2001年8月発売
応仁の乱後のいよいよ群雄割拠。大和の山中に隠棲する天涯孤独の時宗の僧・天門院洙令は、大和一国の支配を狙う越智家栄に招かれ、軍配を渡された。英雄不在の曖昧模糊とした時世のなかで、洙令は軍配者としてどう戦い、人間としていかに生きるのか。自己の前途に明瞭な道すじを探し、確固たる成果を残そうとするなか、時勢はいよいよ混乱を深めていくー。社会の構成員としての個人のあり方を見つめなおす意欲作。
千鳥姫彦はもどかしい。大学のサークルでのサヨク=左翼活動では成果があがらず、美少女みどりとの恋は思い通りに進まない。とまどうばかりの二十代初めの混沌とした日々を、果てしない悪ふざけでごまかしながら漂い続ける姫彦と友人たち。若く未熟であるがゆえに、周囲との距離感が測れず、臆病で自虐的にならざるをえないー、そんな孤独な魂たちが、きらめく言葉の宇宙に浮遊する。
突然出会った父と娘。二人にふりかかる難題と謎。ピンク映画出演作500本、アダルトビデオ出演作300本、アダルトビデオ監督作20本、Vシネマ出演作50本-。上記のようなキャリアを重ね、世の中のダークサイドを知り尽くしたカリスマ的カルト俳優・監督が、まったく新しい親子関係を軸に、みずみずしくもスリリングに描ききったハートウォーミングな異色ミステリー。
最高権力者の死、解散風、内閣・党役員人事、迷走国会、本格政権、広がる疑惑、後継総裁選び、改進党分裂…。伏魔殿で繰り広げられる政治家たちの暗闘劇。新人作家が放つ政界ノヴェル!権力という魔物にとり憑かれた政治家たちの生態をえがく近未来政界フィクション。
悩み…それはプラス性とマイナス性を持つ心の二面性から生じる問題。ユリちゃんの悩みは歪んだ人間関係「イジメ」『“問題の原因”と“問題自体”は違う』!?謎の心の相談請負人ゴンさんが悩みの真相に迫り心の問題を解き明かす。
女子プロレス界きっての強者・火渡抄子。人は彼女を「ファイアボール」と呼ぶ。火渡に憧れ入門し、付き人になった近田。仲の良かった同期・与謝野の活躍を前に、自分の限界が頭をかすめる。そんな折、火渡が付き人を替えると言い出した。近田は、自分にどうケジメをつけるのか。女の荒ぶる魂を描いたシリーズ完結篇となる連作短篇集。
長生きに異常な執念を燃やす島のオバァ、フジは、九十七歳の生年祝い「風車祭」を無事に迎えようと、家族や島人を混乱の渦に巻き込む。一方、神事を怠り危機に瀕した島の運命は?島の祭や呪術を背景に、オバァや巫女、六本足の妖怪豚が大活躍する、生命力とユーモア溢れる壮大な物語。98年度直木賞候補作。
無実の死刑因を救い出せ。期限は3ヵ月、報酬は1000万円。喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は、記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすことだった。最大級の衝撃を放つデッド・リミット型サスペンス!第47回江戸川乱歩賞受賞作。
根津愛が桐野とともに訪れたのは奥会津の秘境にある友人の別荘。そこでは十年前に不可解な密室殺人事件が起きたという。現場となった離れは、急斜面の山の途中に洞穴をくりぬき、そこに埋めこまれたかたちの、窓のないコンクリート製の箱のような部屋。唯一の出入り口は絶対に細工が不可能という特殊な構造をしていた。そこに横たわる他殺死体。犯人の姿はどこにもない。完璧な密室から、犯人は一体どうやって脱出したのか。この謎が解けないうちに、根津愛は突然失踪してしまう。拉致されたのか。必死で捜し回る桐野だったが、その彼の前に、また新たな惨劇が…。
“桜桃忌”に出られなかった事から太宰治を回想する「玉川上水」、敗戦直後郷里に疎開した頃の日常を描き飄逸味を漂わせた「耳かき抄」。表題作をはじめ「逢びき」「下駄の腰掛」「山つつじ」「川風」「柚子」「御水取」など身近の事柄を捉えて庶民のうら哀しくも善良でしたたかな生き方を綴った諧謔とペーソス溢れる木山文学の真骨頂、私小説的作品を中心に新編集した傑作十一篇。
骨太の書下ろし傑作エンターテインメント!鬼気迫る、新田次郎賞作家の新境地。死を覗く女あり。東北の地、谷間の小村。魅惑の村おこしプランは、古の採燈祭を復活させた。忍び寄る何物かの群。生と死の臨界は、驚愕と戦慄の真実によって破られる。
津元陸耶は新しくクラスメートになった泉川京に告白されてウキウキ。シャイなくせにまっすぐ人の目を見つめて話す京の視線に陸耶はヤラレていたのだ。要領よく恋愛のおいしいところだけを摘んできた陸耶に本気の恋が訪れた予感。真面目な京を無理やり誘ってその気にさせて、コトにおよばせることができた陸耶はご満悦。陸耶なりに真面目な恋愛をはじめるが、過去の経験はなくならない。嫉妬をぶつけられてこれ以上深入りするのを恐れた陸耶は、京をつきはなそうとするのだが…めげない京は強行突破。