2000年12月発売
不倫カップルのような二人がとまり木に座ってこそこそやっている。ハリウッド女優もひれ伏す女の美貌に、男たちは目を奪われずにはいられない。「先生、タイヘイヨウセンソウのヘイワイジはウマクいくのでしょうか」「すべては『彼』しだいさ」男が煙草をくわえると、バーテンダーがライターの火を差し出す。「ドライ・マティニーを二つ。あっ、オリーブは…」抜いておきます、とバーテンダーは男にピースサインをして、離れた。「いよいよ明後日だね。大正十五年への旅」窓の外には「氷川丸」のイルミネーションがきらめいている。いや、たしか今年から船上レストランは「みかさ」に変わったはずだ。台風十四号が近づいている、となぜだか嬉しそうに話す客の声が聞こえた。
札幌市郊外の学園都市が謎の爆発を起こし、瀬田寒原野に犬頭状の陥没が現れてから半年余り。今は立入り禁止となっているその周辺で、またも怪事件が発生していた。オカルトライター兼占い師の稲村虹子は、その事件の霊査を依頼され、札幌へ向かうが、彼女を待ち受けていたのは、黒魔術によって三たび目覚め、札幌に向かって首をのばす巨大な犬の顎であった。忌まわしき凶獣は甦るのか!?『魔犬召喚』から『屍食回廊』までの謎がここに明かされる!傑作オカルト・ホラー長篇。
黒いビニール袋に入れられた女性のバラバラ死体が、都内の神社の境内から発見された。頭部と両手部分がないその死体は、被害者の身許すら分からず、事件の長期化を予想させた。そんな中、警視庁捜査一課の部長刑事・瓜生田洋は、遺体に残された手術前痕を手がかりに事件を追い始める。そして、医療事故を取材中だったフリージャーナリストの女性が、失踪しているとの情報が…。さらに病院関係者を追う瓜生田の眼前で第二の殺人が発生した!傑作警察小説。
かつて織田信長から受けた薫陶を忘れず、商人優遇の領地経営を心がける戦国武将・蒲生氏郷。戦場往来で出世を重ね、独自の経営哲学を実践する彼の周囲では、さまざまな商人が、新たな人生を切り拓いていく。乱世に芽吹いた、商いの道とは何か。後に「近江商人育ての親」と呼ばれる蒲生氏郷の生涯を通じて“商いの原点”を、高らかに謳い上げた異色の戦国ロマン。全一冊・決定版。
英国商社シングル&シングル社の重役が、トルコの丘で銃殺された。時を同じくして、同社社長の孫娘の信託口座に、スイスの銀行から五百万ポンドもの大金が匿名で振り込まれる。度重なる異常事態から、社長である父の身の危険を察知したひとり息子のオリヴァーは、過去の確執を越えて、失踪した父親の行方を追うが…。混迷するロシアを背景に、冒険小説の巨匠が、父と子をめぐる愛憎を濃密に描く傑作長篇。
それがどうして始まったのかは分からない。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか、手違いなのか。私たちは何度も出会っている。結ばれることはない。でも、離れた瞬間から、会う瞬間を待ち続けている-生まれる前も、死んだあとも。あなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。いつもいつも。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。いつも、うれしかった。覚えていてね、わたしのライオンハート…。いま最も注目を集めている作家・恩田陸が贈る心に響くラブ・ストーリー。
幕府小普請組に属する村椿五郎太は、西両国広小路の文茶屋で代筆を内職とするかたわら、学問吟味に合格し御番入り(役職に就くこと)を狙っている。そうすれば将来を約束している娘・紀乃との仲も許されるというものである。代書屋に持ち込まれる騒動、紀乃との恋の一進一退、そして学業の行方…温もりの伝わる五篇の連作短篇集。
讃岐高松藩の微禄の士であった平賀源内は長崎で本草学(薬学・博物学)を研究、その物産会を開こうと大阪で鴻池や三井らの豪商と交渉、江戸へ出て最大の支援者となる時の権力者・田沼意次に近づく。大身の旗本の息子・藤次郎や、妻となるお桂、藩主・松平頼恭、上方の歌舞伎狂言作者などとの人間模様の中に、異能の人の息づかいが伝わる…。
