2001年11月発売
高給をはみながら、国民銀行にたかり食いをする悪しき習慣、御身大切で、わかっていながら必要な金融施策を打ち出せず、保身に汲々とする幹部たち…中央銀行としての信頼感をすっかり失ってしまった日銀。このままでは日銀は本当にダメになる。広報課長の鷲見洋一は、行内改革のため今こそ立ち上がるべきだ、と同志を募った。まず、行内浄化、これが第一目標だ。鷲見たちは行動を開始した…。
1 パロマー氏の休暇 1・1 浜辺のパロマー氏 1・1・1 波のレクチュール 1・1・2 あらわな胸 1・1・3 太陽の剣 1・2 庭のパロマー氏 1・2・1 亀の恋 1・2・2 クロウタドリの口笛 1・2・3 はてしない草原 1・3 パロマー氏空を見る 1・3・1 昼下がりの月 1・3・2 惑星と眼 1・3・3 星たちの瞑想 2 街のパロマー氏 2・1 テラスのパロマー氏 2・1・1 テラスにて 2・1・2 ヤモリの腹 2・1・3 ホシムクドリの襲来 2・2 パロマー氏買物をする 2・2・1 鵞鳥の脂肪一キロ半 2・2・2 チーズの博物館 2・2・3 大理石と血 2・3 動物園のパロマー氏 2・3・1 キリンの駆け足 2・3・2 シラコのゴリラ 2・3・3 鱗の秩序 3 パロマー氏の沈黙 3・1 パロマー氏の旅 3・1・1 砂の花壇 3・1・2 蛇と頭蓋骨 3・1・3 不揃いなサンダル 3・2 パロマー氏と社会 3・2・1 言葉をかみしめることについて 3・2・2 若者に腹を立てることについて 3・2・3 きわめつけのモデル 3・3 パロマー氏の瞑想 3・3・1 世界が世界をみつめている 3・3・2 鏡の宇宙 3・3・3 うまい死に方 解説
恋人の裏切りに心を引き裂かれ、大学生活を捨て信州・菅平にやって来た僕。もう人を愛せない。心も、そして体も-。終わりのない痛みに閉ざされた僕が出会ったのは、信州の空のような明るさの奥にさまざまな傷を隠し持った人たちだった。愛し合い、傷つけ合い、やがて赦し合う人々が静かに、せつなく奏でる交響楽。待望の長編小説。
身上惜しまぬ希代の宴会名人、〓愁使者抱樽。アルコールの概念がなかった時代のきき酒師、宇田川小三郎。上方から江戸への新酒一番入荷を競う番船競争、正覚坊の亀。大酒合戦で一斗九升五合を呑み干した男、小山の佐兵衛。役人尻目に密造酒造りに励む白馬佐助-。江戸と美酒の香りあふれる、桁外れの大江戸酒豪列伝。
恋人の家の豪華なクリスマス・パーティ。セイジに突然告げられた彼との別れ。そこへ「きみを連れにきた」と見知らぬ男が現れて…。テキサスの石油掘削会社の末っ子セイジの興奮とときめきの物語。
あこがれ、淡い恋、繊細な女性心理のひだを、こまやかに描いた、やさしい12の小品。10年前に飛行機事故に遭った夫の遺品の中から見知らぬ女性の手紙を見つけ、その足跡をヴェネツィアに訪ねる表題作のほか、「アムステルダムの花市場」「メルヘン街道の少年」「ふたりの紫陽花」「ロダンの庭」「心の中の青い湖」など。
四十五歳の若さで逝った女性翻訳家が、娘のために遺した四巻のテープ。そこに語られる無惨な恋、許されぬ過去、そして「ひとつの死」。誰もが何かを探していたあの時代が、鮮やかによみがえる。追憶の光と影、切なさと歓びに涙がとまらない、感動の告白小説。
五人のT大生の間に生じた確執は、やがて恐しい決闘へと発展していった…。古き良き時代の学生生活と雄大な自然とを背景として、ある完全犯罪の顛末を描く名品「噴火口上の殺人」、ドンデン返しの連続で若き日の佐野洋を唸らせた「四月馬鹿の悲劇」、欺瞞を許しておけない性格の男の悲劇「真実追求家」など、戦後本格派の雄の全短篇から選りすぐった傑作、全10篇。
白装束に髭面で好色そうな大男の山伏が、羽黒山からやってきた。村の神社別当に任ぜられて来たのだが、神社には村人の信望を集める偽山伏が住み着いていた。山伏と村人の交流を、郷愁を込めて綴る時代長編。
「賭け事をする男とだけは一緒になるな。それが母の遺言でした」いけない、とわかっていても、幸せになれない、とわかっていても、どうしても好きになってしまう相手がいる。自分の気持ちもわからぬまま、寄り添っていくこともある。いつかせつない思いを抱えることになると予感していても…。港のある地方都市を舞台に、夜の街で働く秋子の、やるせなくも静かな日々を描いた、いとおしい恋愛小説。
好きな人と一緒にいるしあわせ、体をくっつけている安心、好きという思いーー。ごく普通の女の子たちのリアルな日常とありのままの恋愛、ほんとうのセックスを大事に切り取った、八つの恋の物語。
鶴屋南北「東海道四谷怪談」と実録小説「四谷雑談集」を下敷きに、伊右衛門とお岩夫婦の物語を怪しく美しく、新たによみがえらせる。愛憎、美と醜、正気と狂気……全ての境界をゆるがせる著者渾身の傑作怪談。
●北森鴻氏推薦ーー「これまでもこれからも、僕の短編ミステリの大切なお手本です」 捜査そっちのけの警部と美女の死体に張り切る鑑識官コンビの殺人現場リポート「煙の殺意」を表題に、知る人ぞ知る愛すべき傑作「紳士の園」や、往復書簡で綴る地中海のシンデレラストーリー「閏の花嫁」など、問答無用に面白い八編を収める。
義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残すことはない…。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。笑って泣ける感動の大団円。
「恋」という魔物にとりつかれた女は、ときに、自分自身でも思いがけないことをしてしまう。七々子の場合がそうだった。好きになった彼にはすでに恋人がいた。あきらめきることができない七々子のとった行動は、彼の恋人、美咲に近づき、友達になることだった。嘘をつき、おとしいれ、そうまでして手に入れた恋。一途に思う心には偽りはなかったはず、だけど…。女心の深淵をえぐる恋愛長編。
タクシー運転手の野上雄貴は、GCS幼児教育センターから入社要請を受け、不審を抱く。GCSが発明した「金のゆりかご」と呼ばれる機械で育てられ、一時は天才少年ともてはやされたが、能力の限界を露呈し見捨てられた自分。真意を探るうち、子供が次々と精神に錯乱をきたした事件が浮かび上がる。やがて、ある母親が失踪、殺人が…。先端科学に切り込む新感覚ミステリー。