2004年発売
風雲急を告げる幕末の京都で、空腹に耐えかねてわけもわからず新選組に入隊した旅芸人の坂本朝太と桂珍平。新選組を変えてやると、人前では決して笑顔を見せぬという副長・土方歳三を笑わそうとする珍平・朝太コンビによる奮闘ぶりをおもしろおかしく描いた「笑わぬ男」をはじめ、柔道の達人・西郷四郎や明治の文豪・夏目漱石と迷コンビの交流を絶妙の筆致で織りなす、笑いあり、涙ありの快作。
滋賀県南部を横切って琵琶湖にそそぐ「近江太郎」の異名を持つ野洲川は、ほぼ10年に1回の割合で大氾濫を繰り返す暴れ川だった。 水害を被るたびに流域の村々が堤防を積み増しした結果、下流では川底が周囲の地面よりも高い天井川となり、危険この上ない状態となっていた。下流部で分かれた北流と南流の改修は、流域住民の悲願だったが……。 『京都インクライン物語』で第1回土木学会著作賞を受賞した田村喜子が、改修事業に関わる流域住民のさまざまな心の動きを活写。
「ぼくの名はシュヌル。青い目の典型的なおすネコだ。 ぼくは現在、おそろしくでかい二本脚のところに住んでいる。 毎日いろんなことが起こるんで、日記をつけることにした。 まあ、読んでみてくれ」 ネコのシュヌルが緑と花いっぱいの野原で生まれ、 挫折と放浪のはてに愛する家族と幸せに暮らすまでの波瀾の半生を、ありのままにつづったネコ的私小説。
都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達。本音を明かさず、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。
30年前、中学教師だった松子はある事件で馘首され故郷から失踪する。そこから彼女の転落し続ける人生が始まった……。一人の女性の生涯を通し愛と人生の光と影を炙り出す感動ミステリ巨編。
著者が「愉しさを第一に」取り組んだ傑作時代小説。徳川家斉が大御所として君臨する天保十一年、絢爛たる吹上の桜見の会で奥女中らが注視する中、事件は起こったー。家斉が寵愛する中臈と背後の黒幕石翁。彼らの追い落としを謀る水野忠邦一派。両者の罠のかけあいを推理手法で描き、権力に群がる矮小な人間の姿を炙りだす。
大奥女中と法華宗僧侶の乱れた性の証拠を掴むべく、密偵として大奥に忍び込んだ齢十九の登美に魔の手が迫る。部屋住みの三男坊、新之助が大胆に敵を翻弄し、事態はますます息をもつかせぬ大攻防へ。両陣営に犠牲者が続出。そして、衝撃的な結末はー。全てを見届けた新之助の目には儚い陽炎が揺れていた。
十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。
品川の廻船問屋に押し込みが入り、乳母の看病にきていた娘の証言で盗賊はお縄に。が、賊が島抜けし、娘は「かわせみ」に預けられることに…。表題作ほか、旅篭の女主人るいに恋人の東吾、あてられっぱなしの同心・源三郎、二人の仲を見守る与力の兄夫婦ーお馴染みの登場人物が活躍する全八篇を収録。シリーズの新装版第四弾。
西へ。闇の男の領土へと男たちは進む。行く手には闇と死だけが待っているーだが愛する者への思いがあれば恐くはない。世界の明日のために、闇の男を討ち滅ぼすのだ。善なる者も悪なる者も、最後の闘争の中で己の真実を見出し、そして…。世界最高の語り部が人間の普遍の強さを謳いあげた最高傑作、壮大な感動とともに閉幕。
黒衣の宰相と呼ばれた金地院崇伝は、墨染めの衣を身にまとった禅僧でありながら、徳川家康の懐刀として政治に参画した。豊臣家滅亡の切掛となった方広寺鐘銘事件を画策し、武家諸法度、禁中並公家諸法度などの基本法典を起草して徳川二百七十年の平和の礎を築き上げた希代の怪僧の生涯を描いた長篇歴史小説。
甲子園の優勝投手は、なぜ、自ら「人間兵器」となることを選んだのか。 人間魚雷「回天」--海の特攻兵器。脱出装置なし。 甲子園の優勝投手・並木浩二は大学入学後、ヒジを故障。新しい変化球の完成に復活をかけていたが、日米開戦を機に、並木の夢は時代にのみ込まれていく。死ぬための訓練。出撃。回天搭乗。--しかし彼は「魔球」を諦めなかった。 組織と個人を描く横山秀夫の原点
愛した人は、邪魔な人。大好きだった。けれど今は、別れたいだけ。自分がどれだけ心を傾けられる相手を必要としているか、その淋しさは痛いほど分かっているけれど…。優しさと凄味をあわせ持つ、驚愕の長編小説。
リミットは水没するまでの5時間。洞窟に閉じ込められた調査隊が危ない!「贖罪」の思いを胸に、単身、救助に向かった青年を襲う「殺人者」の恐怖。史上最年少24歳3カ月!第50回江戸川乱歩賞受賞作。
ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。
見合いの度に怪事件が発生し、破談になってしまう和風美人の垂里冴子。続編でも4回のお見合いに四つの事件がついてきた。老舗旅館に出没する幽霊の正体、肌が荒れるエステティック、七福神盗難事件、象の靴の謎。史上最も縁遠い美人名探偵の活躍が心地よい極上の連作ミステリー。好評にお応えしての第二弾。
少年時代の“ワクワク”がいま、よみがえる 英国中部の荒野に建つバスカビル家の館。当主のチャールズ卿が不可解な死を遂げた現場には、巨大な犬の足跡が残されていた。その死の真相を探るのは、ロンドン・ベーカー街に住む、S・ホームズ。この沈着冷静な名探偵が僚友ワトスン博士と共に、魔犬伝説の謎を解く!ドイルの大傑作を大沢在昌が痛快に翻案。
眉目秀麗にして頭脳明晰の天才高校生・千葉千波くんが、従兄弟で浪人生の“八丁堀”たちとともに難問、怪事件を鮮やかに解き明かす。たっぷり頭の体操が楽しめる上質の論理パズル短編5本と「解答集」を収録。 『QED』の高田崇史があなたに挑戦状!? 眉目秀麗にして頭脳明晰の天才高校生・千葉千波くんが、従兄弟で浪人生の“八丁堀”たちとともに難問、怪事件を鮮やかに解き明かす。たっぷり頭の体操が楽しめる上質の論理パズル短編5本に、「解答集」、森博嗣氏による解説までてんこ盛り! ご存じ『QED』の高田崇史が送る新シリーズ第1弾、待望の文庫化。