この計画は、人を信じなきゃ進まない。今まで誰も、そこに気がつかなかったんだ…。奇跡は、カリフォルニアの小さな町から始まった。トレヴァー・マッキニー、12歳。中学校の新任教師、ルーベンが出した課題は『世界を変える方法を考え、それを実行しよう』-そして彼はひとつのアイデアを思いついた。「ぼくが3人に何かいいことをする。彼らがお返しをしたいと言ったら、それを他の人に返してほしい」彼の計算では、434万6721人の人間が関わってくるはずだった。途方もない彼の計画は成功したのだろうか?答えはノーとも、イエスとも言える。なぜならペイ・イット・フォワードはこの物語を超えて今も続いているからー答えは、あなたが決めることなのだから。
グレイシラは、かつての執事ミレットを頼って、男爵邸を訪れた。継母の強要する結婚を承諾したあと婚約者が、彼女の愛人だと知ったからだ。父親には告白できない理由の家出ゆえ隠れがには用心しなければならない。ミレットは、十二年ぶりに帰国した今の主人ダミアン卿と顔を合わせない約束でグレイシラをかくまう。彼は昔、年上のリンマス公爵夫人と駆け落ちした悪名高い人物だった。しかし、グレイシラが偶然出会ったダミアン卿は、詩人のような紳士である。二人は人目を忍び、森の中で奇妙な逢瀬を続けてゆくが…。
僕の恋人は、5つ年上のいとこ・かれん。星野りつ子に僕らの関係を告げたときから、何かが動きはじめたー。父の帰京と再婚、そして妹の誕生…。僕、かれん、その弟・丈、三人だけの満ち足りた生活に、少しずつ変化が訪れようとしている。その変化が何をもたらすのか、僕はまだ、気づいていなかったー。丈の恋の行方を描いた番外編も同時収録、村山由佳の人気シリーズ第5弾。
学校なんてただの灰色の入れ物かも知れない。そんな思いで学園生活を送る生徒たちの前に突然現れたピンク色をした異様な生き物。それは気味の悪い鋭利な舌でやにわに襲いかかってきた。級長の如月そよぎは、椅子でなんとかしとめたが、それが大災難の始まりだった。次々と襲いかかる異界の生物・ネイバー。クラスの誰にも逃げる道はない。ひたすら闘うのみ…。あの『まずは一報ポプラパレスより』の河出智紀がPNをかえてお贈りする快心の学園パニック・ノベル登場。
40代を迎えたわたしは、世界の果てにどれだけ近づいているのか?気が滅入りがちなわたしを動揺させる新たな出来事が、降ってわいた。同世代の友人で新聞記者のマリ・ライアスンが、テレビ・リポーターに転身したのだ。記者として長年闘ってきたマリも、金の力に屈してしまうのか?マリの転身を祝うためパーティに出席した帰り、わたしは道に倒れていた女性を危うく轢きそうになった。その女性は重傷を負って倒れており、まもなく病院で死亡した。やがてその女性がニコラという脱獄囚だと判明するが、その直後、解剖する予定だったニコラの遺体が、何者かに持ち去られるという事件が起きた。わたしはニコラがメイドをしていた大手警備会社社長の家を訪ね、彼女が罠にはめられた疑いを抱く。なおもニコラが投獄された真相を探るうち、様々な妨害の手が延び、ついにわたしは誘拐容疑の濡れ衣を着せられ、刑務所へと!シカゴの女性探偵V・I・ウォーショースキー、6年ぶりに登場。生涯でもっとも苛酷な日々のなか、プロの探偵としての誇りを賭けたV・Iがすべてを投げうって真実を追う。
依藤警部補は十一年前の死体なき殺人事件を追っていた。埼玉県大宮市郊外の五階建てのマンションで起こった事件である。五〇三号室の住人は当時二十三歳になる女性で大手モデル事務所に所属していた。毛足の長いベージュ色の絨毯が、おびただしい量の血で赤黒く染まっていたのだ。残された血液から被害者を断定したが、死体がないのである。その容疑者と目された男が台湾から戻って来たが…。生まれ変わりの謎に挑む超伝承ミステリー第二弾。