2005年6月発売
江戸市中では押込みが続発していた。そんな折、三味線流しおきんの結び文が『かわせみ』へ届けられ、解決の糸口となる。表題作他、大名家の姫君の江戸見物を描いた名品「岸和田の姫」など七篇を収録。大川端の旅篭『かわせみ』の女主人るいと恋人の東吾、八丁堀同心・畝源三郎の名トリオがおくる人情捕物帳シリーズ、新装版第十二弾。
ミステリー界の大御所が、秩父の山荘で、十年ぶりの新作執筆に取りかかる。タイトルは『螺旋館の殺人』、本格推理ものだ。ある日、作家志望の若い女性が自らの作品を手に訪ねて来る。その後の原稿紛失、盗作疑惑…奇妙な事件の果てに待つものは?折原ミステリーの原点、精緻な多重トリックが冴える長篇。
ここではないどこかへ…。東京の日常に疲れ果てた有子は、編集者の仕事も恋人も捨てて上海留学を選ぶ。だが、心の空洞は埋まらない。そんな彼女のもとに、大伯父の幽霊が現れ、有子は、70年前、彼が上海で書き残した日記をひもとく。玉蘭の香りが現在と過去を結び、有子の何かが壊れ、何かが生れてくる…。
-おら、負けねえ。絶対いっぱしの男になってやる。ムクムクとわき起こる闘志のせいか、慣れない長旅のせいか、有二の額に汗が吹き出す。それを腕でグイッと拭うと、有二は眦を決して人波に飛び込んでいった。栃木の糞ガキ鈴木有二が、世界チャンピオン、ガッツ石松への一歩を踏み出す、まさしくその瞬間だった。貧しくひもじかった少年時代、無我夢中で突っ走った青春時代-いつも熱く一途に生きる男・ガッツ石松の半生を、いきいきと描き出した初の自伝小説。
香道家元の夫が殺された!芳しい烟りに秘められた謎とは!?フィールドワークとして近江・鳥居本を訪れた民俗学者の潤一郎は、父親を捜す美咲という女性と出会う。失踪前に父が「鳥居本へ帰りたい」と話していたのだという。しかしそこには父親の影はなかった。さらに「鳥居」とつく地名を捜すという美咲と別れて京都に向かった潤一郎は、ふとしたことから殺人事件に巻き込まれてしまう。殺されたのは有名な香道家元の夫で、史学科名誉教授。事件を調べはじめた潤一郎は、奥嵯峨で思いがけない事実を知る…。全く別と思われた失踪と殺人-ふたつの事件を結ぶのは謎の言葉“ホサハ”-。
美しい港町アデンを舞台に、恋も財も失った令嬢がある大金持ちの奇人の助力を得て、不幸のどん底から立ち直ろうと健気な大勝負に出る「銀山王」。生まれは貴なるも無銭無家の快男児・団金東次が如意棒片手に世界へ船出する、痛快活劇「世界武者修行」。世に聞こえたアラビアの航海王・乗船伯爵が問わず語りに語る摩訶不思議な冒険譚「魔島の奇跡」。血気盛んな明治の青少年から絶大なる支持を受けた冒険小説の祖による幻の傑作3編を収録。
圧倒的事実の<生と死>--8月9日に、すでに壊された<私>。死と共存する<私>は、古希を目前にして遍路の旅に出る。<私>の半生とは、いったい何であったのか……。生の意味を問う表題作のほか、1945年7月、世界最初の核実験が行われた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち《人間の原点》を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞作品。 ◎林京子ーー私は立ちすくんだ。地平線まで見渡せる荒野には風もない。風にそよぐ草もない。虫の音もない静まった荒野は自然でありながら、これほど不自然に硬直した自然はなかった。荒野は、原子爆弾の閃光をあびた日以来、沈黙し、君臨していたガラガラ蛇の生さえ受けつけなかった。大地は病んでいたのである。<「著者から読者へ」より>
予言者、野坂昭如の東京昨日今日明日。うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる14の断章。 東京小説 家庭篇 東京小説 純愛篇 東京小説 慈母篇 東京小説 友情篇 東京小説 ゼロ世代篇 東京小説 ぼくの町篇 東京小説 相姦篇 東京小説 尉と姥篇 東京小説 隅田川篇 東京小説 血縁篇 東京小説 ルーツ篇 東京小説 夢の島篇 東京小説 私篇 山椒媼
敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトを潰された。葛城邸に出向いた彼は、家出してきた葛城の娘と出会う。“ゲームの達人”を自称する葛城に、二人はプライドをかけた勝負を挑む。娘を人質にした狂言誘拐。携帯電話、インターネットを駆使し、身代金三億円の奪取を狙う。犯人側の視点のみで描く、鮮烈なノンストップ・ミステリー。
