2003年4月25日発売
ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。でも彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。ある朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、人生の秘密が姿を現そうとしていたー。全世界四五ヵ国、五〇〇万人以上が感動した大ベストセラー。
十四歳の銀次は木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがることになる。やがて店の跡取り藤一郎に縁談が起こり、話は順調にまとまりそうになるのだが、なんと女中のおはるのお腹に藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と藤一郎に近づかないようにと店を出されることに…。しばらくして、銀次は藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、おはるがいるはずの家で銀次が見たものは…。(「居眠り心中」)月夜の晩の本当に恐い江戸ふしぎ噺・九編。
「みんなの顔が“のっぺらぼう”に見えるっていうの。誰が誰なのかもわからなくなったって…」兄さんに、会わなきゃ。二十年前に、兄が言ったんだ。姿を消す前に。「いつかお前の周りで、誰かが“のっぺらぼう”を見るようになったら呼んでほしい」と。第29回メフィスト賞受賞作。
奔放な愛の世界に生きた美貌の女性作家アナイス・ニンが、野人ミラーのすすめで、ある老人のコレクターのために匿名で書いた、13のエロティックな短篇。体験からの深い洞察力と独自の感性をもって美しく開花した、妖しくも純粋なエロス。アナイス究極の情事。
1935年夏、13歳の少女ブライオニー・タリスは休暇で帰省してくる兄とその友人を自作の劇で迎えるべく、奮闘努力を続けていた。娘の姿を微笑ましく見守る母、一定の距離を取ろうとする姉セシーリア、使用人の息子で姉の幼なじみのロビー・ターナー、そして両親の破局が原因でタリス家にやってきた従姉弟ー15歳のローラ、9歳の双子ジャクスンとピエローらを巻き込みながら、準備は着々と進んでいるかに見えた。だが練習のさなか、窓辺からふと外を見やったブライオニーの目に飛び込んできたのは、白い裸身を晒す姉と、傍らに立つひとりの男の姿だった…。いくつかの誤解、取り返しのつかぬ事件、戦争と欺瞞。無垢な少女が狂わせてしまった生が、現代に至る無情な時間の流れの果てに、切なくももどかしい結末を呼ぶ。ブッカー賞最終候補。全米批評家協会賞受賞。
流浪の国王ウォルとリィの率いる軍勢は王都コーラルの目前に迫った。だが、救出すべき父はすでに亡く、王座奪還の目算も潰えた。欲するは父の敵の首ひとつー!同胞相討つ内乱を避け、わずかな手勢で城に乗り込むウォルの運命、そしてデルフィニア争乱の行方は?第1部放浪の戦士篇完結。
回転を上げる蒸気タービン。「くらま」は船体を震わせ、岸壁を離れた。平成十四年十一月、テロ対策特別措置法による第一陣の旅立ちである。南下を続ける第二護衛隊群は、佐世保を出港して一週間後、シンガポールに寄港したのち、マラッカ海峡を抜けてインド洋へ出た。十二月二日、米艦艇に対する初の補給作業が開始され、最初の作業より十日余りが過ぎたある日-。「途切れるサイクルは短くなりますし、雑音もひどくなるばかりです」通信状態が芳しくない。群司令たる中西要海将補は、顔をしかめた。その直後、凄まじい閃光と震動が艦橋を襲った…。「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋にいた。時空を漂流する派遣艦隊を待ち受ける苛酷な運命。新シリーズ刊行開始。
食券欲しさに、夜の帝王にナンパ勝負を挑んだ美祢遙はみごと惨敗。失う予定もなかったバックバージンまで奪われる。それにしても相手が悪かった!二度と会いたくないその男・橘季慈は、巨大複合企業の御曹司で、遙が通う大学の理事長子息で、同期生でもあった。ある事故のせいで、季慈の暮らすホテルに、家政婦のように住みこむことになった遙はますます季慈との距離が近くなる。知らず知らずのうちに、その姿態が相手を誘惑する、魅惑のラブロマンス。