2005年3月発売
モスクワからやってきた従妹との甘く苦い恋の顛末を描く表題作ほか、「世界で二番目に強い男」「思い出を偲ぶ場でケダモノのように」などカナダへ移住したロシア系家族の人生のひとこまを描く全七篇。淡々とした文章。ぬくもりとユーモア。「ニューヨーカー」の編集者も舌をまく傑出した語り口。チェーホフの再来と大好評を博した連作短篇集。
時は関ヶ原の合戦。薬問屋の女主人「とき」は、傷だらけの落ち武者を介抱する。運命的な恋の行方は?キリシタンである落ち武者の正体とは?戦乱の凄まじさを背景に、許されぬ恋と純愛の形を哀切に描く感動の長篇大作。
運命の糸をつむぎ、測り、断ち切るー。ギリシャ神話の運命の三女神をかたどった像のひとつ、女神クロトの像は、ながらくアイルランドの海辺の町コーヴにあるサリヴァン家の家宝だったが、サリヴァン家の長男マラキはその像を悪徳美術商アニタに騙し取られてしまう。その奪還とあわせて、残るふたつの女神像の行方を探るべく、サリヴァン家のマラキ、ギデオンの兄弟はヘルシンキ、プラハ、そしてニューヨークへと赴くが…。巨匠ノーラ・ロバーツの華麗なるロマンティックサスペンス最新作。
運命の三女神クロト、ラケシス、アトロポスをかたどった三体の像の追跡劇のなかで、奇怪な事件が続発する。ヘルシンキでマラキと会った百年前のクロト像の持ち主の子孫ティアの部屋が荒らされる。残る女神像の一つラケシスを所有するクレアは、サリヴァン家のギデオンとともに、ニューヨークで二人を狙ったと思われる殺人事件に遭遇。事件の黒幕は三女神像の独占を狙うアニタなのか?三つの像の行方は、そしてその像に導かれたかのように展開するサリヴァン家三兄妹のロマンスの結末は。
二十年前の破滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径六キロは、現在も危険指定地域とされ、ここを中心に、五感で世界と融合するドラッグ「ネイキッド・スキン」や、全身の皮膚がゼリー化する奇病「麗腐病」をめぐり、人類社会崩壊の予兆の中、変容してゆく人の意識と世界が醜悪かつ美麗に描かれる。ホラーの鬼才が満を持して世に問う、空前のテクノゴシックSF巨篇。第23回日本SF大賞受賞作。
前任者が謎の失踪を遂げ、アッティリウスはローマ帝国最長の水道の管理官に任命された。だが就任早々、断水という重大問題に直面した。水道を修復するため彼はポンペイに向かうが、当地では大富豪が密かに悪事を行なっていた。大富豪に反感を抱くその娘との恋を育み、彼は水道の修復に命懸けで挑む。が、ヴェスヴィオ山の噴火が目前に!古代都市ポンペイが壊滅するまでの四日間のドラマを壮大なスケールで描く話題作。
古代より伝わる「死の歌」は僕たちの世界を滅ぼすのか?乳幼児ぽっくり病の取材を進める新聞記者ストリーターは奇妙な事実に突き当たる。死亡した赤ん坊たちの家にはすべて、『世界の詩と歌』という本が置かれていたのだ。やがて、その中の一篇、アフリカ起源の子守歌に聴いた者を瞬時に殺害する魔力があると判明する。もし、この歌がラジオやテレビで流されたら?電話一本で証拠もなく誰かを殺せてしまうとしたら?僕たちが聴く音という音に歌が混じるかもしれないとしたら?戦慄に身を震わすストリーターは、この「間引きの歌」の秘密を知る魔女崇拝者のモナ、環境テロリストのオイスター、そして幽霊屋敷専門の不動産業者のヘレンとともに現存するすべての『世界の詩と歌』を処分するアメリカ横断の旅にでる。
伊佐チエはいわゆる普通の女子高生…だったはずなんだけど…。彼女が卒業した小学校が、この世から忽然と消えてしまうという怪事件をきっかけに、何の因果か、ケッタイな獣たちが蠢く不可思議な世界へ行く羽目に。そこはチエの曽祖父・小五郎のつくった夢の世界、夢羅。同級生のコザケンらを従え、夢羅に潜って、果敢に闘いを挑むチエ。伝説の化け狐・キトネを追え!操るは、先祖伝来の滅魔の銃!『ルナOrphan’s Trouble』で第4回日本SF新人賞を受賞した奇才が描く、ネオ・ジャパネスク・アクションSF!待望の受賞後第一作長篇。
核戦争による現代社会の崩壊後、少年・圭太は、父やその仲間とともに大型漁船で日本を脱出し、南太平洋に浮かぶ海上基地フロート・ナインを目指していた。だが船は嵐に遭い、座礁してしまう。そんな彼らの前に現れた、巨大な豪華客船ー。救世主のように思われたその船は、調査に訪れた大人たちを載せたまま、忽然と姿を消してしまう。それから二年、謎の「箱船」は、何度か圭太たちの前に姿を現すが、大人たちは誰一人帰ってこなかった…。意を決して「箱船」に乗り込んだ子供たちは、なんと、船が完全に無人であることを知る。「この船は、いったい…何なのか?」全篇に漂う切実な寂寥感の中、少年少女の活躍を瑞々しく描いて選考委員を唸らせた、SFミステリーの傑作!第5回日本SF新人賞佳作入選作品。
デビューのその瞬間、すでにして日本SFを代表する名作であることを証明した、前作『神狩り』。あれから30年。読者はもう一度、あの衝撃に出会うことができる。お待たせいたしましたー。現代SFエンターテインメントの最先端、書下し1100枚。
学費を稼ぐため、家庭教師のバイトにいそしむ大学生のスワン。だが、向う気の強さが災いして次々にバイト先を首になってしまう。そこで母親から知人の息子ジフンを紹介されるが、初日からタメ口を利き、煙草を吸いながら一向に授業を受ける気のないジフンに、スワンは怒り爆発。しかし、母親に頭の上がらない彼女は、渋々家庭教師を続けることに…。大金持ちの息子であるジフンは、ハンサムで、喧嘩も強いが、高校を2回も留年し、スワンとは同い年の超問題児。スワンが何とかジフンを手なづけようとしても、ジフンの態度は変わらない。何かとぶつかり合うふたりだったが、ジフンが父親に「試験で平均50点以上取らなければ留学する」と啖呵を切ったことから、力を合わせることに…。インターネットで掲載された人気小説を原案に、熱血家庭教師と問題児の生徒の破天荒な恋の行方を描く、痛快ロマンティック、ラブコメディ。