2002年11月15日発売
所はのどかなハーフォードシア。ベネット家には五人の娘がいる。その近所に、独身の資産家ビングリーが引越してきた。-牧師館の一隅で家事の合間に少しずつ書きためられたオースティンの作品は、探偵小説にも匹敵する論理的構成と複雑微妙な心理の精確な描出によって、平凡な家庭の居間を人間喜劇の劇場に変える。
オースティンにとっては「田舎の三、四軒の家族こそが小説の恰好の題材」なのだという。ベネット一家を中心とする恋のやりとりを描いたこの作品においても、作者が最も愛したといわれる主人公エリザベスを始めとして、普通の人々ひとりひとりの個性が鮮やかに浮かび上がる。若さと陽気さと真剣さにあふれた、家庭小説の傑作。
明治四一年、自然主義の文壇を一撃、魅了した短篇集。シアトル着からNY出帆まで、文明の落差を突く洋行者の眼光と邦人の運命が点滅する「酔美人」「夜半の酒場」「支那街の記」-近代人の感性に胚胎した都市の散文が花開く。『ふらんす物語』姉妹篇。
明治四〇年七月、二七歳の荷風は四年間滞在したアメリカから憧れの地フランスに渡った。彼が生涯愛したフランスでの恋、夢、そして近代日本への絶望ー屈指の青春文学の「風俗を壊乱するもの」として発禁となった初版本(明治四二年刊)を再現。
ローマ法博士会で働きはじめたデイヴィッド。少女のようにあどけなく、愛らしいドーラと出会い、すっかりそのとりこになってしまう。久しぶりにセーラム学園時代の旧友トラドルズにも再会したデイヴィッドだったが、そうこうするうちに、エミリーが…。
東京から、父のふるさと、瀬戸内の小さな町に引越してきたヒロシ。アポロと万博に沸く時代、ヒロシは少しずつ成長していく。慣れない方言、小学校のヤな奴、気になる女の子、たいせつな人との別れ、そして世の中…。「青春」の扉を開ける前の「みどりの日々」をいきいきと描く、ぼくたちみんなの自叙伝。
超一流の特殊効果技師が、得体の知れぬ凶器によって全身を細かな砕片にまで分解されて殺された。犯罪心理学者のギデオン・ウルフ博士は、彼の遺した一枚のディスクをその妻から手渡されて助けを求められる。そのディスクには三年前の合衆国大統領暗殺の瞬間の映像が収められていた。それは撮影者不詳のまま一年前に突然世間に流れ出た映像で、すでに世界中の誰もがいやというほど目にしたものだった。だが、ディスクに収められていたのはそれだけではなかった。そこには問題の映像が巧妙に偽造されたものであるという証拠ばかりか、驚愕の事実までもが隠されていたのだ。それを目にしたギデオンは戦慄を覚え、友人の私立探偵とさらに調査を進めようとする。だがその矢先、突然の銃撃を受け友人は殺されてしまった。単身、真相究明に乗り出したギデオンは、事件の陰に歴史を覆しかねない恐るべき陰謀の存在を感じ取るが…。歴史サイコ・サスペンス『エイリアニスト』で注目を浴びた著者が、歴史とテロリズムについての長年にわたる研究と考察をもとに、壮大無比なスケールと想像を遙かに超える展開で描き上げた近未来スリラー。
季節のバランスが崩れ、夏と冬ばかりが何年も続く「七つの王国」。かつての王ターガリエン家を退位させてから、スターク家、バラシオン家、ラニスター家ら王国の貴族たちは不安定な休戦状態を保ってきた。ところが、現在の王ロバート・バラシオンが幼なじみのエダード・スタークに補佐役「王の手」を任命してから状況は一変する。首都キングズランディングで渦巻く王権を巡る貴族たちの陰謀は、エダードとスターク家の子供たちを次第に巻きこんでゆく。一方、南方の草原では「ドラゴンの子孫」を名乗るターガリエン家の末裔が騎馬民族と結託して、王座の奪回を狙っていた。また王国の北側を守っている「壁」の向こうでは、人知を超えた邪悪な力が蠢き出し、七王国に長く厳しい「冬」の予感が漂い始める…。ローカス賞受賞の大河ファンタジイ「氷と炎の歌」、ついに日本上陸。
大狼をともなって「七つの王国」各地に散ったスターク家の子供たち。サンサとアリアの姉妹は、「王の手」に任命された父エダードに連れられ、首都キングズランディングに赴く。長子ロブは、ブラン、リコンとともに、領地ウィンターフェルにとどまる。そして、白い大狼を連れた私生児ジョンは、極北の黒の城に向かい、王国を北方勢力から守る夜警団に加入した。前任の「王の手」殺害問題を解き明かそうとするうち、王家に関するある重大な秘密に行き当たったエダード。だが貴族たちの思惑入り乱れる中、彼の上に過酷な事件が次々と降りかかる!「七つの王国」の玉座の行方は、そしてスターク家の人々の運命は、果たして?大ベストセラーとなったファンタジイ・シリーズ、瞠目の第一弾。
若い女の悲鳴が、凍てついた六本木の裏通りに響き渡った。東京地検の最上僚は、二人組の男に連れ去られようとしている女を救い出す。折しもIQの高い美女が拉致され、胎内から卵子を抜き取られる事件が頻発していた。闇の不妊治療グループの犯行なのか?早速、最上は調査を開始するが、敵の巧妙な罠に嵌り、絶体絶命のピンチに…。白熱するシリーズ第三弾。
遠い昔から海上貿易の要として繁栄し「海の宝石」と称えられてきた美しい都市。ですが…それも今は昔。十年ほど前に起きたドラゴンの襲来で、街は本来の輝きを失ってしまったのです。トリスティアの人々は、街の復興に一生懸命励みました。ですが、やることなすこと、すべて裏目。かえって街はさびれる始末。万策尽きた街の人々は、数々の滅びかけた都市を甦らせたという、伝説の発明家「大工匠プロスペロ・フランカ」にトリスティアの再建をお願いすることにしました。そして、待ちに待った大工匠プロスペロ到着の日…街の港に降り立ったのは、たったひとりの女の子だったのです。プロスペロは自分の代わりに、新米工房士のナノカをよこしてきたのでした。
右の乳房に癌を発見された47歳の看護婦中条志津は、かつて犯した罪の報いとしてこれを甘受する。遠からぬ死を予感した彼女は、ある決意を秘め、罪の共犯者である外科医佐倉修平に手術を求めて秋田の鄙びた鉱山町に彼を訪ねていく…。