2004年2月発売
一時間で一億円の大博打。映像ディレクター小峰が誘われたのは、池袋最大のカジノ売上金強奪の狂言強盗。ところが、その金を横取りされた。どん底から這い上がる男たち…。逆転の確率は二分の一。赤か黒。人生の全てをその一瞬に賭ける。
作者の故郷イギリス北部ヨークシャー州の荒涼たる自然を背景とした、二つの家族の三代にわたる愛憎の悲劇。主人公ヒースクリフの悪魔的な性格造形が圧倒的な迫力を持つ、ブロンテ姉妹のひとりエミリー(一八一八ー四八)の残した唯一の長篇。新訳。
アイルランド、そしてダブリンに生涯こだわり続けたジョイス(一八八二ー一九四一)。「細心卑小な文体」を用いて、閉塞的なダブリンの市民階層の麻痺的な生態を描いた十五篇。『ユリシーズ』等につながる、ジョイス文学の展開の端緒をなす初期短篇集。
あるもンしかねエんだ。進歩も進化も関係ねエのよ。エレベーターはなくても階段はあった。階段があっても梯子はあった。それもなければ二階屋がねエよ。そう言うことだ、わかるか?人類の進歩じゃアねエのさ。飛行船ってのがいっとき流行ったなァ。空を飛んだらどうだッて言うんだ。飛ばなくたッて人間は生きていける。それがあるのはどうしてだ。理由なんてねエよ。ただあるのさ。なくていいものでもあるからあるんだ。だから大事なのは、それをだれが造っただとか人間の業だ叡智だかが素晴らしいとか、そんなことじゃアねエ。そこにあるそれはなんなのか、ッてことだ。ないものをあるように見せかけるのは馬鹿げてやがる。だがあるものをねエッていうのはもっと馬鹿げてる。わかるか?(本文より)。超新星登場!驚愕仰天のデビュー作。
組織再編の大波に揉まれながらも、職務をまっとうし、道半ばで斃れた銀行員。彼を冷たく使い捨て、労災認定を渋る役員たち。“戦死”した者の誇りを守るため、経済界の一匹狼・勇次が立ち上がる!(「名誉ある死」)。娘が自殺した背景を追及する表題作、中小企業の復活を描く「家業再興」等、会心のハードボイルド経済小説集。
「ホームズはなぜ、切り裂きジャックについてまったく言及していないのか?」-ホームズ物語の中でも最大級の疑問に、ひとつの解釈を与えたホームズ・パロディ界の名著、待望の邦訳。英推理作家協会賞を受賞したイギリスを代表する現役人気作家が、ホームズ研究者や批評家の間に強烈な反応を引き起こした問題作。
JRと道路公団に届いた脅迫状。それは四億円を支払わなければ、クリスマスに大清水、関越両トンネルを爆破するという犯行予告だった。折しも同一犯の手によって、天城峠と湯沢で爆破事件が起きたばかりであった。一連の事件解明のため、十津川警部が越後湯沢に駆け付ける。巧妙な手口で捜査陣を翻弄する犯人たち。果たして十津川は、怜悧狡猾な犯人を捕らえることができるのか?雪の越後を舞台に繰り広げられる、傑作長編ミステリー。
盛岡で古書店を営む結城恒一郎の姪・怜の意識の中には、交通事故をきっかけに甦った江戸時代の天才人形師・泉目吉が棲んでいる。恒一郎は怜はお化け屋敷で本物の死骸を発見。外に出た二人は、盛岡に移住するという進藤とその息子・正也を紹介された。帰り際、二人はまたも切断された人間の手首を発見。続いて紙袋に入った犬の生首に出くわすのだが…。意想外の着想から生み出された稀代の人気キャラクター・泉目吉が対峙する連続猟奇殺人事件。シリーズ最高のホラー・サスペンス。
かけがえのない、高校生だった日々を共に過ごした四人の男女。テストにやきもきしたり、文化祭に全力投球したり、ほのかな恋心を抱いたりー。卒業してからも、ときにすれ違い、行き違い、手さぐりで距離をはかりながら、お互いのことをずっと気にかけていた。卒業から20年のあいだに交わされた、あるいは出されることのなかった手紙、葉書、FAX、メモetc.で全編を綴る。ごく普通の人々が生きる、それぞれの切実な青春が、行間から見事に浮かび上がるー。姫野文学の隠れた名作。
ロンドンの寂れた街角で、足の悪い老人が二人組の男に襲われた。犯人は殴る蹴るの暴行のうえ、財布を奪って逃走。被害者は脳内出血で、身元不明のまま死亡してしまう。やがて、犯人は目撃者の証言によって逮捕され、誰もが有罪確実とみていたのだが…。表題作「戦士たちの挽歌」をはじめ、結末の意外性が存分に楽しめる三編を収録。物語の醍醐味が凝縮された、珠玉の短編集。
バンコク発ロンドン行き英国航空10便。バカンスを終えた家旅客らを乗せた機内で繰り広げられる麻薬組織とMI5の闘いを描く「囮たちの掟」、西部開拓時代を舞台に、ネイティヴ・アメリカンの娘と騎兵隊の男の一途な恋の逃避行を描く「時をこえる風」の二編を収録。キング・オブ・ストーリーテラーが放つ、物語の真髄を極めた至高の短編集。
雄一は、中学一年の夏休み後、仲のよかった同級生から突然イジメの標的にされる。彼は、心の痛みをカリスマ的な存在である歌姫“リリイ・シュシュ”の世界で癒そうとする。そこだけが、自分の居場所であるかのように…。イジメ、万引き、援助交際…閉塞感に押しつぶされそうな日常と、そこから逃避してリリイ・シュシュのファンサイトに没頭する非日常の間で生きる十四歳。青春のダークサイドをリアルに描き出し、話題を呼んだ’01年公開作品のもとになった、ネット連載小説の文庫化。