2005年11月発売
奥州糠部の地でのびのびと育った馬の巧みな十六歳の少女相馬由衣は、従弟の八郎丸が元服するのに付き添い、平泉に赴く。しかし平泉は衣川館で義経が誅殺されたという報に震撼していた。由衣らが人目を避けて飛び帰った村も、義経を襲った藤原泰衡勢に焼き討ちにあい、身内は無惨にも息絶えていた。この混乱の中で由衣は伯父から八郎丸が義経の落胤である事実を聞かされるが、頼朝の奥州征討軍に平泉は炎上、頼朝の軍勢に抵抗した由衣は運命の大渦に翻弄されていく。
放浪の戦士と異世界の少女の出逢いーすべてはここから始まった。盟約という固い絆で結ばれた二人は、いくたの危地を乗り越え、あまたの戦に勝ち抜いて、戦士は大国の王に、少女は王と国の守護神となった。獅子王と妃将軍が紡ぐデルフィニアの伝説が、ここに完結する。
カリフォルニアのオレンジ郡保安官事務所麻薬課のおとり捜査官フレッドことボブ・アークターは、上司にも自分の仮の姿は教えず、秘密捜査を進めている。麻薬中毒者アークターとして、最近流通しはじめた物質Dはもちろん、ヘロイン、コカインなどの麻薬にふけりつつ、ヤク中仲間ふたりと同居していたのだ。だが、ある日、上司から麻薬密売人アークターの監視を命じられてしまうが……P・K・ディック後期の傑作、新訳版
新宿副都心に開設された「EDS 緊急推理解決院」。警察では対応しきれない難事件や不可解な謎を、市井の名探偵の知力と名推理によって、早期に解決しようという施設だ。専門分野ごとの探偵師と助師が披露する鮮やかな推理!画期的合作長編、遂に完成。
あなたの隣にいませんか?一人で妄想するひと、突然怒るひと、イヤなときに必ずいるひと、死んでいるのに自覚がないひと…不思議で奇妙で怖い人たち。いつどこで出逢うかわからないー逢いたくないけどもう逢ってしまっているかもしれない「あのひと」と「あなた」のストーリー八編を収録。
母・雪江の発案で三河への旅に出かけた名探偵・浅見光彦。旅先の「殉国七士の墓」で出会い、ふたりに説教までした愛国老人が、翌日吉良町の海岸で死体となって発見された。全身には高い崖から転落したと思われる激しい打撲の跡があった。しかし、現場にはそのような断崖はない。となると、まるで「名も知らぬ遠き島より…」と島崎藤村の詩にも歌われた椰子の実のように、死体は別の場所から流れ着いたのだろうか。一体犯行現場はどこなのか!?一度は警察に疑いをかけられた浅見光彦が、美しい海岸に仕掛けられた完全犯罪と、その背後に隠された悪意に迫る、傑作長編旅情ミステリー。
昭和40年代、高度成長期日本。3種の神器と謳われた欲望の象徴・自動車をめぐって、各メーカーは熾烈な争いを繰り広げる。ライバル会社を欺き、出し抜き、機密を盗み出す“産業スパイ”の世界をあますところなく活写、1962年に発表されるや一躍ベストセラーとなり、「企業小説」という新ジャンルを開拓した傑作。同年、田宮二郎主演で映画化されている。
東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれないー。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。
ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。
生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような…。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。
私たちはたくさんの愛を贈られて生きている。この世に生まれて初めてもらう「名前」。放課後の「初キス」。女友達からの「ウェディングヴェール」。子供が描いた「家族の絵」--。人生で巡りあうかけがえのないプレゼントシーンを、小説と絵で鮮やかに切りとった12編。贈られた記憶がせつなくよみがえり、大切な人とのつながりが胸に染みわたる。カバーを広げると一枚の包装紙になるラッピングカバー版。カバー裏面には、スピンオフ短編と描き下ろしイラストを収録。
エジンバラの街では、強者は弱者を喰らい、弱者は強者にへつらい続ける。難民とおぼしき男が無残に刺し殺された。その身元は不明だったが、捜査に乗り出したリーバス警部は男が謎の女に会っていたとの情報を得る。警察に電話をしてきた女には独特の言葉の訛りがあった…時同じくしてパブの地下で女の骨が発見された。リーバスは、骨が250年前に魔女ときめつけられ住民に処刑された女のものと知る。大学の研究室に保管されていたはずの骨を、誰が、なぜここへ移動させたのか…さらにリーバスは、ある強姦犯が出所してきたことを知る。被害者の女性はレイプされた後に自殺した。その妹は最近失踪を遂げていた。なぜか死んだ姉そっくりの恰好をしていたというが…次々と襲いくる事件と謎に一匹狼リーバス警部が立ち向かう、現代イギリス最高峰のミステリ。2005年度CWA賞ダイアモンド・ダガー賞受賞作品。