2000年12月発売
はるか南部のジョージア州からやってきた依頼人は、馬の警備をスペンサーに依頼した。彼の経営する牧場で管理している馬が、何者かの手で次々と銃撃されているのだ。すでに三頭の馬が凶弾に倒れたが、今のところ金銭的な損害は軽微だ。だが、牧場には優秀な血統をもつ将来有望な名馬ハガーマガーがいる。高価な馬を守るため、銃撃犯を阻止してほしいというのだ。ホームタウンのボストンを離れ、愛しのスーザンともしばし別れて、スペンサーは単身南部ジョージアの牧場へ赴く。牧場には厳重な警戒態勢が敷かれていたが、スペンサーの嗅覚はそこにどこか不穏な空気も感じ取っていた。しかし、どうして価値もないような馬までが銃撃されたのか?はたして姿を見せぬ犯人の狙いは、何なのか?やがて凶弾は、思いもかけぬ標的に襲いかかった…。ボストンを離れ、単身事件に挑むスペンサーの活躍。人気シリーズ最新作。
デルタ・フォースの元隊員ベン・スタフォードと友人のエディは、ケベックの森林地帯でキャンプをしているときに、飛行機が墜落するのを目撃した。現場に向かった二人は、墜落機の中から百ドル札で二千万ドルを発見するが、それぞれの事情から、その金を山分けする。だが、その大金は偽札で、やがてCIA配下の暗殺者が二人のあとを追い始め、エディは殺されてしまう。さらに、シークレット・サービスまでもがこの追跡戦に加わってきた。ベンはエディの妹とともに、背後に潜む陰謀を探り始める。だが、執拗な追跡者の手は二人に確実に迫ってきた…。広大な森林地帯に繰りひろげられる白熱の銃撃戦-ポロックの魅力が爆発する凄絶なアクション・アドヴェンチャー。
不倫カップルのような二人がとまり木に座ってこそこそやっている。ハリウッド女優もひれ伏す女の美貌に、男たちは目を奪われずにはいられない。「先生、タイヘイヨウセンソウのヘイワイジはウマクいくのでしょうか」「すべては『彼』しだいさ」男が煙草をくわえると、バーテンダーがライターの火を差し出す。「ドライ・マティニーを二つ。あっ、オリーブは…」抜いておきます、とバーテンダーは男にピースサインをして、離れた。「いよいよ明後日だね。大正十五年への旅」窓の外には「氷川丸」のイルミネーションがきらめいている。いや、たしか今年から船上レストランは「みかさ」に変わったはずだ。台風十四号が近づいている、となぜだか嬉しそうに話す客の声が聞こえた。
作家である私は、灼熱のマニラで若いフィリピン人女性に一目惚れをしてしまった。気がつくと、アリスというその娘を、私は、年甲斐もなく夢中で口説き倒していた。月日が経つにつれ、アリスと私は、もはや離れられなくなっていった。やがて、年の半分をフィリピンで過ごす生活がはじまり、私は、アリスに薬局を買い与えた。だが、そこから少しずつ、何かが狂い始めていった。店の経営は行き詰まり、強盗に襲われ、アリスの嘘が次々と発覚していって…。著者の実体験に基づく傑作長篇。
札幌市郊外の学園都市が謎の爆発を起こし、瀬田寒原野に犬頭状の陥没が現れてから半年余り。今は立入り禁止となっているその周辺で、またも怪事件が発生していた。オカルトライター兼占い師の稲村虹子は、その事件の霊査を依頼され、札幌へ向かうが、彼女を待ち受けていたのは、黒魔術によって三たび目覚め、札幌に向かって首をのばす巨大な犬の顎であった。忌まわしき凶獣は甦るのか!?『魔犬召喚』から『屍食回廊』までの謎がここに明かされる!傑作オカルト・ホラー長篇。
時あたかも大東亜戦争を目前にしたある日、一高で発生した奇怪な人間消失事件ー本館正面にそびえる時計台の中から一人の学生が忽然と姿を消したのだ。事件前日に彼を訪ねた一人の女と、一高生に扮した偽学生の影が見え隠れする中、事件は悲劇的な展開を見せはじめる…。暗い時代を背景に、名探偵・神津恭介の若き日を描いた表題作とその続篇にあたる『輓歌』、二つの本格ミステリーを収録した一冊。
