2001年発売
「蕭々館」で夜ごとくりひろげられる、最後の「高等遊民」たちの幸福なひととき。芥川龍之介、菊池寛、小島政二郎-「大正」という時代に、青春を共にした三人の作家を描きながら、立ち去ろうとする一つの時代への思いを綴る傑作長篇。
伝奇ホラー作家、朝松健を襲った奇怪な災厄。失踪した編集者、那須蔵人の手記が、忌まわしい世界への扉を開く。突然目の前に現われ、不可解な警告を発する黒衣の男たち。その正体は?その目的は?著者自らが封印した暗黒の書が、大幅な加筆と、牧野修の解説を得て、13年ぶりに闇底からよみがえる。
父を知らず、調教師の祖父に育てられ、新人騎手として修業を積む高志。馬の故障を次々と癒し、周囲を驚かせる正体不明の厩務員の過去に、彼は疑惑を抱くが…。競馬、競輪、競艇、オートレース。ファンの夢と期待を背に一瞬の勝負に挑むプロフェッショナルたち。彼らの潔くも厳しい世界を圧倒的な迫力で描く物語。
邦銀ニューヨーク支店の花形ディーラーが高層ホテルから身を投げた。その死の直前「N.U.H.」というメッセージを受け取った旧友、芹沢は、真相を探るうち、ウォール街で辣腕を振るうトップセールスウーマン、州波に出会う。「あんな銀行なんかつぶれればいい」。彼女は邦銀に深い恨みを抱いていた。日本金融界の闇を抉る問題作。
山一証券の自主廃業など相次ぐ金融破綻に、効果的な経済政策を打ち出せない政府、プライドだけの大蔵官僚、不良債権隠しに走る銀行。恋人の死の真相に迫るべく奔走する州波は、そのキャリアと私財の全てをなげうって、芹沢とともに驚くべき秘策を実行する。すべての金融マンに捧げる著者渾身のミステリー。
10歳の少女マルティーナをはじめとする4人の子どもたちは、年上の少年ミルコに誘われて、打ち捨てられた倉庫に集まった。そこで彼らが見たものは、数冊のポルノ雑誌とそれを見ながら股間に手を伸ばすミルコの姿。はっきりとはわからないながらも、マルティーナは太もものあいだに不思議なおののきを感じる。そして彼らの秘密の遊びがはじまった。少しこわくて、だけどすてきな遊び。おとなの目の届かないその場所で、お菓子を持ち寄り、裸で寝そべって、ときに雑誌の真似事をした。だが、その真似事は、歯止めのないまま次第にエスカレートし、ついには恐ろしい出来事が…。弱冠27歳の若手女性作家がみずみずしい感性で描きイタリア文学界を震撼させた、衝撃の問題作。
夢と野望を胸に渡った満洲の地。広大な原野に立ちすくみ、馬賊の襲撃に怯えつつも、森田勇太郎は着実に地盤を固め、森田酒造を満洲一の造り酒屋にまで成長させていく。だが、「同じ着物は二度着ない」とまで言われた栄華も長くはなかった。夫・勇太郎の留守中、ソ連軍の侵攻と満人の暴動に遭い森田酒造は崩壊。妻・波子は二人の子供を抱え、明日の命すら知れぬ逃亡生活を余儀なくされる。夫との再会を信じ、ひたすら故国を目指す波子。しかしこれは、波子を呑み込む過酷な運命の始まりに過ぎなかった。母、満洲、極限状態。直木賞受賞第一作。
果華の絶頂から一転、奈落の底へ。頼りにしていた夫との再会も束の間、勇太郎は強制労働に取られ、病で命を落としてしまう。すべてを失い、夫の屍を乗り越え、食うや食わずで二人の子供を守る母・波子。そんなとき、密かに思いを寄せていた男・氷室の消息が聞こえてきた。再会に胸躍らせる波子だが、彼女の前に現れたのは、阿片に体を蝕まれた廃人同然の男だった…。母として子供を守るか、女として一人の男を愛するか?極限の選択が波子に迫る!家族、愛、究極の選択。自伝的大作。
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理ー非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
捜査のために、大財閥に繋がる女性と婚約をした片山刑事。事件はめでたく解決したが、婚約は解消できなかった! そしてやってきた結婚式当日。このまま片山は結婚してしまうのか!?
自由と、豊かな暮らしにあこがれるベトナムの若いシクロ乗りたちの前に、組織に追いつめられた日本人ヤクザ・タチバナが現れた。波濤の先にあるのは、禍いか希望か?夢を追って命を賭けるか、愛を求めて身を捨てるか!2年ぶりの長編、圧倒的迫力のアジアン・ノワール巨編、ついに刊行。