2005年発売
日々の暮らしの中のなにげない出来事。揺れ動く心象風景。その一瞬の小さな物語を、恋愛小説の名手が、さまざまな花々に託してあざやかに描いた世界を、気鋭の銅版画家・牛尾篤が洗練された筆致で映し出した。ふたつの才能によるコラボレーションで初めて実現した、花のような女性たちに贈る優しさの花束。
映画を見に行くことになったのは妹が死んでしまったからだ。私は平素より視覚情報に関しては淡白を貫く主義なので、映画を見るのは実に五年振りのこととなり、妹が死んだのも、矢張り五年振りだった。回数を勘定すれば、共にこれが四回目である。映画を見るのは妹が死んだときだけと決めているのではなく、逆であり、妹が死んだからこそ、映画を見るのだ。そうはいってもしかしこうしょっちゅう死なれては私としても敵わない。日頃大きな口を叩いている友人達に合わせる顔がないというものだ。私には合計で二十三人の妹があるけれど、死ぬのはいつも、十七番目の妹だった。
“『竜馬がゆく』連載開始のころ”司馬遼太郎は言った。「短篇小説を書くというのは、空気を絞って水を滴らすほどのエネルギーがいる」そうして生まれた短篇の豊かな世界を発表順に味わう。
武松は鴛鴦楼で大暴れし、弓の名人花栄が登場して、清風寨をおおいに騒がす。一方、星主の宋江は閻婆惜殺しの罪で捕まり江州に送られ、そこの牢役人で一日五百里を走る戴宗や二挺の斧を自在に使う李逵と出会う。百八人の好漢たちは続々と出会っていくが彼らに対する中央政権の風当たりもしだいに激しさを増していく。
ナポリ出身の詩人バジーレが主にイタリアから集めた精選昔話集。ボッカチオの『デカメロン』に触発されて書いたという本書は、10人の語り女たちが5日にわたって競ってまくしたてる50の物語を収めるおとぎ話の宝庫である。「シンデレラ」「眠り姫」「長靴をはいた猫」をはじめ、ばか息子の出世話、異類婚、乗っ取り花嫁、老婆の若返りなどおなじみのモチーフが数多く詰め込まれている。全2冊。
ナポリ方言で書かれたこのヨーロッパ最古の昔話集は、イタリアならではのおおらかであけっぴろげなエロチシズムと、荒々しく皮肉たっぷりの残酷さで満ち満ちている。バジーレ独特の凝った表現には、はでやかで不可思議なバロックの雰囲気が漂う。子どもたちのためのグリム童話より180年も昔、大人の娯楽だったおとぎ話はこんな姿をしていたのである。全2冊。
古の時代、世界は神によって二つに分けられた。科学が支配する人間界・エルデと魔法が支配する異世界・ファンダヴェーレ。そして世界には封印された強力な「力」があった。その力「封印の鍵」を宿すエルデの少年・鈴風草太は東京の中学校に通う普通の男の子。幼なじみの女の子に頭の上がらないちょっと頼りない草太に、邪眼の魔女・サンドリヨンと腹心の部下ヘンゼルの魔の手が伸びる。草太の警護をするのは赤ずきん、白雪姫、そしてオオカミ族のヴァルなど、おとぎ話のヒロインたち。…その熾烈な争いの中、あらたな刺客・グレーテルがツインテールの髪を軽やかに揺らしながら、エルデにやってきた。「封印の鍵」の争奪戦のさなかに、行われたもう一つの闘い。それはグレーテルの赤ずきんへの嫉妬心からはじまった恋の闘い!?だった。
男の名前は神崎零次。D.O.E(ディフェンダーズオブアース)エージェント、ディフェンダー0721。コードネーム“スペクター”何故か武器を使わずに、拳による処刑を繰り返す異端のディフェンダーは都会の雑踏にまぎれ、公的機関の監視の下、孤独な闘いを続ける。終わりのない異形の者たちとの闘いが、ダークヒーローの闇をさらに深く濃くしていく。
「殺しは仕事にしたことがない。殺しをしなかったとはいわないが」。あらゆるトラブルを請け負う男、ジョーカー。着手金は百万円、唯一の連絡場所は六本木のバー。噂を聞いた男と女が今宵も厄介事を持ち込んでくる。ジョーカーを動かすのはプライドだけー。待望のハードボイルド新シリーズ第一弾の連作短編。
ロス市警のみならず、FBIからも激しい妨害と警告を受けるボッシュ。孤独な捜査を進める彼に貴重なヒントを与えてくれたのは、今は全身不随の身となった元刑事のクロスだった。が、その身辺にも危険が迫り…。たくさんのもつれた糸が絡み合い、人の心の闇を炙り出す!現代ハードボイルドの最高峰。
艶やかに咲く枝垂れ桜の下で、老人が毒を盛られた。容疑者は彼の美しい妻、だが物証はない。事件を目撃した桜井京介は不可能犯罪の謎を解明したはずだったが?十六歳の日の忘れえぬ事件を語る表題作を始め、眩暈を誘う「二重螺旋」四部作など、魅力的な十の謎を収録。シリーズ初の短編集、待望の文庫化。
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとはーー。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。2003年このミステリーがすごい! 2002年週刊文春ミステリーベスト10 第1位。(講談社文庫) 日本中が震えたベストセラー待望の文庫化 妻を殺し、それでも生きる。心の奥に想いを秘めてーー 「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとはーー。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。 志木和正の章 佐瀬銛男の章 中尾洋平の章 植村学の章 藤林圭吾の章 古賀誠司の章
伝説の首塚に背を向けた「将門の椅子」に座ると死が訪れる。巨大銀行で囁かれていた迷信は現実のものとなり、エリート銀行員が次々に不審な死を遂げる。そして、阿部奈緒美が所属する国際部からもついに犠牲者が。大学の同期である奈緒美から依頼を受けた浅見光彦は、平将門の崇りとされる事件の真相を追う。