日曜日の東京発最終新大阪行きの『ひかり』は、週末を東京の恋人とともに過ごし、この便で帰るとぎりぎり、夜十二時の鐘が鳴る前に関西に戻れることから「シンデレラエクスプレス」と呼ばれていたー。この列車から切断された女性の左手首が発見された。発見者のコンパニオン・喜多村亜紀と櫛田範子は否応なく殺人事件に巻き込まれてしまう。そして亜紀のもとに届いた謎の手紙の意味とは何なのか。やがて事件は意外な結末をむかえることに…。
黒いビニール袋に入れられた女性のバラバラ死体が、都内の神社の境内から発見された。頭部と両手部分がないその死体は、被害者の身許すら分からず、事件の長期化を予想させた。そんな中、警視庁捜査一課の部長刑事・瓜生田洋は、遺体に残された手術前痕を手がかりに事件を追い始める。そして、医療事故を取材中だったフリージャーナリストの女性が、失踪しているとの情報が…。さらに病院関係者を追う瓜生田の眼前で第二の殺人が発生した!傑作警察小説。
かつて織田信長から受けた薫陶を忘れず、商人優遇の領地経営を心がける戦国武将・蒲生氏郷。戦場往来で出世を重ね、独自の経営哲学を実践する彼の周囲では、さまざまな商人が、新たな人生を切り拓いていく。乱世に芽吹いた、商いの道とは何か。後に「近江商人育ての親」と呼ばれる蒲生氏郷の生涯を通じて“商いの原点”を、高らかに謳い上げた異色の戦国ロマン。全一冊・決定版。
英国商社シングル&シングル社の重役が、トルコの丘で銃殺された。時を同じくして、同社社長の孫娘の信託口座に、スイスの銀行から五百万ポンドもの大金が匿名で振り込まれる。度重なる異常事態から、社長である父の身の危険を察知したひとり息子のオリヴァーは、過去の確執を越えて、失踪した父親の行方を追うが…。混迷するロシアを背景に、冒険小説の巨匠が、父と子をめぐる愛憎を濃密に描く傑作長篇。
目的のためなら手段は選ばない、韓国人スパイ洪敏成。日韓漁業協定をめぐる情報戦で、彼のとった作戦とは?『プラチナ・ビーズ』『スリー・アゲーツ』に続く、連作短篇集。
それがどうして始まったのかは分からない。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか、手違いなのか。私たちは何度も出会っている。結ばれることはない。でも、離れた瞬間から、会う瞬間を待ち続けている-生まれる前も、死んだあとも。あなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。いつもいつも。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。いつも、うれしかった。覚えていてね、わたしのライオンハート…。いま最も注目を集めている作家・恩田陸が贈る心に響くラブ・ストーリー。
幕府小普請組に属する村椿五郎太は、西両国広小路の文茶屋で代筆を内職とするかたわら、学問吟味に合格し御番入り(役職に就くこと)を狙っている。そうすれば将来を約束している娘・紀乃との仲も許されるというものである。代書屋に持ち込まれる騒動、紀乃との恋の一進一退、そして学業の行方…温もりの伝わる五篇の連作短篇集。
讃岐高松藩の微禄の士であった平賀源内は長崎で本草学(薬学・博物学)を研究、その物産会を開こうと大阪で鴻池や三井らの豪商と交渉、江戸へ出て最大の支援者となる時の権力者・田沼意次に近づく。大身の旗本の息子・藤次郎や、妻となるお桂、藩主・松平頼恭、上方の歌舞伎狂言作者などとの人間模様の中に、異能の人の息づかいが伝わる…。
この計画は、人を信じなきゃ進まない。今まで誰も、そこに気がつかなかったんだ…。奇跡は、カリフォルニアの小さな町から始まった。トレヴァー・マッキニー、12歳。中学校の新任教師、ルーベンが出した課題は『世界を変える方法を考え、それを実行しよう』-そして彼はひとつのアイデアを思いついた。「ぼくが3人に何かいいことをする。彼らがお返しをしたいと言ったら、それを他の人に返してほしい」彼の計算では、434万6721人の人間が関わってくるはずだった。途方もない彼の計画は成功したのだろうか?答えはノーとも、イエスとも言える。なぜならペイ・イット・フォワードはこの物語を超えて今も続いているからー答えは、あなたが決めることなのだから。