2001年発売
時は二十五世紀。人類の文明は失われ、心を読む“意志の力”を獲得した蜘蛛が支配する地球。人間たちはその下で、下僕または奴隷として暮らしている。砂漠で育った少年ナイアルは、ひとり人類の自由を求めて闘いを始め…。“人間の意識の在り様”を問うC・Wの思想の集大成、代表作。
ある雨の降る晩。突然、僕は佐々木千尋を思い出した。19歳だった彼女と僕がテーブルに向き合ってコーヒーを飲んだこと。彼女の亜麻色の髪、腋の下の柔らかそうな肉、八重歯、透けて見えたブラジャーの色や形…9年も前の、僕の人生のもっとも幸福だった瞬間ー。そして僕は、佐々木千尋を捜してみることに決めた。もう一度、幸せの感触を思い出したいと願ったー。それは盲目的な純愛なのか?それとも異常執着なのか?気鋭が書き下ろす問題作。
作詞家として活躍する著者のもとへ、十六年間絶縁状態だった兄の死の報せが届いたー。胸中によみがえる兄の姿。敗戦後に故郷小樽で再会した復員帰りの兄は、どこか人が変っていた。以来、破滅的に生きる兄に翻弄され、苦渋を強いられた弟が、兄の実像と兄弟のどうしようもない絆を、哀切の念をこめて描いた記念碑的傑作。
高瀬舟で江戸に戻る途上で米屋の主人が変死を遂げた。折しも古河藩から迎えた養子と娘の祝言が決まった矢先の出来事だった。東吾が探っていくうちに、主人の懐に百両もの大金が残されていたことが判明。果たして何のための金だったのかー。東吾の推理が冴えわたる表題作ほか「伝通院の僧」「名月や」「紅葉散る」など全八篇。
ある町に、一週間に一日開く映画館があった。そこでは昔の日本映画ばかり、かけていた。町の人は、氷の冷蔵庫を使い、ラジオの歌謡曲を聞いていた。私はその町で、まぶしい人に出会った。-懐かしい人の、懐かしい物語。
“百発百中のゴダール”は素晴らしい泥棒だ。その偉大な頭脳は、すべての可能性を予測し、あらゆる不可能を可能にする。水も漏らさぬ包囲網も難攻不落の金庫も、彼の行く手を阻めはしない。あるときは侵入不能の大邸宅から神秘の宝石ホワイト・ルビーを盗み出し、あるときは最新の防犯システムを破壊してウォール街一帯を大混乱に陥れ、またあるときは合衆国貨幣検質所からタンク一杯の黄金を奪取する。その華麗にして大胆な手口は、まさにひとつの芸術だ。20世紀の初め、世界の首都ニューヨークに君臨した怪盗紳士ゴダールの痛快きわまる冒険譚、全6篇を収録。
31世紀初頭、海王星の軌道付近で奇妙な漂流物が発見された。それこそは、宇宙船ディスカバリー号の船長代理フランク・プールだった。はるか1000年前、宇宙船のコンピュータ、HAL9000によってディスカバリー号から放りだされたプールは、冷凍状態で星の世界へ向かっていたのだ。地球の軌道都市スター・シティで蘇生させられたプールがたどる究極にして最後の宇宙の旅とは…『2001年宇宙の旅』に始まるシリーズ完結篇。
対日講話条約の調印された昭和二十六年、聖路加病院にほど近い湊町に運送店の放蕩息子・小原はバー「オハラ」を開業した。空襲で両親を失った岩佐慎二は、小原との丁半博奕で負けて、この店を手伝うことになった。ストリッパー、チンピラ、ダンサー、ジャズシンガー、元豪華客船の楽士…「オハラ」の客はさまざまだが、それぞれの切ない想いを胸にポーカーに人生を賭ける。
鷹狩りの一団の中でひときわあでやかな貴婦人が、挨拶に向ったサンチョ・パンサに言う。「あなたの御主人というのは、いま出版されている物語の主人公で、ドゥルシネーア・デル・トポーソとかいう方を思い姫にしていらっしゃる騎士ではありませんこと」。
物語も終盤にさしかかり、ドン・キホーテ主従は、当時実在のロケ・ギナール率いる盗賊団と出会い、さらにガレー船とトルコの海賊との交戦を目撃することになる。さて、待望の本物の冒険に遭遇したわがドン・キホーテの活躍は…。
沢木嘉瑞は中学3年生。幼馴染の西原高敏とは幼稚園からの因縁で、じつは嘉瑞は出来る限り高敏と関わりたくないと思っていた。なぜなら嘉瑞は人知れず、恐るべきセクハラを高敏にされ続けていたから…。さらに高敏は嘉瑞に「好きだよ」とか「かわいい、嘉瑞」とか、意地悪なことを言って嘉瑞を不安にさせるのだが-。初のゴールデンコンビによる学園LOVEノベル誕生。
「これは事故なんですー」男はそういい残し、亜由美の目の前で飛び降り自殺した。そして彼の妹も、団地の公園で血を抜かれ殺された。まさか、吸血鬼のしわざ!?いやいや、どうも“吸血鬼みたいな女”が怪しいらしい…。亜由美は愛犬ドン・ファンを引き連れ、新米主婦に扮し潜入捜査を開始する!表題作のほか「花嫁たちの名誉」を収録。大人気、花嫁シリーズ第11弾。
ジントとラフィールを乗せた軽武装貨客船“ボークビルシュ”は、一路ハイド星系めざし平面宇宙を航行していた。“三カ国連合”艦隊の撤退により帝国領に復帰したハイド星系を、ジントが伯爵として正式に統治するためだ。だが、故郷である惑星マーティンの領民政府は、頑強に帝国への帰属を拒んでいた。一方、新たな艦種ー襲撃艦によって構成された第一蹂躙戦隊もまた、戦技演習のためハイド星系へと向かっていたが…。
「プラハの春」から半年後。外交官・堀江亮介は、初恋の人「リョウ」への想いから失語症になったシルビアと再会。言葉を取り戻した少女を「もう逢えない」と突き放す。帰国後結婚した亮介だが、五年後シルビアの住むDDRへ赴任することにー。一方、ソ連崩壊を予測する秘密報告をめぐり東西両陣営では様々な憶測が飛び交っていた。東独を舞台にした国際政治サスペンス、哀切なラブロマンス。