2000年6月発売
小学校のPTA役員として知り合った母親たち。離婚やいじめなど家庭や学校の問題に翻弄される中、東京女子マラソンでひたむきに走る選手たちに彼女たちが託したものはー。母、そして子ども、教師とそれぞれの心の葛藤をリアルに描き出す。他2篇を収録。
「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」など、世界の子どもたちに親しまれているグリム童話。その産みの親のグリム兄弟は年子として、18世紀後半のドイツに生れた。兄ヤーコプと弟ヴィルヘルムは、45年の歳月を費やし210の童話と579の伝説を世に送り出す一方、言語学者としても活躍。この本は、口伝のお話の収集方法やグリム(ドイツ語)辞典の業績を中心に描く、兄弟の人間性あふれる評伝。
「ぼくはどこの者か?ぼくは子供時代の者だ。ぼくは一つの国の者であるように子供時代の者だ」と書いたサン=テクス。子供時代を常に創造の基点とし、飛行士としてジャーナリストとして視野を広げつつ、夢想と行動のはてに築かれたその生涯と作品世界。生誕100年を迎え、全世界でますます高まる人気の源泉を、日本におけるサン=テグジュペリ研究の第一人者が克明に解きあかす。
ナンタケットの冷たい海底に沈む豪華客船、アンドレア・ドリア号の残骸。だが、そこにコロンブス以前の貴重な財宝が眠っていることを知る者は少ない…。NUMA特別出動班のカート・オースチンは、モロッコの沖合いで作業中に、何者かに襲撃されていた美貌の考古学者ニーナ・キーロフを救う。ニーナが探り当てていた人頭石像の秘密とは?NUMAの精鋭総登場の新シリーズ発進。
海中の財宝を独占しようと企む大実業家ハルコンの真の狙いとは何か?その背景には、15世紀に端を発し、300年以上も休眠状態にあったスペインの秘密結社の存在が隠されていた。その理念を継ぎ、合衆国南西部からメキシコにかけて一大新国家を設立、君臨しようという野望。その阻止に動くNUMAの面々に、驚くべき新事実がもたらされる。鍵を握るのはアンドレア・ドリア号だー。
古いのれんを細々と守るビスケット屋ラショーム家の当主が、深夜、自室で胸を撃たれて死んだ。庭に梯子、窓に梯子を立てかけた跡、割れた窓ガラス。状況は外部からの侵入者の犯行を物語っていたが、家族は誰も朝まで気づかなかったと主張し、それ以上訊きだそうとすると、奇妙に口をつぐんでしまう。メグレはそこにただならぬものを感じた…。
「鎮西一の忠勇、天下無双の勇士なり」と秀吉が絶賛した筑後柳河13万石の領主・立花宗茂。その生涯は実父・高橋紹運、養父・立花道雪の高潔な生き方を範とし、戦国乱世にあって、まことに誠実・清廉なものであった。本書は、この父子三様の猛々しくも清々しい生きざまと、妻との夫婦間の葛藤を見事に描出。現代人に人間の温もりをほのぼのとつたえる力作である。
純愛か裏切りか。結婚式当日の凌辱から、わたしとユウ君の物語は始まった。そして「十三番目の生け贄」という凄絶なAV作品に関わる猟奇殺人。ユウ君と再会したとき、不可解なジグソーパズルは完成した!全編に謎と伏線を鏤めた新本格ミステリの快作、驚嘆の魔術師・黒田研二の手で、メフィスト賞に誕生!第16回メフィスト賞受賞作。
燃え立つ太陽と薄明の月影、輝く天空と無限の深海の闇、苛酷な人間の運命を暗示するかのような大海原の真っ只中で起った捕鯨船ピークオッド号乗員らの惨劇。巨鯨モービィ・ディックに敗れゆく片脚の老船長エイハブ。禍々しくも、また神々しい巨大な一頭の白鯨をめぐって展開される雄大な海洋冒険小説の趣ある古典的名作を新たな読みやすい訳にしたオリジナル文庫。全二冊。
8世紀の朝鮮、武力・財力ともに新羅の王を圧倒し、朝鮮半島から日本、唐、東南アジアまで、自在に駆けめぐった海人の王国があった。皐の民と呼ばれた海の勇者たち。彼らは、陸の権力を認めず海の掟に従って生きた。圧倒的な筆力!超大型新人が描く壮大な歴史ロマン。
毒に汚された山の悲鳴が聞こえる。死んだ恋人の面影を追って訪ねた美しい山で、巨大なごみ処理センターの建設が進められていた。立ち上がった女性市議と地元の住民に、何ができるのか。真の社会正義とは?超弩級書下ろし問題作。
金の力を笠に着た札差に、知恵と度胸で立ち向かえ!上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す損料屋に身をやつした喜八郎。元上役の秋山や深川のいなせな仲間たちと力を合わせ、巨利を貪る札差たちと打打発止と渡り合う。オール読物新人賞受賞の新鋭が贈る痛快時代小説。
地獄谷温泉のそばの森で、ひとりの男と一匹の猿が、射殺された。使用された弾丸の旋条痕は、半月前に東京で射殺された若いOLにつかわれたものと一致する。ふたつの事件のつながりは?犯人はなぜ、ものいわぬ猿まで殺さねばならなかったのか…。表題作ほか、十津川警部の推理が冴えるトラベル・ミステリー傑作集。
清朝末、中国は英国商人の持ちこむ莫大な量の阿片に蝕まれ、人心は荒廃、生活は破綻に瀕していた。国を憂い民族を守るため立ちあがった敏腕官吏、林則徐と豪商、連維材。近代中国黎明期の危機とうねりを初めて小説化した名作。
ヒカル、18歳。大学受験に失敗し、やり場のない鬱屈に日常は支配されている。親に内緒で初めて幻想加速器を手に入れた。黄色いオートバイ、CB400SF。ある日、有名作家である父の盗作事件が発覚。やがて鬱屈が臨界点を超えてしまう…。そしてヒカルは旅立った。一匹狼のヤクザ鉄男とともに愛車に跨がり、風に吹かれて転がって。-剥き出しの魂たちよ、何処を目指す!?新しきモラルの楽園か、明日なき倫理の煉獄か。芥川賞作家が放つ衝撃のエンタテインメント最新長編2000枚。
「踊りは私の中の何かを激しく揺さぶり、私が抱えている名状しがたい飢えを満たしてくれる」14歳でカナダへ単身バレエ留学、プロのダンサーとして活動を始めた陽子が、かつての家庭教師で東京に住むアメリカ人の僕に語る8年間の留学生活。故郷離脱者として暮らすことがもたらす心身の揺らぎ。異文化の中で知る自分の立つべき位置。そして変貌への渇き…。国境を越える語り手と聞き手の物語。
「セックスして、お願い」。お願いです。男にも、世間にも相手にされない二人の女のいびつで切ない恋。欲望を抑えきれずに彼女たちが犯してしまう哀しい罪を、いったい誰が責められようか。あふれ出す女の本性を、男は抱えきれないー哀切の官能ミステリー。