2003年発売
19世紀末に足跡が発見されて以来、何度も目撃されているというヒマラヤの住人・イエティ。自然の摂理に従ったその生き方は潔く、哀しい。「何のために生きるのか」を問うニュー・ファンタジー。
バカンス帰りの英国女性アイリスが、特急列車で知り合ったミス・フロイ。だが彼女は疾走する列車内で突然姿を消す。もしや彼女の身になにかあったのでは、とミス・フロイを捜すアイリス。だが、他の乗客は口を揃えてそんな乗客などいなかったというのだ。アイリスは必死で彼女の存在を証明しようとするが…。孤立するアイリスに、列車内に張り巡らされた陰謀の陰が迫る。緊迫するヨーロッパ情勢を背景にしたサスペンス・ミステリの古典的名作。ヒッチコックの映画化で日本でも公開された名画の原作、待望の翻訳ついに登場。
調首子麻呂は百済からの渡来系調氏の子孫。文武に優れ、十八歳で廏戸皇太子(聖徳太子)の舎人になった。完成間近の奈良・斑鳩宮に遷った廏戸皇太子に、都を騒がす輩や謀叛人を取り締まるよう命じられた子麻呂は、秦造河勝や魚足らとともに早速仕事に取りかかるが、その矢先、何者かが子麻呂の命を狙う。
母親と二人暮らしをしていたまちるははたちの誕生日直前、死んだと思っていた父からマンションを相続する。元恋人の幼なじみや、父の同居人だった女性との奇妙な友情。新しい部屋で重ねる日常。少しずつ自立していく、まちる…。諦念とユーモアをやわらかな会話で紡ぐ秀作。第26回すばる文学賞受賞。
新幹線に乗り遅れたと、東京駅から新潟までタクシーを飛ばした女は、好物のはずの夕食の蕎麦をなぜ残したのか?-「乗り遅れた女」。深夜タバコを買いに出、交通事故に遭った男の妻とその犯人は、なぜ監察医に会いに行ったのか?-「三分のドラマ」。もしかしたら犯人は私だったかもしれない…。身近で緻密なミステリー6編。
京のほとんどを焼きつくした天明の大火。この火事で宗徳の止住する地蔵寺も焼け失せた。そんななか、路傍の石地蔵に手を合わせる老人と幼い少女。彼らは何を祈ったのだろう。紀州犬の豪にそのことを知らされた奉行所同心・蓮根左仲は羅宇屋の与惣次に石地蔵を見張らせ、女絵師・お琳、宗徳と共に二人の周辺を探る…(「土中の顔」)。お馴染み、闇の仕事師たちが悪に挑む時代連作集。大好評シリーズ第三弾。
三つの物語からなる新感覚ミステリー。死者の世界を映す赤い瞳が真実を照らす。死者の魂を見ることのできる赤い隻眼をもって生まれてきた、斉藤八雲。何故自分の瞳は赤いのか?何故自分には死者の魂がみえるのか?自らの謎を抱えたまま、八雲は次々と起こる怪事件の謎に迫る。
とつぜん父親が死んでしまい、ドーラが窮状にあることを知ったデイヴィッド。自分がしっかりしなくては、と安定した生活の資を得るべく、速記法の習得に全身全霊を傾ける。そして、とうとう念願だったドーラとの結婚を果たすのだったが…。
失恋の痛みと都会の疲れを癒すべく、故郷に舞い戻ったほたる。雪に包まれ、川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切なものを彼女はとりもどせるのだろうかー。言葉が伝えるさりげない優しさに救われるときはきっとある。人と人との不思議な縁にみちびかれ、自分の青春をあらたにみつける静かな回復の物語。
密命を帯び、主どのが消息を絶って一年余り。御鷹場を巡邏し、かげで諸藩を探る幕府隠密お鳥見役。留守を預かる女房珠世に心休まる日はない。身近で暮らす子供たちのひと知れぬ悩み、隠居となった父の寂寥、わけあって組屋敷に転がり込んだ男女と幼な子の行く末。だから、せめて今日一日を明るく、かかわりあった人の心を温めたい-。人が人と暮らす哀歓を四季の移ろいのなかに描く連作短篇集。
浅井亮政の美濃出兵に端を発した争いは、それぞれに思惑を秘めた諸勢力を巻き込んで大永の動乱へと発展した。新左衛門尉と新九郎は闇の住人を操り、知略の限りを尽くしてこの争いを勝ち抜いていく…。策略と陰謀のドラマをダイナミックに描いた超話題作。
藍子叔母は、いつも物憂げで無関心で孤独だった。まるで、心の内部に暗くて深い裂け目が横たわっているかのように。ふとしたきっかけで叔母の謎多き過去を調べるようになった私は、叔母の旧友という老婦人から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。そして、その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、女学生時代の叔母の姿だった。いったい何が叔母を変えたのか。香気あふれる文芸ミステリー。
三十三歳の若さで、ゲームソフト業界の雄にのし上がった日系人経営者、デービッド・イマキタは、ひょんなことから“謎の美女”クロエ・デュボワと出逢う。彼女はじつは、自社のCGアニメキャラのモデルだった。デービッドの日本式豪邸で、出張先の東京で、本番ショークラブで、次々と明かされる彼女の秘められた過去…。そして事故によるクロエの記憶喪失。デービッドは戸惑い、魅せられながら、しだいに彼女の壮絶な世界に…。