2001年発売
わたしは銀座のホステス。わたしは韓国人。帽子職人だった母が死んだとき、お得意だった斎藤家のお屋敷に最後の帽子を持って行く。斎藤家の一人息子の誠は、わたしの幼なじみだ。その誠からの求婚。しかし彼がわたしの職業と国籍について「口をすべらせるな」と言った瞬間、わたしは誠の“姿”を永遠に見失った。柔らかな心で、現実を見据えた力作。他に短篇6本収録。
七十七歳の卯木督助は“スデニ全ク無能力者デハアルガ”、踊り子あがりの美しく驕慢な嫁颯子に魅かれ、変形的間接的な方法で性的快楽を得ようと命を賭けるー妄執とも狂恋とも呼ぶべき老いの身の性と死の対決を、最高の芸術の世界に昇華させた名作。
物売りの声が響く、水の町・江戸。藩屋敷に潜り込んだ浪人や、池の中に人を引きずり込む化生の正体をさぐり、異端の忍術集団「猿者」と戦い、好色絶倫の藩主の義母が愛用した張形や、将軍所望の名刀の行方をさがす。享保の世を伝右衛門が駆ける第2弾。
「今回の旗揚げに失敗すれば、おれの政治生命も終わりだ。もう引き返せない」-竹下登は敢然とオヤジに反旗を翻した。最後に笑うのは、橋本龍太郎か小沢一郎か、それとも野中広務か?裏切りと恫喝、変節と野合-巨星、墜つ。賽は、投げられた!「角栄」政治を継承する男たちの生き残りを賭けた現代版三国志。
新世紀の幕開けを飾る感動のSF超大作。英国が世界に誇るSF作家ブライアン・オールディスが、人工知能を備えたロボット少年と家族の“愛情”とは何かを問う珠玉のSF小説。映画原案となった表題作『スーパートイズ』3部作を始め、近未来を描いた秀作短編21作品を完全収録。鬼才スタンリー・キューブリック監督との出会いから脚本化の作業についてなど、初めて明かされる『A.I.』製作秘話も収録。
昭和初年から平成の時代へ。なぜ、こんなに大勢の人が死ななければいけないのか。平和だが荒廃した現代への失望。燃え尽きた男は歴史の真実を語った。庶民から見た東京大空襲に迫る畢生の書下ろし1200枚。
少女がはじめて知った性の喜び。それを鞭で罰する父親、二人を鍵穴からのぞく妹、その後ろに立つ母親。宣教師としてメキシコに渡った文化人類学者は、長女と土地の少年との恋を、キリスト教的立場から厳しく折檻した…。
「赤壁」の後、最強の騎馬軍団と後漢の献帝を擁し、再び天下統一を目指す魏の曹操。周瑜なき後、魯粛、呂蒙と無敵の水軍で江南を固める呉の孫権。荊州に足掛りを得、さらに入蜀を果たす劉備と孔明。天下は三国鼎立の時代へ-戦いの焦点は荊州争奪へと移る。勇将・関羽は北上、魏を攻めるが、非業の戦死を遂げる。そして、乱世の姦雄・魏王曹操を襲う突然の死。呉の社稷の臣・呂蒙も、また。次々と舞台を去ってゆく巨星たち。
人は死ぬものなのだと知ったのは、カレーライスを食べた後だった。その死が僕とカレーを結びつけ、もう一つの死が僕の背中を押した。長く奇妙なその旅に、僕の平穏な生活は丸ごとのみ込まれていった。それでも僕は、カレーライスが大好きだ。カレーライスを作る時、無闇やたらと幸せな気分になることがある。僕らみんなが、何か大きなものに包まれているような気がするのだ。史上初、大盛カレー小説!富士・米国・印度・琉球を縦横無尽、ボリューム満点1300枚。
SHIBUYA…それはイナカモン立入厳禁の超アーバン・タウン。上京十余年目にして、ついに渋谷デビューした池袋系小説家が幻視したものは?インターネットカフェ、西麻布ナイトクラブ、国際インテリ集合パーティー、最先端無国籍レストラン等々、テクノポリスを魔界に変える新文学の誕生。
イギリスの高貴なる趣味人にして美食家が、南仏プロヴァンスを舞台として語る四季折々にふさわしきメニューの数々、幼少の甘き思い出。ブリニのサワークリームとキャヴィア添え、仔羊のロースト、桃の赤ワイン漬け、そして幾多の種類を誇るキノコを忍ばせたオムレツ…その絢爛たるレシピのあとにあなたを待つものとは?英文学界・料理界を騒然とさせた問題作。ウィットブレッド処女長篇小説賞受賞。ベティー・トラスク賞受賞。ホーソーンデン賞受賞。ジュリア・チャイルド賞受賞。
華やかに幕開けした新世紀。だがその初頭、日本の各地で奇妙な出来事が次々と起きていた。すべての事件には、突然舞い込んだ奇妙な手紙が関わっていた…!気鋭の本格推理の旗手6人が、不可解な“手紙”をもとに趣向を凝らした珠玉の連作推理の傑作。
ベトナム特儒に沸く横浜港に流れついた四人の男。ガン、サクジ、トミヤス、キサン。彼らの遊びはきまって一人が抜ける三人麻雀だった。あてどのない流謫の日々、つかのまの花見の宴。いつも男たちの胸に痞える大きな石のようなもの。悲しみと寂寥の正体は何なのか。男たちの流浪を描く傑作長篇小説。
知らなかった。祖国を永久に喪失しようとは…「わたしたち、プラハで知り合いになったのでしたね?まだ、わたしのことを憶えていらっしゃる?-もちろん」亡命していた男と女はパリの空港で再会した。まだ若く魅力的な女イレナはパリから、かつてのプレイボーイでもはや初老の獣医ヨゼフはデンマークから、20年ぶりの故郷へ「帰還」する旅だった。そしてそれぞれの故郷に帰っていくふたりを待ち受けていた残酷で哀切極まりない運命とは…。
物語は2008年のアメリカ。世界有数のバイオテクノロジー会社とFBIの女性長官は〈良心〉というプロジェクトで、男性のみが有する犯罪誘発遺伝子を破壊するため、特殊なウイルスを開発しようとする。それにより、暴力犯罪を劇的に減少させようというのだ。しかしFBI特別捜査官デッカーは、そのプロジェクトの被験者を密かにDNA鑑定し、遺伝子が異様な形で改変されていることを知る。やがて、ウイルスに感染した男性たちが次々と変死していく。事件の裏では「クライム・ゼロ」という恐るべきシナリオが進行していたのだ。悪は根絶されるべきなのか?ヒトゲノムがもたらすユートピアの悪夢を描いた傑作冒険ミステリー。