2006年発売
これからずっと私のこと、おなかの中で馬鹿にしてもかまわない。だから、お姫様だっこしてほしい。愛しさとせつなさと心強さがぎゅっと詰まった30すぎてからのラブコメディ。
一匹狼の闇金王・蔵王のシノギは、サラ金業者から債権を買い、完済した借金をさらに払わせる「二重取り」。エグイ取立に追い込まれ、足掻くほど泥沼に沈んでゆく債務者たち。商売敵は絶望のどん底に突き落とし、背後の広域暴力団すら歯向かえば容赦なく踏み潰す。最後に笑うのは誰なのか。借金で借金を返す這い上がれない無間地獄。真の闇金をえぐる極悪金融小説。
語り手の家族は、パリのゲルマント家の館の一角に引越し、「ゲルマントの方」の扉が徐々に開かれる。ラ・ベルマの演ずる『フェードル』観劇のさいに、ゲルマント公爵夫人を見かけた語り手は、プラトニックな愛情を抱くようになり、夫人に近づくため、同じ一族のサン=ルーを訪ねる。やがてヴィルパリジ夫人のサロンでゲルマント公爵夫人を見かけるが、現実の夫人には、彼女の名前を通して思い描いていた神秘的なものを見出すことができない。
発作を起こした祖母が、まるでうら若い娘のような姿で息を引きとる(第三篇2 第一章)。パリのアパルトマンに、以前とくらべて明らかに変化し成熟したアルベルチーヌが、不意に語り手を訪ねて来る。このころ、語り手は夜会でゲルマント公爵夫人と言葉を交したり、また夕食に招かれたりするようになる。こうして、パリの社交界で最も輝かしい存在に近づいた語り手に、華やかだが滑稽で醜い上流社会の人たちの生態が見えてくる(第三篇2 第二章)。
大学を卒業したが内定をもらえず、銀座のクラブ「クイーン」でボーイとして働き始めた陽一。多額の借金を返済するため、世間を欺き、大金を手中に収めようとするが……。軽妙なタッチの成り上がり拝金小説。
薬師寺涼子警視 vs.アメリカ人大富豪 夏の軽井沢で日米“傍若無人”戦争勃発! 米国の美人富豪のパーティーに招待された警視庁一の傍若無人女王・薬師寺涼子警視、休暇を取って部下・泉田と軽井沢へ。ところが、泉田拉致を皮切りにホテル焼失、富豪令嬢自殺、女装軍団集結と事件が続発、軽井沢は大混乱(パニック)に!真相を探るべくお涼はお得意の攻撃と破壊の強引捜査を開始するが、行く手を身勝手富豪・マイラが阻む。ついに始まる日米“傍若無人”頂上決戦!!
「いかにも、武田の軍師、山本勘助」己が生命を絶たんとする切っ先を突きつけられても、その男は堂々と自らを名乗ったー信玄への仇討ちを誓う由布姫と、姫への思慕を胸に川中島の決戦に散りゆく山本勘助。夢半ばにして歴史から過ぎ去っていった人々の果敢な後姿を、華麗な筆致で描いた井上文学の金字塔。’07年NHK大河ドラマ化にともない、待望の単行本新装版。
「南総里見八犬伝」滝沢馬琴の家に嫁として入るが、夫に先立たれた路。目の見えない舅・馬琴の口述筆記を手伝わされる路の胸に去来するものは?(表題作)。男を買う女。夫を棄てる女。愛人であることを受け入れる女。密やかに、だけど伸びやかに恋をする江戸の女たちの独白。爛熟の町江戸に生まれた六つの恋愛譚。
破滅寸前の天才数学者ケイン。彼を悩ませる謎の神経失調には大きな秘密があった。それは、世界を根底から揺るがす「能力」の萌芽だったのだ。それを狙い、政府の秘密機関“科学技術研究所”が動き出し、その権力を駆使してケインを追いはじめた。なぜ彼らはケインを追うのか?彼らが狙うケインの「能力」とは何なのか?そして科学者トヴァスキーが進める「研究」の目的とは?執拗な追手から逃れつつ、ケインはその謎に迫ってゆく。いくつもの物語が謎をはらんで一斉に疾走、ここに前代未聞のアイデアを仕込んだジェットコースター・サスペンスが幕を開ける。第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
数学者ケインとCIA工作員ヴァナー。圧倒的窮地に陥った二人が共闘を開始した。一方ケインを追うフォーサイス博士も戦闘のプロを動員、火力とマンパワーを増強して捕捉作戦を過激化させる。これで役者はそろった。すべての布石の配置は完了した。強大な敵に追いつめられたケインの「能力」は、ついに発現する。非力な民間人にすぎない彼の唯一最大の武器が発火するー確率的にありえない連鎖反応を引き起こし、やつらの包囲網を突破するのだ。すべての物語はここに至って一点に集中し、炸裂する伏線、伏線、伏線。つぎつぎに明かされる意外な真実。そして、この長く壮絶な戦いの「目的」とはいったい何なのか?未曽有の超絶的サスペンス、結末へ向けて全力疾走を開始!第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さんと、偶然に知り合った時間給講師の私。大切な人に印鑑を届けるといったきり姿を消した正吉さんと、私が最後に言葉を交わした居酒屋には、土産のカステラの箱が置き忘れたままになっていた…。古書、童話、そして昭和の名馬たち。時のはざまに埋もれた愛すべき光景を回想しながら、路面電車の走る下町の生活を情感込めて描く長編小説。
19歳の歩太と27歳の春妃のせつなく激しい恋を描いた『天使の卵』から12年。そして『天使の梯子』から2年。29歳の妹・夏姫が回想するエモーショナルな懺悔。哀しくて、エロティックな青春の詩。