2001年発売
維新後も龍馬の妻として生きたお龍。三味線を抱いて高杉晋作の墓守を続けるうのー。幕末動乱の時代に、駆け抜けるように死んでいった志士を愛してしまった女たち。新しい時代にとけ込めず、世間から逃げるように生活する女たちの胸の中に生き続ける男の姿。その想い出が鮮烈であるがゆえに悶え苦しむ女たちの悲しい物語。
“魔性の女”ズィーニアの正体は?──人生を弄ばれた、三人の女性に執拗に取り憑くズィーニアの影が、再び三人を危機に追い込む。その結末は……。 ──アトウッド自身「自分の作品の中でも、いちばん翻訳しにくいかもしれない」という翻訳者泣かせの労苦にもかかわらずやってこられたのは、作品の面白さである。アトウッドの手法はユニークである。推理小説ではないが、次に話がどう展開するのだろうか、と読者を先に急かせるサスペンスがある。読み手側がこうなるのではないか、と思いながらもとんでもないどんでん返しがある。結末についてはなかなか分からない。エンターテイメント的要素もあるが、心理描写はさすがで、哲学もあり、知的小説である。暗いテーマを扱いながらも、辛味の効いたウイットとユーモアで軽みをだす。さすがである。彼女の中では物語が枯渇するということがないのではないかと思う。(「訳者あとがき」より)
失踪した男の捜索を依頼された上海生れの浦上隆志。男の行方を追ううち、浦上は日中戦争の裏面を探る運命に迷いこむ。激動の歴史に隠された出自の謎を識る感動の長編快作。多感な青春を描く著者自伝的作品「青雲の軸」を併録。
偶然か故意か?次々に不慮の死をとげる米国の名門一家。「一年のあいだに家族5人もが変死するなんてぜったいにおかしい」謀殺説を信じて調査にのりだしたうれっ子ニュースキャスター。彼女の行くてをはばむものは?世界の見えないところで、こんな恐ろしいことがおこなわれている。
アカザ・クリスティーの代表作として、またミステリー史上最大の問題作として知られる『アクロイド殺害事件』の犯人はその人物ではない-文学理論と精神分析の専門家バイヤール教授が事件の真相に挑戦、名探偵ポワロの「妄想」を暴き出し、驚くべき(しかし十分に合理的な)真犯人を明らかにする。「読む」ことの核心に迫る文学エセーとしても貴重なメタ・ミステリー。
奉行所検屍役・美馬正哲。身投げや殺し、首縊り…。屍の末期の無念を解き明かす彼を、ひとは「おろく医者」と呼ぶ。武器は、遠く紀州は華岡青洲に学んだ最新の医術!江戸の「法医学者」は恋女房、産婆のお杏とともに、八百八町の底に渦巻く愛憎に立ち向かう。人の生と死に触れる夫婦を描く傑作事件帖。
通りで遊んでいた3人の少年に近づいてきた車から降り立ったのは、警官を思わせる男だった。男は3人を叱りつけ、デイヴを車に乗せると、相棒とともに走り去る。あとに残されたジミーとショーンは、遠ざかる車の中に囚われたデイヴを呆然と見送った。四日後、誰もが内心ではデイヴの帰還を諦めていた時、彼は自力で脱出してくる。だが、囚われの4日間に何があったかは、誰の目にも明らかだった。ジミーもショーンも、それを痛いほどに感じていた。25年後、いったんは犯罪社会に身を落とし、今は更生したジミーを、悲劇が襲った。彼の19歳の娘が、何者かに惨殺されたのだ。事件の捜査を担当するのは、刑事となったショーン。そして捜査線上には、かつての友人デイヴが浮上した。必死の捜査を展開するショーン、犯罪社会のコネを使って復讐をはかるジミー、妻にも告白できない秘密を抱えるデイヴ。そして、彼らの家族もまた苦悩する。親を、夫を、子供を、友人を失う畏れに苛まれながら。新たな悲劇の幕は、すでに上がっていた…。
伝説の女テロリストと少年の交流を描く「ブレイン・キッズ」、瀕死の王国を揺るがす倒錯の愛憎劇「夜舞」、黙示録巨篇『バベルの薫り』の主人公、姉川孤悲のサイキックアクション「ソドムの林檎」、猥雑さと純粋さが同衾する残酷な愛に彩られた、危険なテロ小説集。
今川家の目付・深瀬勘左衛門は、重臣の一家皆殺し事件を必死に追いかけたが、なかなか犯人を挙げられなかった。一方、深瀬の幼なじみの多賀宗十郎も度々命をねらわれる。そんな中、義元は浅間大社でお花見の宴を開催した。宗十郎も警固に当たったのだが…。「今川家の家中という歴史設定を馴染ませ、さらに人物に感情移入をさせる手腕はたいしたものだ」と選考委員の福田和也氏に絶賛された、第一回角川春樹小説賞特別賞受賞作、遂に文庫化。
宇宙都市『オデッサ』の太陽が爆発する!?この事態によって、オデッサ代官華表はオデッサを占領下に置いていた宇宙犯罪組織龍党と手を結び、10万人の市民を脱出させるべく行動を開始する。残された時間は1ヶ月しかない。だが龍党と手を結ぶのを良しとしない筆頭内与力コーデリアはこの情報を秘密裏に那国へ送信する。那国防衛軍は艦隊を派遣するが、不可解なことにこの脱出船団を撃破する作戦を発令した!オデッサに未来はあるのか。