2000年4月発売
和光銀行の業績はこの二年間、次第に低下していた。ワンマン体制を敷いていた加藤五十八が引退し、矢野原史郎が新頭取に就任してからのことだった。さらにこの業績不振は矢野原の生ぬるい経営方針にあると、マスコミにも中傷記事が掲載されてしまう。これは銀行が世間に初めて見せたアキレス腱でもあったー。業績不振にあえぐ銀行の内部紛争と、そこに巻き込まれた一調査役の苦悩を描いた傑作経済小説。
ロンドンで発生した猟奇殺人事件。被害者はいずれも、レイプ容疑を持つ男性。現場には必ず、一輪の黒い蘭の花が残され、犯行の前日には、聖書の引用とともに被害者の死亡届が新聞に送られていた。敏腕ジャーナリストのベス・ギャンブルは自ら事件捜査のおとりとなるが、いつしか、レイプ犯殺害の容疑をかけられてしまう。無実を証明するため、そして真犯人を挙げるため、ベスの孤独な闘いが始まる。
足利高氏の謀叛により遂に崩壊する鎌倉幕府。驕る後醍醐は後宮政治を復活。寵姫・寵臣の国事壟断に諸国の民心は後醍醐を離れ、朝家の私闘に始まる戦いが日本国家を二分する。
7歳で父の組子・瓜生仁左衛門に預けられた禎蔵は、剣術に自力で這い上がる道を見出し、出世した。しかし、否応なく藩内の大きな力に巻き込まれていく下級武士の悲哀を身近に感じながらも、幼なじみの失踪と、父の死の謎を問い続ける。藩権力に翻弄される下級武士たち。その中で、若き剣術師範は、手探りしながらも誠実に生きようとする。待望の書下ろし長編時代小説。
日本ではまだマイナースポーツの水泳競技『飛込み』。学園生活を送りながらダイビングクラブに通い、オリンピックをめざしはじめた少年ダイバーたちをドラマチックに描く!森絵都、初の「スポ根」小説。
オーロラの中に現われた「もうひとつの世界」に渡ったライラは、“スペクター”と呼ばれる化け物に襲われ、大人のいなくなった街で、別の世界からやって来た少年ウィルと出会う。父親を探しているウィルはこの街で、不思議な力を持つ“短剣”の守り手となる。空間を切りさき別世界への扉を開くことのできるこの短剣を手に入れた少年と、羅針盤を持つライラに課せられた使命とは…。気球乗りのリーや魔女たち、そして天使までも巻き込んで、物語はさらに大きく広がっていくー。世界中で大ベストセラー、カーネギー賞受賞の壮大で胸躍る冒険ファンタジーの傑作。
キャリアも積んだ。名声も得た。だが、俺に何が残されたというのか-。過ぎ去った時、遠い出会い、苦い別れ。女流写真家と暗室で愛を交わした40代、先輩を凌駕しつつも、若手の台頭に焦りを抱いた30代、病床の少女を撮って飛躍した20代、そして学生時代を卒業した、あの日。時間のフィルムを巻き戻し、人生の光と影をあぶりだす名編。50歳のカメラマン喜多川の脳裏によみがえる熱き日々。閃光が灼きつけたせつない記憶いまも疼く5つのシーン。
今日も今日とて続く、犬士たちの救国道中。疲れと傷をいやそうと訪れた温泉で、一行は美しい女神・妙真に出会う。神であるにも関わらず、武芸者を毛嫌いして追い返してしまう妙真は、人であった頃の恋人への想いが断ち切れず、神になりきれぬ、と語るが…。大人気コミックの、待望の小説化。
少女は、誘拐され惨殺された!!怒りに燃えるクリーシィ。外人部隊で勇名を馳せた男の活躍を描いた巨匠の鮮烈デビュー作品。初老の元傭兵クリーシィを主人公とするシリーズの輝かしい第一作。冒険小説の巨匠が描く傑作長編。
吉村貫一郎が生涯かけて貫き通した「義」とはいったい何なのか。切腹を命じた大野次郎右衛門の真意とは…。感動の結末へと物語は進む。非業の死を遂げた男たちの祈りはかなえられるか。日本人の「義」を問う感動巨篇!
中学2年の実乃は4年前に母親を亡くして、今は父親と姉・花乃の3人暮らし。初めはショックから立ち直れなかったけれど、ようやく元気を取り戻したそんな時、突然父親が早く帰宅して、「会社を辞めた」という。原因は姉が補導されたこと…またしても新たな試練が訪れた!何気ない日常のなかで揺れ動く家族と、淡い恋の予感。少女の成長を明るくドラマチックに描いた、山本文緒のルーツともいえる傑作長編。
このドーチェスターの街で、マフィアに狙われる人間の依頼を受けることは、最大の自殺行為だ。そして探偵パトリックとアンジーのもとを訪れた精神科医ディアンドラも、アイリッシュ・マフィアとのトラブルを抱え、息子の命を脅かされていた。躊躇しかけるパトリック。しかし彼の背中を、永遠に生きつづけるつもりなの、とアンジーが押した。だが二人が飛び込んだのは、この街と住人が二十年にわたって隠蔽してきた、想像を絶する深い闇への入り口だったー。よりハードに、よりスタイリッシュに進化した極上のディテクティブ・ノヴェル。
「この子は神の恩寵によって4つの天運に恵まれることであろう…」-一族の悲願を成就する素質と天運を持って生まれた少年・雄呂血。平安時代末期、紀伊・大和の山奥に隠棲する彼ら一族は何者なのか。そして、雄呂血が成就すべき悲願とは!?秘宝・天日槍を擁し、朝廷を裏から支配する百済の三魔人。死期が近いとされた鳥羽法皇は、彼らに戦いを挑もうとする。動乱の渦中、雄呂血は使命を果たせるのか!?伝奇小説新時代を拓いた期待のニュー・カマー、富樫倫太郎が描く日本史の巨大迷宮。問答無用の1500枚。
かの名探偵と怪盗紳士の“ほんとうの出会い”を、1900年パリ万博を舞台に描いた書き下ろし中編「真説ルパン対ホームズ」、アメリカ黄金時代の探偵たちが不可解な殺人事件をめぐって推理を繰り広げる「大君殺人事件またはポーランド鉛硝子の謎」をはじめとして、古今東西さまざまな探偵たちが紙面狭しと大活躍する“芦辺ワールド”の大博覧会!粋なトリックと洒落たギミックで読者をいざなう8編を収録。
1942年3月1日、ルーズベルト米大統領は、驚くべきスピードで日本に対する宣戦布告を行なった。その衝撃は世界中に広がる。電光石火の早業に、日本は大混乱に陥った。強硬派と穏健派に分かれ、さらなる国内の混乱を呼ぶ。そのすべての元凶は41年6月、突如、世界を激震させたヒトラーの日本への亡命だった!42年2月、ヒトラーは帝国陸軍の幹部を巻き込み、自らの野望を果たすべくクーデターを画策するが、結局、東条英機らの活躍で、日本は危機を脱し、ヒトラーは焼死する…。しかし、ルーズベルトは戦争を欲していた!山本五十六は、長門の長官室で軍令部の無為無策に唇を噛みしめる。一方、キンメルは短期決戦を望む大統領の意向を受け、全力で決戦に挑む。マーシャル諸島沖、両軍の思惑をこえた激突の火蓋が、ここに切られる。