2006年5月発売
決して美人じゃない、大学も二つ目、トシでいえば三浪も同然のオンナ・大瀬崎亜紀。いつだって一生懸命で、妥協がないのはいいけれど、ちょっぴりおバカで自信もない。そんな彼女が恋をした。バイト先の編集プロダクションでシャチョーに見込まれちゃったのだ。必要とされたい一心で、ひたすら仕事に励む大瀬崎亜紀。でも、その先は?人一倍純情で不器用な女子学生の仕事と恋の奮闘記。
才能に溺れて落ちていく男に、女は一途な想いを寄せ、慕い続ける…稀代の才人・平賀源内と野乃との人知れぬ恋。本草学者、戯作者で発明家としても一世を風靡しながら、取るに足らぬ男を殺めて入牢した源内は、獄中で回想と妄想に身悶えしながら、野乃との狂おしい交情を憑かれたように綴るーしくじり続きの男をひたすらに愛した女の情愛を描き尽くす時代長篇。
食料の生産と流通を寡占し、世界的大産業に成長した「アグリビジネス」。彼らの次の狙いは新種のGMO(遺伝子組み換え作物)を駆使し、食料のみならず地球のあらゆる生態系を支配することだー。アグリビジネスの陰謀を暴く原稿の一部を遺して消息を絶った、天才科学ジャーナリスト、レックス・ウォルシュ。翻訳家の蓮尾一生は、彼の足跡を追って南米ボリヴィアへ飛ぶ。
密林の奥に開発されたワイナリー。コカインの原料作物「コカノキ」に蔓延する病害。行方不明となった何人ものサイエンティスト。ボリヴィアの奥地で進行する極秘プロジェクトに迫る蓮尾一生は、ついに驚愕の真実に直面する。人間が神に逆らって創造したGMO(遺伝子組み換え作物)がもたらす大いなる厄災を予見し、地球の未来に警鐘を鳴らす、超弩級国際サスペンス。
「生きていたってしょうがないよ」。大企業を辞めた洪治は、最低五年間は何もすまいと誓い、無為な日々を過ごしている。ある日彼は、一年近く付き合う彼女から昔の不幸な出来事を聞かされる。死ぬことに決めた二人は、睡眠薬を飲む。絶望。その果てに彼が見たのは…(表題作)。なぜ人間は生まれ、どこに行くのか。「覚醒の物語」二編と初期に別名義で発表した一編を収録。
化け物退治稼業で糊口を凌ぐ月村四十郎に、そば屋に毎夜現れる閻魔さま退治の仕事が舞い込んだ。騒ぎは四十郎の活躍で一件落着するが、なんと閻魔の正体は人間、しかも、かの北町奉行遠山金四郎の密偵だった。何故?さらには金四郎から行方不明になった西洋の大砲を探し出せとの密命が下る。南町奉行鳥居耀蔵と遠山金四郎との確執に巻き込まれ、深川一帯を歩き回る四十郎。そこへ謎の女が接近。敵なのか味方なのか?江戸の町を奔走する四十郎に突如刺客が襲いかかる。
日露戦争の最中、ロシア貴族の娘と恋に落ちる青年将校ーそんな話題の映画の主役に大抜擢された、新人俳優の貴一。だが、ロケ先の雪深いシベリアの地で貴一は遭難。目覚めると、そこは一九〇五年、まさに映画と同じ時代で…彼は氷の美貌を持つ貴族、ミハイルに監禁されていた。貴一の身体を貪り抱くミハイル…。濃密な時が過ぎていくなか、少しずつ謎のベールは剥がれていき…。書き下ろしミラクル・ロマンス。
『第九』の日本初演奏…そこには国境を越えた、人間ドラマがあった。今から約90年前、徳島県の板東俘虜収容所。捕虜のドイツ人たちと日本人との間には、人種・国境を越えた真実の友情が芽生えた。映画『バルトの楽園』の脚本家自身による渾身のノベライズ。映画名場面・カラー写真を多数収録。
中国・青島で日本軍に敗れ、徳島・板東に移送された捕虜約千名は、異国の地で不安と闘いながら、パン作りや畜産、フットボールや西洋音楽を教える。その青春の息吹が、日本人の心をも変えていく-「歓喜の歌」が初めて響いた四国の山河。ドイツ人と日本人の友情と禁じられた恋。
女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。-その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。
一人の女性を愛したジローとヘンリー。白人の恋人との結婚を決めたマット。彼らの明日を日本軍の真珠湾攻撃が引き裂いた。ジローは日本語を自在に操る語学兵としてアメリカ陸軍情報部へ転身。日系人の強制収容に抗議するヘンリーは法廷の場へ。マットは友と銃を手にする決意を抱く。奪われた未来を取り戻すため、彼らはそれぞれの戦いへと挑む。第二次世界大戦という激動の時代に生きる若者を描く青春群像大作。
終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマットは太平洋の小島でジローと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリーは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。愛、友情、生と死。魂を揺さぶる感動のエンターテインメント巨編。
優しさと、傲慢さと、抗いがたい自己破壊への欲望。一九二〇年代の寵児の魅力を余すところなく伝え、翻訳者・村上春樹の出発点ともなった作品集をライブラリーのために改訳。『哀しみの孔雀』のもうひとつのエンディング、「ニューヨーク・ポスト」紙のインタヴューを新収録。
十年前、留美子は見知らぬ少年から手紙を渡される。「十年後、地図の場所でお待ちしています。ぼくはその時、あなたに結婚を申し込むつもりです」。いったいなぜこんな身勝手なことを?東京、軽井沢、総社、北海道…。さまざまな出会いと別れ、運命の転変の中で、はたして約束は果たされるのか。
壊されたパテックの懐中時計の持ち主を探す桂二郎の前に、妖艶な中国女性が現われる。そしてもう一人、桂二郎を訪ねてきた若い女性は、昔別れた恋人の娘だった。一方、留美子は謎の手紙の主について、次第に手がかりを得ていくー。人は何を拠り所にして生きていくのかを問う、宮本文学の新しい傑作。
昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。
僕は大学を辞め、塾講師をする傍ら、バンドのメンバーを募集した。“熱くてクール、馬鹿でクレバー。最高にして最低なメンバーを大募集”そんなうたい文句に集まったロックな面々。ボーカル志望の中浜に自らの分身を見た瞬間、僕の中で新たな物語が始まった。カップリング作「月に吠える」も収録。
スペインでのプロ生活にも慣れたリュウジはアテネ五輪代表に招集される。彼を選んだ監督の意図は何か?谷間の世代と言われながらも予選を突破したリュウジたちは、世界各国の代表らと熱き闘いを繰り広げていくー。大好きなサッカーをテーマに著者が魂をこめて書き続けたシリーズ、遺作とも言うべき最終巻。