2000年発売
代議士を曾祖父に持ち、「三沢の矢野様」と呼ばれる豪農の家に生まれた重也は、両親の配慮ですぐに里子に出されてしまう。本家と里子先の貧富の差に思い悩んだ幼年期、養母や親友との死別、関東大震災など、幾多の挫折を経て旧制一高、帝大へと進学。文学者を志望した重也は、フランス文学などの翻訳に精力的に取り組む一方、マルクス主義に惹かれて、共産党に入党。革命運動に身を投じるようになり、党の密命を受けて中国へ渡ることになる-。一代にして大コンツェルンを築き上げた男・矢野重也その数奇な運命を描く大河小説。
自分の理想と共産党の現実に悩み、離党した重也は、党からの激しい批判を受けながらも、地下に潜って文学活動を続けていた。地下活動の最中、ひょんなことから友人と共に再生紙工業を起こし、実業の世界へ進出。再生紙工業が成功し、企業が大きくなるにつれ、重也は自分の中の文学者としての顔と、ビジネスマンとしての顔の間にジレンマを感じ始める。そんな悩みをよそに、重也はラジオ局、テレビ局、新聞社の社長を歴任、史上空前の規模の巨大なマスメディア帝国を築いていくのだった-。マスメディア帝国はいかに構築されたか?波乱の生涯を描く大河小説。
誰も描かなかったブラインド・スポット-孤絶の空間を舞台に、音道貴子の刑事人生は最大の危機に突入した。ここは一体どこなのか。犯人グループの次の一手は何なのか。たった一人で敵と対峙する彼女の脳裏を、期待と絶望が交錯する。このデッドロックをくぐり抜ける手段が果して存在するのか。『凍える牙』に続く久々の書下し大作。
弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。
過酷なハンター試験も、9人を残してようやく最終段階をむかえた。ところが、ゴンたちの乗った飛行船が嵐のなかで別の飛行船と激突!いわくありげな13人の遭難者が同行することになった。そして、その夜ー。乗客のひとりが何者かに殺害された!犯人は受験者なのか?オリジナル・エピソードも加わって、待望の第二弾登場。
東京の明華学園に転校してきた知香は、クラスメートから予想外の歓迎をうける。久美子たちとも仲良くなり、新しい学校生活は順調に滑り出したかに思えた。しかしそこのクラスには、転校生にまつわる不気味なジンクスがあった。単なる偶然とは思いつつも、知香は不安をおぼえる。そして、運命の日がやってきたー。話題の学園ホラー、第2弾。
王女アンノワール-夜ごと男装の女剣士として賞金首を狙う彼女の目的は、幼い頃に命を救ってくれた愛する人を捜し出すことだった。唯一の手掛かりは、“船も衣服も黒ずくめの、海賊”。ついに王女は、大海原へと漕ぎ出した。行く先に巨大な陰謀が渦巻いているとも知らずに-王女と海賊の大冒険ロマン。
楽しみにしていてくれ、僕の臨終の時には素晴らしい言葉を聞かせるから-夫は妻に何を伝えようとしたのだろうか?綜合商社の役員・三村清太郎と妻・麻子はともに昭和11年生まれ。人も羨む仲の二人だったが、その結婚には、ある事故が介在していた…。夫婦という「かくも素晴らしき日々」。21世紀の小説を先駆ける傑作長編。
療養休暇中のモース主任警部の自宅を、上司のストレンジ主任警視が訪ねてきた。退職をひかえるストレンジは、在職中に未解決の事件にけりをつけたいと考え、モースに担当を命じたのだ。問題の事件-看護婦が自宅の寝室で手錠をかけられた全裸死体で発見された事件は、これといった進展もないままもはや迷宮入りかと思われていたのだが、最近になって匿名の情報提供があったという。だが、モースはなぜか捜査に消極的だった。ルイス部長刑事は、そんな上司に一抹の不安を抱くが…。英米で大きな反響を呼んだ人気シリーズ、完結篇。
ナチスの殺戮を逃れた七歳の少年ヤーコプは、ギリシャ人地質学者アトスに救われ、二人はアトスの故郷の島へ逃げた。家族を虐殺されて心に深い傷を負った少年を、アトスは深い慈愛で守り、貧しいながら豊かな学問を授ける。戦後、二人はトロントは旅立ち、穏やかな日々が続く。過去の悪夢から逃れられぬヤーコプは、アトスが授けてくれた学問に救いを見出すようになる。そして、アトスのほか唯一の理解者となる妻にも巡り合った。そしていま、ヤーコプがついに得た人生の喜びは、多の者によって新たな意味を持とうとしていた…。世界25ヵ国で翻訳され、オレンジ小説賞ほか10賞を受賞した、珠玉の大作。生きることの意味を探し彷徨する魂を、流麗な文体で紡ぐ、世界的ベストセラー。