2006年3月発売
モーツァルトとバス釣りと家庭崩壊ー。地方の大学生・鯉沼のそんな日常は、同級生・香澄との出会いで一変する。それまでとは異なる色と輝きに包まれた世界。しかし、香澄との距離感をなかなかうまくつかむことができない。ある日鯉沼は、絵描きの友人・タケルの運転する水色のフォルクスワーゲンに乗って香澄と旅に出ることにするが…。「人と人は完全には分かり合うことはできない」という認識に立ち、だからこそ相手を愛し受け入れる選択の大切さを問う「世界の中心で、愛をさけぶ」著者の青春恋愛小説。
歯の治療に訪れたおゆうは、女手一つで呉服屋を切り盛りする、あでやかな美女だった。おゆうは、店から独立して小間物屋をはじめるお紺のために、房楊枝を作ってほしいと桂助に頼んできた。ある日起こった火事の焼け跡から、その房楊枝を入れる袋が見つかり、下手人としておゆうが捕らえられた。彼女に好意を寄せる桂助と、それを心配する仲間の鋼次や志保も協力して、おゆうの嫌疑を晴らすために動くのだったが…。果たして、おゆう背後には!?『口中医桂助事件帖 南天うさぎ』に続く、大人気書き下ろしシリーズ第二作。
22年前、奈良・仏隆寺の「揚巻桜」と呼ばれる千年桜の下で出会って結婚した杜夫と響子。54歳のいま、大学教授兼演劇評論家として社会的順風のなかにある杜夫は、テレビ局で見かけた24歳の亜矢に強く魅かれる。その若い肢体に溺れて逢瀬を重ねていたある日、杜夫は心臓発作で病院に運ばれ臨死体験をする。それは、沖縄生まれの“神女”亜矢の催眠術が見せてくれる不思議な光景だった。
古内繁は孤独な中年サラリーマン。妻に先立たれ、会社ではとうに出世コースから外れた存在だ。そんな繁が、雑誌の連載小説「おせっかい」に登場する女性刑事に熱い思いを抱き、それが高じて奇妙な浮遊感とともに小説のなかに出入りするようになる。この闖入者にショックを受ける作家の橘香織。迷走し始める彼女の連続殺人事件小説。現実と仮想世界が交差する切ない不思議感覚ミステリ。
「拉致」衝撃の深層!昭和43年暮れ。東京・荒川に住む若い彫刻職人が、忽然と姿を消した。それから35年以上の月日が流れ、ついに全貌が明らかになる…。ダブリンに超精巧偽百ドル札あらわる!震源は「北」。前NHKワシントン支局長の著者が放つ衝撃のドキュメンタリー・ノベル。
本所の一膳飯屋「井筒」の看板娘、お蔦は、かの長谷川平蔵に「天眼通」と呼ばれた名親分の忘れ形見。顔は悪いが情には厚い御用聞き「不動の井蔵」に育てられた。幼い日、井筒を囲んで背比べした初恋の人、虎吉との再会で、御用達茶道具屋「洗心堂」の主が襲われた事件そっちのけで舞い上がるお蔦とやきもきする井蔵。そのほか、井蔵の隠し子騒動に、清之介の恋が絡んだ中篇、全三編を収めた好評のシリーズ第二弾。
キーポイントは、口。メディア・セクシュアリティ・帝国・大飢饉などの歴史。そして、基礎作業として、まず真理と物語の問題。多彩な要素が絡みあいながら、テキストをさまざまに彩ってゆく。
「俺が満足するスーツを作り、それが仕上がるまで愛人を務めれば、借金は帳消しにしてやる」-傲慢な口調で無体な要求を突きつけてきた男、芦澤。高級なスーツを嫌味なく着こなし野生の色香を放つその男の正体は、ヤクザだ。真面目な二代目テーラーの榎田は、老舗の看板を守りたい一心でデンジャラスな世界に足を踏み入れ、男の味をたっぷり教え込まれることに…。危険な愛の仕立て屋稼業。書き下ろし。
巨大企業・鷹栖グループの次期総帥と目される、聆一。系列会社の社長に就任するとともに、その身は常に危険に晒され…。そんな彼の専任ボディガードとして、VIP専門の警護で知られるR.C.S.から一人の男が派遣された。6年前、聆一の護衛部隊長を務めていた腕利きエージェント、室生。二人の間には消せない過去があり…。主とボディガードー忠誠の絆で結ばれた主従関係が逆転するミッドナイトLOVE。書き下ろし。
戦国乱世の時代、戦場を駆けた男だけでなく、女たちもまたそれぞれに「闘いの日々」を送っていた。異例の出世を遂げた豊臣秀吉の妻・北ノ政所、夫の異常なまでの嫉妬にさらされ続けた細川忠興の妻・伽羅奢(ガラシャ)から、戦上手で変わり者の侍大将に思いを寄せる人妻の由紀、夫を徹底して働かせた遊び好きの小梅まで、有名無名六人の女性が戦乱の中で咲かせた「花」を描いた珠玉の短篇集。
平成元年2月、和倉温泉へ向かうお座敷グリーン車で若い女が不審死を遂げたが、自殺か他殺か、真相はわからぬままとなった。15年以上経って、事件の起きた車両を買い取って庭に保存している高柳という男が、奇妙な掲示板を出す。事件当日、この車両に乗っていた人に話をききたい、謝礼に10万円払うという主旨だった。やがて、高柳のもとへ話をしに来た若い男が殺され…。時効を迎えた事件が新たな連続殺人を呼んだ!?東京・金沢を結ぶ推理行に十津川警部が挑む。
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描“ウィトルウィウス的人体図”を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。
館長が死の直前に残したメッセージには、ラングドンの名前が含まれていた。彼は真っ先に疑われるが、彼が犯人ではないと確信するソフィーの機知により苦境を脱し、二人は館長の残した暗号の解読に取りかかる。フィボナッチ数列、黄金比、アナグラム…数々の象徴の群れに紛れたメッセージを、追っ手を振り払いながら解き進む二人は、新たな協力者を得る。宗教史学者にして爵位を持つ、イギリス人のティービングだった。
ティービング邸で暗号解読の末、彼らが辿り着いたのは、ダ・ヴィンチが英知の限りを尽くしてメッセージを描き込んだ“最後の晩餐”だった。そしてついに、幾世紀も絵の中に秘され続けてきた驚愕の事実が、全貌を現した!祖父の秘密とその真実をようやく理解したソフィーは、二人と共に、最後の鍵を解くため、イギリスへ飛ぶー。キリスト教の根幹を揺るがし、ヨーロッパの歴史を塗り替えた世紀の大問題作。