2004年発売
早稲田大学仏文科教授として学生に敬愛される、西条八十。彼のもうひとつの顔は、当代一流の作詞家である。叙情あふるる童謡、帝都の賑わいを描く小唄。戦時下の庶民を勇気づけた軍歌。そして、日本の新生をともに歓喜する流行歌-。名曲には秘められたドラマがあった。波瀾万丈の昭和とともに生き、1万5000もの詩を残した作詞家の生涯。
大王様、どうぞ永遠にそのままでいらして。わたくしども女こどもは、別の国へ旅立ちますー私の人生を、あんたなんかの思い通りにされてたまるもんか。歪んだ王国の最期を描く、バイアス長編ファンタジー小説。
小劇場演劇のユニット「神戸パラダイス」が公演することになっている姫路城の広場で、劇団の主宰者・永山篤史が死体で見つかった。発見者の桝形浩人は永山とは大学の同級生で、いまは松山で劇団活動をしているが、この日の公演を見るために姫路にきていたのだった。警察の実況検分がつづくなか、公演は予定通り行われた。ところがその舞台を見た桝形は、驚きと怒りで身を震わせた。なぜかといえば…。
少女「六六(リュウリュウ)」には出生の謎があった。大飢饉の直後に生まれ、凄惨なスラム街に育ち、あたかも生まれながらの飢餓の魂をかかえた娘だった。18歳の誕生日が間近かに迫った1980年から物語が始まる。彼女の家は重慶のスラム街にあり、狭い部屋に父母と6人の姉妹兄弟がひしめき合って暮らしていた。末っ子の「六六」は、しばしば余計者、邪魔者として邪険に扱われてきた。家族が住む凄惨なスラム街の様子、作者自身の生身の痛切な体験-影のようにつきまとう男の気配、自らの出生の秘密、恋。人間としとての尊厳を求めてこの町から絶対に抜け出す決意をしたときに運命的に出会う「詩」と才能の目覚め…。飢餓の魂は救われるのか?深い感動とともに読者の魂も癒されていく。
山奥のクラシックなホテルで、毎秋開かれる豪華なパーティ。その年、不吉な前兆とともに、次々と変死事件が起こった。果たして犯人は…。巧妙な仕掛けで読者に挑戦する渾身の一作。
骨董とは美か、ゲテモノか、はたまた妖怪か?古物に魅せられた3組の男女が幻のお宝を追って、九州の山里から萩、ロンドン、フィレンツェへとさすらいの旅に出た。盗掘や贋作など、なんでもアリの骨董世界に生きる人間たちの泣き笑いを、切なくおかしく描く長編小説。
近江商人の末裔たる誇り高き田舎者にして大隈重信の末弟子、政治家らしからぬ政治家にして専横独裁の実業家、徹底した現実主義者にして時代の理想を追求し続ける者、私の父にして私の宿敵-。果して何者なのか?地縁と血の絆、修羅と栄光の狭間をひたすら生きたこの男は?この男の血を受けた運命から逃れきれないでいるこの私は?最大の「宿命」に挑む長篇小説。
織井沢子は、夫の昔の恋人で画家の兵頭珠江の描いた「潮を抱く家」に夫との秘密を知る。沢子もまた誰にも知られず燃え上がった過去の恋の苦しみを忘れられずにいた。遭難してさまよう七人の霊が次の人を海に引き込むという故郷に伝わる「七人みさき」の言い伝え、義母から明かされる戦争ゆえの結婚の悲劇、苛酷なシベリア抑留の記憶…。さらに思いもかけぬ珠江の真実が沢子の胸を突く。-東京と四国を舞台に、親子夫婦の不思議な縁と、切ないまでの人間の生き様を描く長編小説。
太朗の様子がおかしい。夏だから?奴も恋した?それとも…?予定外の妊娠で子宝を授かってしまった私。母ひとり子ひとりの毎日はにぎやかで、香ばしい。でも、ひと夏の終わりはどこか危うい…。こどもの天国と大人の現実を描く表題作と短篇「ボーイ ミーツ ガール」。
恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…。欧米各国で翻訳され絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた長編小説。
NYを襲った同時多発テロは、アメリカ国民に深い傷跡を残した。そう、わたしの心にも。恋人でジャーナリストのモレルがアフガン取材に出て戻ってこないのだ。わたしは何度も帰国を促したが、モレルは「きみのほうこそ、もっと悲惨な状況をくぐり抜けてきたじゃないか」といって取り合ってくれない。募る不安から、わたしはより熱心に仕事に打ち込むようになった。そんな矢先、得意客のグレアムから依頼があり、わたしは飛びついた。なんでも、彼の母親が以前住んでいた邸宅に不法侵入者の気配があるので調べてほしいという。さっそく訪れた無人のはずの邸には、なぜか少女の姿が。わたしは話をしようと追いかけたが、足を滑らせて庭の池に落ちてしまった。必死で水草を掴もうとして手にしたのは、なんと死んだ男性の手。警察によれば、その男性は黒人ジャーナリストだという。だが、白人が支配する高級住宅地担当の保安官は面倒をさけるため、自殺の線で処理しようとした。そんなのは納得がいかないし、逃げた少女のことも気にかかる。わたしの闘いがはじまった!シカゴの女性探偵V・Iがポスト9・11のアメリカを駆ける。ヒロイン・ハードボイルドの頂点を極めた著者が贈る、V・I・ウォーショースキー・シリーズ最新傑作。
西暦2007年渋谷は日本から独立したというか、隔離された。ドラッグ、殺人、売春というありがちな事件が起こるたびに新聞が騒ぎ、若いヤツらしか寄りつかない街になった渋谷。日本政府はまるでガンにむしばまれた組織を切除するように、山手通から246にかけて鋼鉄の壁をそそり立たせ総面積300平方メートルの渋谷自治共和国を誕生させた。この小説はそんな渋谷を舞台にコメカミに穴を空け基盤を埋め込んだ若者の間で楽器を使って闘われる『Pray』とPrayersの物語。大脳という人間のブラックボックスを直接刺激することにより、派手で弾けた死をも賭けたゲームが闘われることから、「遊び」と「祈り」をかけたPrayと呼ばれた。
平凡な一人の男が、天を衝く塔を崩壊から救う。高さ2キロメートルの塔が幾多の危機を越え、雲を分け聳え続けるのだ。世界を救うのは、夢みる力!魂の冒険と愛の発見の物語。石田衣良の新たな挑戦ー心ゆすぶられるヒューマン・ファンタジー。
両親と死別し、叔母の家でつらい日々を送っていたウジン。ある日現れた叔父のペドロ神父に引き取られ、母が呼んでいたという洗礼名、アンドレアとして成長する。高校生のとき、両親を亡くしてやってきた娘、ウナを優しく受け入れるアンドレア。彼を愛するようになったウナは、告白できないままアンドレアに神父になる決意を打ち明けられ、想いを胸にしまいこむ。ともに医学部に合格したアンドレアとウナはソウルの大学に入学。そこで、同じ名前を持つウジンと出会う…。