2006年発売
歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。
華やかな奈良の都で、国人は大仏造営の作業に打ちこんでいた。ともに汗を流す仲間たちと友情を築いた。短き命を燃やす娘と、逢瀬を重ねた。薬草の知識で病める人びとを救い、日々を詩に詠む。彼は、確かな成長を遂げていた。数え切れぬほどの無名の男たちによって、鉱石に命が吹き込まれ、大仏は遂に完成した。そして、役目を終えた国人はー。静かな感動に包まれる、完結篇。
古びた二階建ての建物で、開業医を始めたサックス。いままで医師のいない村だったプライの住民たちは、まだ若く独身の彼を、最初は好奇の目で見る。どうせ、すぐ町に転居してしまうのさ。子供が泣きやまないんです…大したことはないと思うんですが、熱が…病気や怪我や老いは待ってくれない。いつしか待合室は満員になり、人々は熱心に噂を交換する。友達もいないのかな…本屋で見掛けた…食生活がみすぼらしい…でも、いい人みたいだよ…時間外でも、往診でも、ほかの医者の患者でも、常に患者と正面から向き合う医師の日々。フランスで、文芸書としては異例の60万部を売り上げ、世界中で反響を呼んだ話題作。
世界を震撼させたあのベストセラー小説に騙されるな!「わたしの物語は真実であり、それは単なる小説ではない」と『ダ・ヴィンチ・コード』の著者ダン・ブラウンは主張する。つまり、彼の小説は綿密なリサーチの結果であり、秘密結社や儀式をはじめとする歴史、芸術、宗教に関するデータはすべて「事実」に基づいていると言うのだ。だが、本当にそうだろうか?ダン・ブラウンの言葉に疑問を持った本書の著者が、物語の細部を徹底的に検証すると、驚くべき嘘が次々と明らかになっていく!-スペイン、イタリアで発売間もなくベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』検証本。
正義の味方・赤頭巾侍。いささか直情径行の気味あり。悪漢を切り捨てた後に苦しまぎれの“こじつけ”推理が炸裂!!しかも毎回。早トチリの剣豪の活躍を描く、異色の時代ミステリー。
モーツァルトとバス釣りと家庭崩壊ー。地方の大学生・鯉沼のそんな日常は、同級生・香澄との出会いで一変する。それまでとは異なる色と輝きに包まれた世界。しかし、香澄との距離感をなかなかうまくつかむことができない。ある日鯉沼は、絵描きの友人・タケルの運転する水色のフォルクスワーゲンに乗って香澄と旅に出ることにするが…。「人と人は完全には分かり合うことはできない」という認識に立ち、だからこそ相手を愛し受け入れる選択の大切さを問う「世界の中心で、愛をさけぶ」著者の青春恋愛小説。
歯の治療に桂助を訪れたおゆうは、女手一つで呉服屋を切り盛りする、あでやかな美女だった。その後も桂助の元を訪ねるおゆうだったが、ある日起こった火事の下手人として捕らえられてしまう。彼女に好意を寄せる桂助と、それを心配する仲間の鋼次や志保も協力して、おゆうの疑惑を晴らすために動くのだったが……。果たして、おゆうの正体とは! 『口中医桂助事件帖 南天うさぎ』に続く、書き下ろしシリーズ第2弾。
22年前、奈良・仏隆寺の「揚巻桜」と呼ばれる千年桜の下で出会って結婚した杜夫と響子。54歳のいま、大学教授兼演劇評論家として社会的順風のなかにある杜夫は、テレビ局で見かけた24歳の亜矢に強く魅かれる。その若い肢体に溺れて逢瀬を重ねていたある日、杜夫は心臓発作で病院に運ばれ臨死体験をする。それは、沖縄生まれの“神女”亜矢の催眠術が見せてくれる不思議な光景だった。
古内繁は孤独な中年サラリーマン。妻に先立たれ、会社ではとうに出世コースから外れた存在だ。そんな繁が、雑誌の連載小説「おせっかい」に登場する女性刑事に熱い思いを抱き、それが高じて奇妙な浮遊感とともに小説のなかに出入りするようになる。この闖入者にショックを受ける作家の橘香織。迷走し始める彼女の連続殺人事件小説。現実と仮想世界が交差する切ない不思議感覚ミステリ。
「拉致」衝撃の深層!昭和43年暮れ。東京・荒川に住む若い彫刻職人が、忽然と姿を消した。それから35年以上の月日が流れ、ついに全貌が明らかになる…。ダブリンに超精巧偽百ドル札あらわる!震源は「北」。前NHKワシントン支局長の著者が放つ衝撃のドキュメンタリー・ノベル。
本所の一膳飯屋「井筒」の看板娘、お蔦は、かの長谷川平蔵に「天眼通」と呼ばれた名親分の忘れ形見。顔は悪いが情には厚い御用聞き「不動の井蔵」に育てられた。幼い日、井筒を囲んで背比べした初恋の人、虎吉との再会で、御用達茶道具屋「洗心堂」の主が襲われた事件そっちのけで舞い上がるお蔦とやきもきする井蔵。そのほか、井蔵の隠し子騒動に、清之介の恋が絡んだ中篇、全三編を収めた好評のシリーズ第二弾。
『ドラキュラ』の中の興味をそそってやまない謎や矛盾に焦点を当て、大学生や一般読者に物語テキスト読解のコツを伝授する。「口」をキーワードにしたメディア・セクシュアリティ・帝国・大飢饉などの歴史。基礎作業として真理と物語の問題。多彩な要素が絡み合うなかを、領域横断的に読解する面白さとスキルを教える。 序 第1章 真理と物語 第2章 表の真理、口を通して裏の世界へ --口と聴覚・音声メディア文化事情 第3章 セクシュアリティ 第4章 西と東の政治的裏表 --音声情報戦、そしてアイルランド大飢饉 あと書き 文献案内
巨大企業・鷹栖グループの次期総帥と目される、聆一。系列会社の社長に就任するとともに、その身は常に危険に晒され…。そんな彼の専任ボディガードとして、VIP専門の警護で知られるR.C.S.から一人の男が派遣された。6年前、聆一の護衛部隊長を務めていた腕利きエージェント、室生。二人の間には消せない過去があり…。主とボディガードー忠誠の絆で結ばれた主従関係が逆転するミッドナイトLOVE。書き下ろし。
戦国乱世の時代、闘っていたのは男だけではない。女性もまた、女性の戦(いくさ)を闘わねばならなかったーー本書は、戦国の女性を主人公にした司馬作品六篇を収録したオリジナル編集の短篇小説集である。▼豊臣秀吉の正室として位人臣を極め、夫の死後は二人で築いた豊臣家の行く末を決定づけた北ノ政所。兄・秀吉の思惑によって結婚のみならず離婚さえも強いられ、一生を翻弄され続けたが、その生涯を沈黙で染め抜いた秀吉の妹・旭姫。夫・細川忠興の異常な嫉妬によってがんじがらめの束縛を受けながら、毅然として己を貫き、関ケ原の折に最期を迎えたたま(ガラシャ)。▼このほか、変わり者の侍大将・渡辺勘兵衛に思いを寄せる藤堂家小姓頭の妻・由紀の慕情や、一夜の出会いを大切に抱き続けて生きようとする小若の純情、さらには夫を猛烈に働かせて財を築いた遊び好きの妻・小梅と、戦乱のなかに咲いた女性たちの人生を浮かび上がらせた珠玉の短篇集である。 ●女は遊べ物語 ●北ノ政所 ●侍大将の胸毛 ●胡桃に酒 ●一夜官女 ●駿河御前