2000年8月25日発売
盗賊の小頭、雲津の弥平次は、山奥の湯治場で思いもつかない「ひろいもの」をする。記憶を失い、何者かに命を狙われていた若い浪人、谷川弥太郎である。凄まじい剣の腕をもつ弥太郎、彼の素性は、そして何のために命をつけ狙われるのかー。時を経て江戸で再会する二人、記憶が戻らぬままに金で人を殺める仕掛人となっていた弥太郎の身を案じる弥平次、しかし彼自身もまた血なまぐさい盗賊の跡目争いに巻き込まれて行くのだった。江戸を舞台に刺客たちの激しい闘いを描く傑作時代長編。
笹尾平三郎、それが弥太郎の本名なのか。執拗に弥太郎を狙う土岐家にいったい何があったのか。命を狙われながらも、弥太郎の秘められた過去に近づいていく弥平次。一方、弥太郎は、恩人である弥平次に向けられた魔の手に対し、自らの撃剣をふるう。互いに信頼を寄せ合いながら危地をくぐり抜けていく狩人たちー。盗賊の跡目争い、御家騒動、香具師の縄張り争い、絡み合う暗黒街の欲望に立ち向かう二人の男を描いた傑作時代小説。
クラスの女生徒が家出した夏、やくざになったかつての教え子・本間伸尚が殺された。本間は21世紀を夢見て、インターネットで「ブルセラ狩り」のHPをやっていた。私立女子校の英語教師・高梨龍平は、生徒の行方を追い求め吉祥寺の街を走る。高梨を突き動かすのは、7年前のひとつの事件だった。江戸川乱歩賞受賞。
私は、運命にも、人間にも、よく服従する。それが私の性格であり、また処世の道でもあったー犬丸順吉・29歳。戦時中のささいな罪で戦犯に名を連ねることを本気で怖れたこの男、ボスの命じるままに四国に身を隠したはいいが…運命にも女にも翻弄されっ放し、とことん情けなくて、だけど憎めない。世の中の半歩後をけっつまずきながら追いかける男が体験した、世にもおかしな物語。
浮世絵の始祖・岩佐又兵衛の遺作は実在するのか?明治期、日本から持ち出された名画文集の行方と、消息を断った婚約者の謎…巧妙な美術業界の罠に導かれ、ニューヨークと京都の迷路をさまよう、涼子の孤独な魂の遍歴を描く蓮如賞受賞作家の初めてのミステリアス・ロマン。
ダブリン西郊のチャペリゾッド。雨の降る五月の夜更け、教会の墓地で埋葬に備えて墓穴を掘っていると、奇妙な穴が穿たれた謎の頭蓋骨が出土した。-上流階級を舞台とした陰惨な殺人事件、白い手の幽霊が出るという古びた館、死と再生の巧妙な筋立て…凶悪な殺人犯が舞い戻り、事件の意外な真相が明らかになる。ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』にモチーフを与え、ブロンテ姉妹に霊感を与えたアイルランド19世紀ゴシック・ホラー小説の大傑作、本邦初訳。
「好きになるということは、好きになると決めること」母性より女性を匂わせる母と、売れない春画を描く義父に育てられた姉妹ユリエとマリエ。温かく濃密な毎日の果てに、二人はそれぞれの愛を見つける。高校教師になった妹マリエは教え子のミドリ子の兄と恋に落ちるが、ミドリ子の愛人は母の恋人だった…。芥川賞作家が描く、傑作恋愛小説。
結婚七年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻を亡くし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。
19番ホールの女体にインするものは…深々と入った直刀ペニスをまたも引き戻し、つづいてゆっくり挿入、それを繰り返すと、「ああ、気持いいわー、あなたのって、チタンのデカヘッド、長尺ものみたい」と真澄夫人が呟いている。(『デカヘッド効果』より)。