するしかない。残された時間はあまりに少ない。3人は再び天空を舞う、紫電改を見た。
世の真珠ブームにのり、売り上げを伸ばしている宝石販売会社社長の井尻俊作は、商売ものの真珠を自分のモノに埋め込んでいる。その自慢のモノで井尻は、顧客の貞淑な人妻を口説き落とし、未知の快楽へと誘い、人妻たちもその熟れた唇戯で井尻を絶頂へと導くー。猟色も仕事もパワフルにこなす、絶頂請負人の昼夜を問わない八面六臂の活躍を描く長篇官能ロマン。
前後して銀行を襲った二組の強盗団。都心銀行は大パニックに陥る。強盗団のリーダー上杉は、警察だけではなく現代そのものに戦いを挑んでゆく。事件は事件を呼び、さらなるパニックへと連鎖してゆく。共感する二百万人のやじ馬たち。ついに総理が倒された時、日本は激動する。非常事態宣言が発令され、自衛隊が動きだす。帝都に戦車が走り、大型ヘリが舞う。空前のノンストップ・ハードノベル・完全版、ついに文庫化。
どうしたというのだ?-良平は愕然とした。授業中眠ってしまったというのにきちんとノートがとってあるのだ。その上、周囲の人々も、まるで何者かに乗っ取られたかのような行動を見せるではないか!人間の身体と意識を占領し、思いのままに操る借体生物の恐怖を描く表題作。他に、亜空間に住む無機生命による驚くべき侵略をテーマとした『まぼろしのペンフレンド』を収録。
戦争によってその将来を断たれたピアニスト・寺田武史。戦後、非業の死を遂げた彼の生涯を小説にするべく取材を始めた柚木桂作は、寺田の遺した謎の楽譜や、彼の遺児と思われる中国人ピアニスト・愛鈴(エーリン)の存在を知る。調査をすすめるうち徐々に明らかにされる、戦時下の中国と日本を舞台とした“ある犯罪”…。複雑にもつれあう愛憎劇に、楽譜による“暗号”を絡めて描く、長篇ミステリー。
昭和前期、戦争へと転回していく時代のなかで「赤い鳥」の連載童話『私のピーター・パン』と出逢って以来六十年、イギリスから東北の山中までピーター・パンを追いかける表題作ほか、忘れ得ぬ書物に人生の記憶を重ねた「大事の小型聖書」「トッテンコーローの話」「七十一歳のシェイクスピア」、献体というかたちで「神様に肉の体をお返しした」兄の生涯を描く「夏の月」「兄の帰還」「くじらの骨」の七篇を収録。
フェアエーカー村の学校の元校長ミス・リードは、健康上の問題から定年まで数年を残して退職したが、思い描いていた平和な暮らしと現実は大分違っていた。リタイア後も、おなじみのボブ・ウィレットは庭の手入れに、ミセス・プリングルは掃除の手伝いにと通ってきたは、フェアエーカー村のゴシップに余念がない。友人のヘンリー・モーンの家庭問題、ジョン・ジェンキンズの習慣化した求婚などミス・リードの身辺もにぎやか。そして、手すさびにと、ものを書くことを勧められたミス・リードは、新しい目標に挑戦するのだが…。半世紀にわたって数多くの田園物語で欧米の読者を魅了しつづけてきたミス・リードの英国田園物語最新作。