運命の人はきっといる。私を見つけて。会いにきて。--アンの待ち焦がれていた大学生活がはじまった。憧れの小さな白い家を借りての友人たちとの暮らし。育ちのいい美人のフィルを通して友だちの輪は広がり、小説もひそかに書きはじめた。でも、ある日、幼なじみギルバートから愛を告白され……ずっと親友でいたかったのに……。講談社だけの完訳版『赤毛のアン』シリーズ全10巻の第3巻。
殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は、はたして何を意味するのか!?エラリイ・クイーンへのオマージュである、ダイイング・メッセージものの傑作「イコールYの悲劇」、第55回日本推理作家協会賞受賞作「都市伝説パズル」など、ロジカルな推理が堪能できる本格ミステリ五編を収録した、ファン待望の作品集。
横浜から香港へ向かう豪華客船クレオパトラ八世号に乗り込んだ薬師寺涼子警視。一見優雅な要人警護の任務だが、対象者が複数の組織に命を狙われるいわくつきの人物では、災厄の女王・お涼が無事に航海を終えるはずがない。絶世の美貌と無謀を振りかざし、「ドラよけお涼」(ドラキュラもよけて通る)が紺碧の海を破壊と殺戮の紅に染める。
「この作品が私の代表作になる予感がします」--平 安寿子 プチ家出から戻らない母、いいじゃないか、と言う“文鎮”こと父、ダメ男に貢いで飄々と生きる姉、そんな家族にいらだち、上昇志向を実現しようと邁進する妹……。他人の迷惑顧みず、「自分の気持ち」に素直に生きるタフな4人がここにいる! けちなモラルや常識なんて笑い飛ばす、新しい家族の物語。おすすめ文庫王国〈2005年度版〉第一位!(講談社文庫) 「この作品が私の代表作になる予感がします」--平 安寿子 けちなモラルや常識なんて笑い飛ばせ!?どこにでもいる父・母・姉・妹4人が見つけた「新しい人生!」 あなたは誰に似ていますか? プチ家出から何年も戻らない母、いいじゃないか、と言う“文鎮”こと父、ダメ男に貢いで飄々と生きる姉、そんな家族にいらだち、上昇志向を実現しようと邁進する妹……。他人の迷惑顧みず、「自分の気持ち」に素直に生きるタフな4人がここにいる。けちなモラルや常識なんて笑い飛ばす、新しい家族の物語。 第一章 新しい日々 一九八三年 第二章 結果オーライ 一九八五年 第三章 ファイターのスピリット 一九九三年 第四章 イン・マイ・ライフ 一九八三〜一九九三年 第五章 プライドのサバイバル 一九九八年 第六章 どうぞ勝手に、グッドラック 二〇〇三年
梵貝荘(ぼんばいそう)と呼ばれる法螺貝(ほらがい)様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎(ずいもんりゅうしろう)が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。続編「樒(しきみ)/榁(むろ)」を同時収録。(講談社文庫) この傑作、一文字たりとも読み落とすなかれ梵貝荘と呼ばれる館。魔王と称される仏文学者。暗唱されるマラルメの詩。異様な死体。そして稀代の名探偵。隙のない美しさの本格推理小説。続編「樒/榁」収録。 鏡の中は日曜日 第一章 鏡の中は日曜日 第二章 夢の中は眠っている 第三章 口は真実を語る 樒/榁 樒 榁
『13階段』をしのぐ圧倒的迫力! 空前の疾走感で展開するノンストップ《サスペンス》大作 改心した悪党・八神は、骨髄ドナーとなって他人の命を救おうとしていた。だが移植を目前にして連続猟奇殺人事件が発生、巻き込まれた八神は白血病患者を救うべく、命がけの逃走を開始した。首都全域で繰り広げられる決死の追跡劇。謎の殺戮者、墓掘人(グレイヴディッガー)の正体は?圧倒的なスピードで展開する傑作スリラー巨編!
闇は深く、不吉な雨はやまず……芥川賞受賞作! 希望を失い、にわか地上げ屋となった中年男。路地裏の古アパートに居座る奇妙な男と酒を飲めば、喪失感に満ちた過去へと意識は引き戻される。死んでしまった同棲相手や裏切られた友人。陰々滅々とした雨の向こう側に、生の熾火(おきび)は見えるか。第123回芥川賞受賞作。受賞後第1作「ひたひたと」を同時収録。